著者の所属・活動拠点の国は、トルコです。
掲載誌:International Journal of Molecular Sciences
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
緑茶にはカテキンと呼ばれる生理活性成分が含まれ、その代表がエピガロカテキンガレート(EGCG)です。ただし、急須で入れる伝統的なお茶と、成分を濃縮した緑茶抽出物とでは、EGCGの含有量、摂り方、製品の形態、体内に取り込まれる量、安全性が異なると著者らは指摘しています。
この論文は、一定の手順で文献を整理して論じる「構造化ナラティブレビュー」と呼ばれる総説です。空腹がEGCGの体内動態(吸収されて血液中に現れ、消えていくまでの経過)にどう影響するか、そして体内の濃度が高まることが肝臓への毒性とどう関係するかを検討しています。著者らは、緑茶の安全性をもう一度まとめ直すのではなく、「空腹で濃度が上がる」ことと「肝臓が傷つく」ことを結びつけると一般に考えられている証拠の連鎖を、段階ごとに評価した点を特色としています。その際、人で実際に示された段階と、生物学的な推測にとどまる段階を区別しています。
空腹は血中のEGCGを増やす
論文によると、規格化されたカテキン製剤や精製したEGCGを、一晩何も食べていない状態で摂取すると、食事と一緒に摂取した場合に比べ、血液中の最高濃度と体内に取り込まれる総量がかなり高くなります。
ただし著者らは、この効果を示した根拠が、同じ参加者で条件を入れ替えて比べるランダム化比較2件であり、いずれも小規模で、用量や製剤も異なっていたと述べています。また、これらの研究は肝臓に届く量や肝障害そのものを調べていませんでした。
肝臓への影響について分かっていること
高濃度のEGCGが細胞を酸化させる方向に働いたり、細胞のエネルギー工場であるミトコンドリアの働きを損ねたりして肝細胞を傷つけるという証拠は、主に細胞や動物を使った実験から得られています。著者らは、そうした実験の濃度が、人で報告されている血中最高濃度をおよそ一桁上回っていると指摘しています。また、マウスでは、カロリー制限をすると、通常なら肝臓に害のない量のEGCGでも肝毒性が現れると報告されています。
人については、異なる結果を混同しないよう区別すべきだと著者らは述べています。第一に、抽出物を高用量で長期間使うと、一部の感受性の高い人で、肝臓の状態を示す血液検査値(アミノトランスフェラーゼ)が上昇することが、管理された臨床試験で示されています。第二に、肝臓に関わる有害事象は、淹れたお茶よりも、カテキンを多く含む製品を一度にまとめて摂る形の製剤に集中しています。第三に、症状として明らかな肝障害は登録症例で記録されており、HLA-B*35:01という特定の遺伝的な型と関連しますが、用量で決まるものではなく、個人の体質による「特異体質性」のものとされています。そして、検査値の異常が明らかな肝障害へ進むことは確かめられていないといいます。
この研究が示す意味
著者らの結論は、空腹は特に濃縮製剤からのEGCGの体内濃度を高めるものの、人において肝毒性の独立した原因であるとは確認されていない、というものです。空腹を肝臓に害を与える要因そのものではなく「体内に取り込まれる量を変える条件」として捉え、栄養状態も「空腹か否か」の二択ではなく段階的なものとして扱うことで、どの注意が証拠に基づいており、どの問いが本当に未解明なのかが明確になると論じています。
そのうえで著者らは、安全性を評価する際には、製品の種類、用量、一度にまとめて摂るかどうか、食後か空腹か、併用しているもの、そして個人の感受性を考慮すべきだとしています。
原著論文の著者・所属:Ayşegül Sümer(Department of Medical Biochemistry, Faculty of Medicine, Recep Tayyip Erdoğan University, 53100 Rize, Türkiye)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ayşegül Sümer. Fasting, Systemic Epigallocatechin-3-Gallate Exposure, and Hepatotoxicity. International Journal of Molecular Sciences 2026-10-22. DOI: 10.3390/ijms27219420. 原著ライセンス:CC BY.