著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Food & Nutrition Research

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ぜんそくは世界で最も多い慢性の呼吸器疾患の一つで、米国では成人のおよそ11人に1人が現在ぜんそくを抱えているとされます。吸入薬などの治療があっても発作や救急受診を繰り返す人は少なくありません。そのため、薬以外で変えられる要因として食事への関心が続いています。

研究チームが注目したのは食物繊維です。食物繊維は消化されにくい植物由来の炭水化物で、大腸まで届くと腸内細菌に分解され、短鎖脂肪酸と呼ばれる物質が作られます。動物実験などでは、こうした物質が免疫の働きを調整し、アレルギー性の気道の炎症を和らげることが示されてきました。腸と肺の免疫がつながっているという「腸肺相関」の考え方もあり、食物繊維とぜんそくの関係を確かめる意義があると著者らは考えました。

これまでにも米国の全国調査データを使い、食物繊維が多い人ほど慢性の気道の病気が少ないという報告はありました。ただし、その研究は複数の気道疾患をまとめて扱っていました。今回の研究は、ぜんそくそのものに絞り、さらに発作や救急受診といった病状の悪化にも関連が見られるかを調べることを目的としています。

何をどのように調べたか

研究チームは、米国の国民健康栄養調査(NHANES)のうち、新型コロナウイルス流行前の2017年から2020年3月までのデータを分析しました。この調査は米国の一般住民を代表するよう対象者が選ばれています。20歳以上で、必要な情報がそろった6,145人の成人が主な分析対象となり、調査の重みづけを用いると約1億9,940万人の米国成人を代表する集団にあたります。

食物繊維の摂取量は、前日24時間に食べたり飲んだりしたものをすべて聞き取る方法で推定しました。ぜんそくについては、医師などからぜんそくと言われたことがあり、現在もぜんそくがあると答えた人を「現在ぜんそくあり」としました。加えて、過去12か月の発作の有無と、ぜんそくによる救急外来などの受診の有無も調べました。

分析では、年齢、性別、人種・民族、学歴、収入、喫煙、飲酒、運動、総摂取エネルギー、高血圧、糖尿病といった、食物繊維の摂取とぜんそくの両方に関わりうる要因の影響を統計的に差し引きました。体格の指標であるBMIは、食物繊維の影響を受けて変化する可能性もあるため、主な分析には含めず、別の確認用の分析で加えています。この研究は一時点の状態を調べる横断研究であり、結果は因果関係ではなく関連として示されています。

主な結果

対象者の1日あたりの食物繊維摂取量は平均16.2グラムで、成人に推奨される目安量(およそ22〜34グラム)を下回っていました。摂取量で4つのグループに分けると、現在ぜんそくがある人の割合は、最も少ないグループで11.6%、最も多いグループで7.2%でした。

さまざまな要因を考慮した主な分析では、食物繊維の摂取量が1標準偏差(約9.8グラム)多いごとに、現在ぜんそくがあるオッズ(起こりやすさを表す指標)が約0.80倍となり、摂取量が多い人ほどぜんそくが少ない傾向が見られました。2日分の聞き取りの平均を使った分析や、欠けているデータを統計的に補った分析でも、同じ方向の結果でした。

一方で、この関連は統計的には控えめなものでした。調べた3つの結果をまとめて検定したことを考慮する補正を行うと、現在ぜんそくとの関連は統計的に有意ではなくなりました。BMIを加えた分析でも関連はやや弱まり、有意ではありませんでした。また、測定されていない要因がわずかに影響しただけでも結論が揺らぎうることも、追加の分析で示されています。

過去12か月の発作やぜんそくによる救急受診については、食物繊維の摂取量との関連は見られませんでした。ただし、こうした出来事を経験した人は少なく(救急受診は111人)、分析の精度には限りがあると著者らは述べています。

この研究が示すこと

著者らは、食物繊維の摂取量が多いことは現在のぜんそくが少ないことと関連していたものの、食物繊維がぜんそくを防ぐと示したものではないと慎重に解釈しています。食事とぜんそくを同時に調べているため、どちらが先かは分かりません。ぜんそくのある人が症状や医師の助言などをきっかけに食事を変えた結果として、こうした関連が現れた可能性もあります。

また、関連が見られたのはぜんそくがあるかどうかという点で、発作や救急受診といった急な悪化には関連が見られませんでした。著者らは、食物繊維が関わりうるのは慢性的な気道の炎症であり、ウイルスやアレルゲンなどのきっかけで起こる急な悪化とは性質が異なるのではないかと考察しています。この研究は、食物繊維をぜんそくの少なさと結びつく可能性のある要因として位置づけつつ、その結びつきの強さと解釈には不確かさが残ることを示しています。

原著論文の著者・所属:Tingting Zhao(Department of Respiratory and Critical Care Medicine, Zhuji People’s Hospital, Zhejiang, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Tingting Zhao. Association of dietary fiber intake with current asthma and recent asthma outcomes: a cross-sectional analysis of National Health and Nutrition Examination Survey 2017–March 2020 pre-pandemic data. Food & Nutrition Research 2026-10-23. DOI: 10.29219/fnr.v70.14782. 原著ライセンス:CC BY.