著者の所属・活動拠点の国は、ルーマニアです。
掲載誌:Nutrients
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
食品添加物は、工業的に高度に加工された「超加工食品」を特徴づける成分です。しかし、腸内に住む細菌の集まり(腸内細菌叢、マイクロバイオーム)への影響は、通常の食品添加物の安全性評価ではほとんど扱われていません。
この論文は、これまでに発表された研究を整理した総説です。著者らは、食品添加物が腸内細菌叢にどのように作用しうるかの根拠を評価しました。あわせて、その知見を腸内細菌叢も含めた安全性評価にどう生かせるかを検討しています。
何をどのように調べたか
研究チームは、6種類の添加物グループについて、四つの経路に沿って根拠を検討しました。一つ目は細菌の種類や構成の変化です。二つ目は細菌がつくる物質(代謝物)の変化です。三つ目は腸の表面を守る粘液層や上皮のバリアが損なわれることです。四つ目は免疫への影響です。
集めた研究は五つの段階に分けて整理されました。試験管内の実験、体外に取り出した腸内細菌などを使う実験、動物実験、人を観察した研究、人を対象にした管理された試験の五つです。慢性疾患との関連については、6つの病気の領域ごとに、2人の評価者が明示した基準に基づいて根拠の強さを判定しました。判定結果が条件によってどの程度変わるかを確かめる感度分析も行っています。
さらに著者らは、こうした根拠を、段階ごとに判断をはさみながら進める評価の手順に落とし込みました。この手順は、乳化剤などに使われるカルボキシメチルセルロースを例に示されました。そのうえで、カラギーナン、甘味料のアセスルファムK、二酸化チタンに当てはめて検証したところ、三つはそれぞれ異なる判定結果になったと報告されています。
主な結果
人を対象にした研究と、体外での腸内細菌実験で最も直接的な根拠がそろっていたのは、カロリーのない甘味料(非栄養甘味料)と乳化剤でした。これらでは、反応の出方に個人差があり、その差がその人の腸内細菌叢によって左右されることも示されています。ただし、効果が見られなかった試験や、結果が食い違う試験もあると著者らは述べています。
病気との関連では、消化管と代謝に関する結果が最も強く支持されました。心血管疾患との関連は中程度でした。自己免疫疾患、神経疾患、精神疾患とのつながりは、まだ初期段階の根拠にとどまるとされています。
代謝や心血管に関する疫学研究は、主にフランスの大規模追跡調査「NutriNet-Santé」に頼っていました。報告された危険度の上昇は小さく、ハザード比は摂取量が一定量増えるごとにおおむね1.03〜1.15でした。また、添加物の摂取量は間接的な方法で推定されています。同じ調査から得られた、複数の添加物の組み合わせ(混合物)に関する最近の分析も検討に含められました。
この研究が示すこと
著者らは、食品添加物は条件によって腸内細菌叢に作用しうる食事由来の曝露だと結論づけています。現在の根拠からは、添加物の安全性評価に、腸内細菌叢の構成、腸のバリア機能、免疫に関する指標を加えて検討することが支持されるとしています。
一方で、多くの慢性疾患と添加物との因果関係はまだ証明されていないことも明記しています。この総説は、分かっていることと未解明のことを区別したうえで、腸内細菌叢を安全性評価に組み込むための具体的な枠組みを示したものといえます。
原著論文の著者・所属:Ioana Cristina Crivei(Department of Food Technologies, Faculty of Agriculture, “Ion Ionescu de la Brad” Iasi University of Life Sciences, 3 Mihail Sadoveanu Alley, 700489 Iasi, Romania)、Roxana Nicoleta Ratu(Department of Food Technologies, Faculty of Agriculture, “Ion Ionescu de la Brad” Iasi University of Life Sciences, 3 Mihail Sadoveanu Alley, 700489 Iasi, Romania)、Ionuț-Dumitru Veleșcu(Department of Food Technologies, Faculty of Agriculture, “Ion Ionescu de la Brad” Iasi University of Life Sciences, 3 Mihail Sadoveanu Alley, 700489 Iasi, Romania)、Andreea Bianca Balint(Department of Food Technologies, Faculty of Agriculture, “Ion Ionescu de la Brad” Iasi University of Life Sciences, 3 Mihail Sadoveanu Alley, 700489 Iasi, Romania)、Florin Daniel Lipșa(Department of Food Technologies, Faculty of Agriculture, “Ion Ionescu de la Brad” Iasi University of Life Sciences, 3 Mihail Sadoveanu Alley, 700489 Iasi, Romania)、Florina Stoica(Research Institute for Agriculture and Environment, “Ion Ionescu de la Brad” Iasi University of Life Sciences, 14 Sadoveanu Alley, 700490 Iasi, Romania)、Luciana Alexandra Crivei(Department of Public Health, Faculty of Veterinary Medicine, “Ion Ionescu de la Brad” Iasi University of Life Sciences, 3 Mihail Sadoveanu Alley, 700490 Iasi, Romania)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ioana Cristina Crivei, Roxana Nicoleta Ratu, Ionuț-Dumitru Veleșcu, et al. Food Additives as Microbiome-Active Dietary Exposures: Mechanisms, Host Susceptibility, and an Operational Case for Microbiome-Inclusive Risk Assessment. Nutrients 2026-10-22. DOI: 10.3390/nu18213461. 原著ライセンス:CC BY.