著者の所属・活動拠点の国は、イラク、ブルネイです。

掲載誌:Tikrit Journal for Agricultural Sciences

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

肝臓の肉は、食肉の部位のなかでも微生物が増えやすく、消費者の健康上のリスクにつながると論文は述べています。近年は、香りや風味づけに使われる植物の抽出物を肉に加え、細菌の増殖を抑えて保存性を高める試みが行われてきました。

ハーブのタイムから得られる精油(タイム油)には、抗菌性をもつ成分としてチモールやカルバクロールが多く含まれることが知られています。タイム油はこれまでミートボールやハンバーガー、鶏肉、羊肉などの保存に使われてきましたが、家禽の肝臓の保存に用いた研究は少ないといいます。そこで研究チームは、濃度の異なるタイム油が、地元産ガチョウの肝臓の化学的・物理的・微生物学的な性質に、冷凍保存の期間を通じてどのような影響を与えるかを調べました。

どのように調べたか

研究チームは、異なるガチョウから採取した肝臓36試料(1試料50グラム)を用意し、4つの処理区に分けました。タイム油を加えない対照区(0%)と、タイム油を0.025%、0.050%、0.075%の濃度で加えた区です。タイム油はインスリン用の注射器で試料ごとに1ミリリットル注入しました。試料は4℃で4時間置いて死後硬直を完了させた後、マイナス18℃で1日、20日、40日間冷凍保存されました。

保存後には、水分・たんぱく質・脂肪・灰分・炭水化物といった成分のほか、物理的な性質として、解凍時に失われる水分などの割合(解凍損失)、加熱時の重量減少(加熱損失)、肉が水分を保つ力(保水性)、pHを測定しました。微生物については、37℃で培養した一般的な細菌の数(総細菌数)と、15℃で培養して数える低温でも増える細菌(低温細菌)の数を調べました。

主な結果

まず成分については、タイム油の濃度や保存期間による有意な差は認められませんでした。たんぱく質や脂肪、水分などの組成は、タイム油を加えても実質的に変わらなかったと報告されています。

物理的な性質では、pH、保水性、加熱損失についてタイム油の処理区間に有意な差はありませんでした。一方、解凍損失は、タイム油を加えた3つの区すべてで対照区より少なくなりました。保存期間の影響としては、保存1日目に比べて20日目と40日目にpHが有意に低下し、解凍損失も保存期間によって差がみられました。

微生物の面では、タイム油を加えた3つの区で、低温細菌と総細菌数の両方が対照区より有意に少なくなりました。たとえば低温細菌の処理区ごとの平均は、対照区の1グラム当たり約1万2700個に対し、0.075%区では約700個でした。また、保存期間が長くなるにつれて細菌数は増え、保存1日目が最も少なかったと報告されています。著者らは、濃度0.075%のタイム油が最も高い抗菌効果を示したと結論づけています。

著者らは、こうした抗菌作用について既存の研究を引用し、チモールやカルバクロールが細菌の細胞膜に作用して膜の透過性を高め、細胞内の物質を漏れ出させたり、エネルギー産生に必要な酵素の働きを妨げたりすることで、細菌の増殖が抑えられると説明しています。

研究が示すこと

この研究は、冷凍保存したガチョウの肝臓にタイム油を加えると、成分の組成はほとんど変えずに、解凍時の損失を減らし、細菌の増加を抑えられたことを報告しています。著者らは、タイム油が冷凍ガチョウ肝臓の微生物面の品質と一部の物理的性質を改善する天然の保存料になりうると結論づけており、研究例の少なかった家禽の肝臓の保存について、植物由来の精油を使う一つの手がかりを示した研究といえます。

原著論文の著者・所属:Ahmed R Muhaimeed(Department of Animal Production, Collage of Agriculture, Tikrit University, Iraq)、Adnan Sh. Ahmed Al-Perkhdri(Department of Animal Production, Collage of Agriculture, University of Kirkuk, Kirkuk, Iraq)、Mokhalad Oraibi Hasan(Department of Animal Production, Collage of Agriculture, Tikrit University, Iraq)、Zeiad Amjad Aghwan(Halalan Thayyiban Research Centre, Universiti Islam Sultan Sharif Ali, Tutong-Negara Brunei Darussalam)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ahmed R Muhaimeed, Adnan Sh. Ahmed Al-Perkhdri, Mokhalad Oraibi Hasan, et al. The Effect of Using Different Concentrations of Thyme Oil on Some chemical, Physical and Microbiological Characteristics of Local Goose Livers Meat for Different Storage Periods. Tikrit Journal for Agricultural Sciences 2026-09-01. DOI: 10.25130/tjas.26.3.15. 原著ライセンス:CC BY.