著者の所属・活動拠点の国は、アメリカです。
掲載誌:Foods
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF
総説のねらい
米は世界で最も重要な主食作物の一つですが、収穫から精米までの過程で、もみ殻、米ぬか、稲わら、砕米といった副産物が大量に生じます。著者らによると、これらは十分に活用されず、野焼きや埋め立てなど環境への負担が大きい方法で処分されることが多いといいます。
一方で、こうした副産物には食物繊維、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルのほか、フェノール化合物(ポリフェノールなどを含む、植物に由来する成分の大きなグループ)が含まれています。この総説は、米の生産・加工で出る副産物を持続可能な形で活用し、より価値の高い製品に変える方法について、すでに定着した方法と新しく登場してきた方法を広く整理することを目的としています。著者らは、従来の総説が副産物の成分や栄養特性、従来型の利用を中心に扱ってきたのに対し、本総説では新しい付加価値技術に重点を置いていると説明しています。
何を調べたか:副産物の性質と利用の現状
著者らは公表された文献を調べ、現在の利用経路、新しい技術、それらの課題、今後の可能性を整理しました。論文によれば、世界の米の生産量は年間7億トンを超え、世界の耕地のおよそ11%が稲作に使われています。生産の大部分はアジアが占めています。
精米では、まず外側の殻であるもみ殻を取り除き、次に玄米を磨いて米ぬかの層を取り除きます。論文では、もみ殻は穀粒全体の重さの約20%を占め、年間1億トン以上発生するとされています。もみ殻にはフェノール化合物やフラボノイドが含まれる一方、植物の硬い成分であるリグニンやケイ素を含む成分、燃えかすとなる灰分が多いことから商業的な用途が限られ、これまでは主に炭化や燃料に使われてきたと紹介されています。
米ぬかは穀粒全体の重さの約8〜10%を占め、食物繊維、たんぱく質、必須脂肪酸、ビタミンB群やビタミンE、カリウムやマグネシウムなどのミネラル、ガンマオリザノールなどの抗酸化成分を含みます。ただし、繊維が複雑な構造をつくって溶けにくいことが食品への利用を制限しているとされます。油を取り除いた後の米ぬかは、現状では主に家畜の飼料や燃料などに使われ、朝食用シリアルなど食品への利用はわずかにとどまっていると論文は述べています。
定着した利用法と新しい技術
著者らは、すでに確立された利用法として、家畜への利用、バイオ炭(植物などを蒸し焼きにしてつくる炭)の製造、バイオ燃料の生産、醸造への利用、米ぬか油の抽出を挙げています。
さらに、食品分野で価値を高める新しい技術として、超臨界二酸化炭素(高い圧力と温度のもとで液体と気体の中間的な性質をもつ二酸化炭素)を使った抽出や乾燥、非常に軽くすき間の多い素材であるエアロゲルの製造、バイオプラスチック、発酵、3Dプリンティングが取り上げられています。著者らは、これらの技術によって価値の高い機能性成分を回収したり、栄養面の質を高めたり、持続可能な食品原料や生分解性の包装材、個人に合わせた食品の開発につなげたりできると整理しています。
この総説が示すこと
著者らは、高度な加工技術を米の副産物の活用に取り入れることで、廃棄物を減らし、資源を効率よく使い、食品産業向けの価値ある製品を生み出す道が開け、資源を循環させる経済への移行につながりうると結論づけています。これまで捨てられがちだった米の副産物を、使い道のある資源として見直す視点を示した総説といえます。
原著論文の著者・所属:Sumanjot Kaur(Department of Food Science, University of Arkansas, N205, 2650 N. Young Ave, Fayetteville, AR 72704, USA)、Jaspreet Kaur(Department of Food Science, University of Arkansas, N205, 2650 N. Young Ave, Fayetteville, AR 72704, USA)、Ali Ubeyitogullari(Department of Biological and Agricultural Engineering, University of Arkansas, Fayetteville, AR 72701, USA; Department of Food Science, University of Arkansas, N205, 2650 N. Young Ave, Fayetteville, AR 72704, USA)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Sumanjot Kaur, Jaspreet Kaur, Ali Ubeyitogullari. Emerging Advancements in Upcycling Rice Processing Byproducts. Foods 2026-10-22. DOI: 10.3390/foods15213767. 原著ライセンス:CC BY.