この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Tropical Public Health Journal
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
思春期は体と心が大きく変化する時期で、栄養の問題が起こりやすいとされています。なかでも貧血は代表的な問題で、著者らは、思春期の女子は同年代の男子に比べて貧血のリスクが高いとする先行研究を紹介しています。ヘモグロビンは赤血球の中にあって酸素を運ぶたんぱく質で、その値が低いと血液が体中へ酸素をうまく届けられず、疲れやすさなどにつながると論文は説明しています。
野菜や果物は食物繊維の主な供給源であり、鉄や葉酸、ビタミンCも含むため貧血の予防に役立つと考えられています。一方で食物繊維には鉄の吸収を妨げる性質もあると論文は述べています。そこで研究チームは、インドネシア・北スマトラ州アサハン県東キサラン地区にある学校(MANアサハン)の女子生徒を対象に、食物繊維の摂取量とヘモグロビン値に関係があるかどうかを調べました。この学校が選ばれたのは、地域の保健センターのデータで、思春期女子の貧血リスクの点で最上位に挙げられていたためだと説明されています。
調べ方
研究は横断的な調査として行われました。横断研究とは、ある一時点で複数の項目をまとめて測る調査方法で、原因と結果の時間的な前後関係までは確かめられない設計です。対象は10年生と11年生の女子生徒45人で、単純無作為抽出によって選ばれました。参加条件は15〜16歳であること、採血に同意することなどで、月経中の人、血液の病気や異常がある人、血液を介してうつる感染症のある人は除かれています。採血は地域保健センターの担当者が行い、研究前に倫理審査の承認も得たと記されています。
食物繊維の摂取量は、特定の食品や食品群をどれくらいの頻度で食べているかを尋ねる半定量食物摂取頻度調査票(SQ-FFQ)による聞き取りで把握し、栄養計算ソフトで処理しました。判定の基準は1日29グラムで、インドネシア保健省の2019年の栄養所要量に基づく思春期の推奨量に対応するものとして、29グラム以上を「充足」、それ未満を「不足」としています。ヘモグロビン値は12g/dLより高ければ正常、12g/dL未満を正常以下と分類しました。両者の関係は、人数の少ない表の分析に向くフィッシャーの正確確率検定で評価されています。
主な結果
45人のうち39人(86.7%)が1日の推奨量より少ない食物繊維しか摂っておらず、推奨量どおり摂れていたのは6人でした。ヘモグロビン値が正常だったのは16人(35.6%)にとどまりました。
食物繊維が不足していた39人では、ヘモグロビン値が正常以下の人が27人(69.2%)、正常が12人(30.8%)でした。充足していた6人では正常以下が2人、正常が4人でした。フィッシャーの正確確率検定によるp値は0.107で、有意水準0.05と比べると、食物繊維摂取量とヘモグロビン値の間に統計的に意味のある関係は認められなかったと著者らは報告しています。この結果は、食物繊維摂取量とヘモグロビン値に相関がなかったとする先行研究と一致するとし、はっきりした関係が出なかった背景として、食物繊維が食事中の鉄の吸収を妨げる働きを持つ可能性を挙げています。
食事の内容としては、主食は米や麺が多く、1日2〜3回食べていたこと、植物性のおかずではテンペや豆腐がよく食べられていたこと、野菜ではホウレンソウ、空心菜、キャベツ、キュウリ、キャッサバの葉、果物ではアボカド、パイナップル、梨、りんご、パパイヤ、バナナ、オレンジ、マンゴー、ランブータンなどが挙がったことが報告されています。食事の種類自体は比較的多様でしたが、野菜と果物の量は推奨より少なく、果物は砂糖を加えたジュースにされることが多く、間食では揚げ物やミートボール、スナック、ウエハース、キャンディがよく食べられていました。また聞き取りでは、食後に紅茶を飲む習慣を持つ生徒が多かったことも示されています。論文は、お茶に含まれるタンニンが鉄と結びついて吸収されにくい形になるという説明や、食後に茶を飲む思春期の若者で貧血が起こりやすいとした先行研究を紹介しています。
この研究が示すこと
この調査では、食物繊維をどれだけ摂っているかとヘモグロビン値との間に統計的な関係は見いだされませんでした。ただし、対象となった生徒の多くは食物繊維が推奨量に届かず、同時にヘモグロビン値も低い状態にあったことが示されています。著者らは、食物繊維が不足すると腸から不要物を出す働きに支障が出る一方、摂りすぎるとビタミンやミネラルの吸収、とくにヘモグロビンをつくるのに必要な鉄の吸収を妨げうると整理しており、推奨量に沿って摂ることの重要性を述べています。
そのうえで著者らは、学校が保健機関と連携して生徒のヘモグロビンを定期的に確認することや、食物繊維が多く栄養バランスのとれた食事を提供できる健康的な食堂を整えること、学校保健室(UKS)を中心とした栄養・健康教育の取り組みを立て直すことを提案しています。一つの学校の45人を一時点で調べた研究であり、結果の読み方には限りがありますが、思春期の女子の貧血という課題を、食事の量だけでなく食べ方や生活の習慣とあわせて見ていく必要を示す報告だといえます。
著者:Nadya Ulfa Tanjung(Department of Nutrition, Faculty of Public Health, Universitas Islam Negeri Sumatera Utara, Medan, Indonesia)、Putri Selly Pratama(Department of Nutrition, Faculty of Public Health, Universitas Islam Negeri Sumatera Utara, Medan, Indonesia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Nadya Ulfa Tanjung, Putri Selly Pratama Dietary fiber, hemoglobyn and the correlation to senior high school students age girls. Tropical Public Health Journal 2026-09-30. DOI: 10.32734/trophico.v6i2.22442. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。