著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Jurnal Penelitian Pendidikan IPA
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
サラク(学名Salacca zalacca)は、うろこ状の皮から「スネークフルーツ」とも呼ばれる熱帯の果物です。インドネシアの北スマトラ、ジャワ、バリなどで広く栽培されています。研究チームによると、サラクには食物繊維や、植物に含まれるフェノール化合物などの成分が含まれます。またたんぱく質が少なく、グルテンをほとんど含みません。
フェノール化合物は、不安定な分子である「フリーラジカル」を打ち消す働き(抗酸化活性)をもつことで知られる成分群です。一方、パフペストリー(何層にも重なったパイ生地)などの焼き菓子は、主に小麦粉で作られています。著者らは、小麦粉中心の製品は繊維やこうした成分が比較的少ないと指摘しています。
そこで研究チームは、サラクを粉にしてパフペストリーの小麦粉の一部または全部を置き換え、品質やフェノール化合物の量、抗酸化活性がどう変わるかを調べました。サラク粉をパフペストリーに使った例はまだ限られている、というのが研究の出発点です。
サラク粉の作り方と浸漬処理の比較
研究は二段階で行われました。第一段階では、北スマトラの品種「シデンプアン・プティ」のサラクを薄切りにしました。これを乳酸、クエン酸、消石灰(水酸化カルシウム)のいずれかの溶液に30分間浸します。濃度は1%、1.5%、2%の3通りです。その後、60℃のオーブンで12時間乾燥させ、粉砕してふるいにかけました。浸漬は、切った果肉が茶色く変色するのを抑え、粉の品質を保つ目的で行われています。
報告によると、溶液の種類と濃度は粉の性質に有意な影響を与えました。原料から得られた粉の割合(収率)は、1%消石灰で最も高く13.93%でした。最も低かったのは2%乳酸の8.24%です。粉の水分は5.78〜11.47%で、どの処理でもインドネシア国家規格(SNI)の基準である14.5%を下回りました。
粉を焼いた後に残る無機質の量(灰分)は、2%消石灰で18.69%と非常に高くなりました。2%乳酸では0.61%と最も低い値でした。著者らは、消石灰ではカルシウムが果肉に取り込まれて残るためと説明しています。こうした結果から研究チームは、2%乳酸に浸した粉を最良と判断しました。理由は、水分が低く色が安定し、灰分が規格に合い、保存中のカビにも強かったことです。この粉が第二段階に使われました。
パフペストリーでの置き換えの結果
第二段階では、小麦粉をサラク粉に置き換える割合を0%、25%、50%、75%、100%の5段階に変えてパフペストリーを作りました。そして成分、抗酸化活性、味の好みを比べました。
成分では、サラク粉の割合が増えるほど水分が増え、100%置き換えで7.04%と最も高くなりました。たんぱく質は7.45%から8.00%へわずかに増えました。脂質は35.84%から29.17%へ減っています。炭水化物には有意な差が見られませんでした。
抗酸化活性は、試験管内でDPPHという試薬のラジカルを打ち消す力で測定されました。指標のIC50は、ラジカルの半分を打ち消すのに必要な抽出液の濃度で、値が小さいほど活性が強いことを示します。IC50は、置き換えなしの199.26µg/mLから、100%置き換えでは93.12µg/mLへ下がりました。フェノール化合物の総量(没食子酸に換算した値)は、乾燥重量1gあたり12.46mgから26.31mgへ増えました。著者らは、フェノール化合物の増加とIC50の低下が対応していることから、フェノール化合物が製品の抗酸化活性の主な担い手だと考察しています。
一方、100人の学生による試食評価では、サラク粉が多いほど色が濃い茶色になりました。食感は硬く、サクサク感の少ないものになりました。味もサラク特有の風味や渋みが強まり、好まれにくくなりました。色・食感・味では、置き換えなしと25%置き換えが最も好まれています。香りには有意な差がありませんでした。著者らは、バターや焼き色由来の香りがサラクの香りより強いためと説明しています。
研究が示すこと
研究チームは、サラク粉の割合を増やすとフェノール化合物と抗酸化活性は高まるものの、割合が高すぎると味や見た目の好まれやすさが下がると結論づけました。そのうえで、成分、抗酸化活性、試食での受け入れやすさの釣り合いが最もよい配合として、小麦粉の25%をサラク粉に置き換える配合を挙げています。
この研究は、地域で採れる果物を粉にして身近な焼き菓子に取り入れると、製品に含まれる成分がどう変わるかを示しました。同時に、おいしさとの兼ね合いを数値で示した報告といえます。
著者:Soraya(Universitas Sumatera Utara)、Hotnida Sinaga(Universitas Sumatera Utara)、Jansen Silalahi(Universitas Sumatera Utara)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Soraya, Hotnida Sinaga, Jansen Silalahi. Formulasi of Pastry with Salak Flour as a Source of Phenolic Compounds and Antioxidant Activity Analysis. Jurnal Penelitian Pendidikan IPA 2026-10-13. DOI: 10.29303/jppipa.v12i10.15558. 原著ライセンス:CC BY.