著者の所属・活動拠点の国は、アルゼンチンです。

掲載誌:Foods (Basel, Switzerland)

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: Europe PMC

研究の目的

スナック菓子やシリアルの多くは、エクストルーダーと呼ばれる押出し加工機で作られます。原料に高温・高圧と強い力を短時間かけ、出口から押し出した瞬間に膨らませる方法で、効率よく大量生産できます。一方で、原料にはトウモロコシ粉や精製でんぷんがよく使われ、たんぱく質や機能性成分が少ないことが課題とされてきました。

研究チームが注目したのは「キノコ発酵粉」です。これは、キノコの菌を穀物の上で増殖させ(固体発酵)、キノコの傘などの子実体を作らせないまま、菌糸と穀物ごと乾燥・粉砕した粉です。著者らは以前、霊芝の仲間のガノデルマ・セッシレ(Ganoderma sessile)とヒラタケ(Pleurotus ostreatus)で全粒小麦を発酵させると、たんぱく質やフェノール類、抗酸化力などが高まり、その性質がクッキーに加えても保たれることを報告していました。

ただし押出し加工は、焼き菓子よりはるかに強い力と熱がかかる工程です。論文によると、こうした発酵粉を押出し加工に使った例はこれまで報告されていませんでした。そこで本研究は、2種類のキノコ発酵粉をトウモロコシ粉に混ぜて膨化スナックを作り、加工のしやすさや形・食感・成分がトウモロコシだけの場合と比べてどう変わるかを調べました。

何を調べたか

研究チームは、トウモロコシ粉の10%または20%を各キノコ発酵粉に置き換えた配合と、発酵粉だけ(100%)の配合を用意し、トウモロコシ粉だけの対照と比べました。二軸式の押出し機を使い、最高130℃、スクリュー回転数毎分600回など同じ条件で製造しています。

評価したのは、加工時に機械が材料に与えたエネルギー(比機械エネルギー)や出口での圧力、製品がどれだけ膨らんだか(膨化指数)、密度、割るのに必要な力(硬さ)、水をどれだけ抱え込み、どれだけ溶け出すかを示す指標、そして成分組成などです。

主な結果

10〜20%の置き換えでは、加工時のエネルギーと出口圧力に、トウモロコシだけの場合との統計的な差は見られませんでした。発酵粉100%では、エネルギーは低く、出口圧力は高くなりました。著者らは、発酵によってでんぷんが減り、発酵前の殺菌工程ででんぷんがあらかじめ糊化していたことでエネルギーが下がり、一方で食物繊維の多さが圧力を上げたと解釈しています。

膨らみ方は、10〜20%の置き換えで対照(膨化指数2.04)よりやや小さくなりました(1.76〜1.90)。それでも密度は対照と同程度か低く、ガノデルマを10%加えたものが最も軽く仕上がりました。発酵粉100%の結果は菌の種類で大きく分かれました。ガノデルマ100%は対照と同程度に膨らみ、密度も対照より低かったのに対し、ヒラタケ100%は最も膨らまず、密度は対照の約2倍となり、著者らは構造が大きくつぶれたと述べています。

硬さは、発酵粉を加えたすべての製品で対照(64.6ニュートン)より有意に低くなり、10%の置き換えでも差が出ました。最も柔らかかったのはガノデルマ100%(35.8ニュートン)です。ヒラタケ100%は密度が非常に高いにもかかわらず硬さは10〜20%配合と同程度で、著者らは、詰まってはいるもののまとまりが弱く、もろい構造になったと考えています。

成分面では、発酵粉100%の製品で、たんぱく質として測定された値がトウモロコシの約2倍に高まりました(100gあたりトウモロコシ7.58gに対し15.09〜17.22g)。ただし著者らは、この測定法では菌の細胞壁成分(キチン)に由来する窒素も含まれるため、一部はたんぱく質ではない可能性があると注意しています。還元糖も発酵粉の割合が増えるほど多くなりました。水を抱え込む力は発酵粉の割合が増えるにつれて低下し、溶け出す成分の量はいったん減った後、発酵粉100%で再び増えました。

研究が示すこと

この研究は、キノコ発酵粉をトウモロコシの膨化スナックに10〜20%混ぜても加工時の機械への負荷は変わらず、製品の膨らみ、密度、硬さなどの性質が変化することを示しました。また、同じ発酵粉でも菌の種類によって押出し加工での振る舞いが大きく異なることも分かりました。

著者らは、ガノデルマで発酵させた全粒小麦粉について、密度を下げつつトウモロコシに近い膨らみを保てることから、新しい膨化スナックの素材候補になり得ると述べています。一方で、硬さの低下が最も大きかった点は製品設計で考慮すべきだとしています。こうした違いが生じる仕組みについては、内部の気泡構造などを直接観察して確かめる必要があり、現時点では未確認の解釈であることも論文は明記しています。

原著論文の著者・所属:Mazzola A(Laboratorio de Bioprospección en Investigación Aplicada en Plantas y Hongos (LaBIAPH), Facultad de Ciencias Naturales y Ciencias de la Salud FCNyCS, Universidad Nacional de la Patagonia (UNPSJB), Esquel 9200, Argentina.)、Aranibar C(Instituto de Ciencia y Tecnología de los Alimentos Córdoba (ICyTAC), CONICET-UNC, Córdoba 5000, Argentina.)、Kuhar F(Instituto Multidisciplinario de Biología Vegetal (IMBIV, CONICET), Universidad Nacional de Córdoba, Córdoba 5000, Argentina.)、Greslebin A(Laboratorio de Bioprospección en Investigación Aplicada en Plantas y Hongos (LaBIAPH), Facultad de Ciencias Naturales y Ciencias de la Salud FCNyCS, Universidad Nacional de la Patagonia (UNPSJB), Esquel 9200, Argentina.)、Ribotta PD(Instituto de Ciencia y Tecnología de los Alimentos Córdoba (ICyTAC), CONICET-UNC, Córdoba 5000, Argentina.; Facultad de Ciencias Exactas, Físicas y Naturales, Universidad Nacional de Córdoba, Córdoba 5000, Argentina.)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Mazzola A, Aranibar C, Kuhar F, et al. Functional and Structural Properties of Extruded Products Enriched with Mushroom-Fermented Flour. Foods (Basel, Switzerland) 2026-09-29. DOI: 10.3390/foods15193479. 原著ライセンス:CC BY.