著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

デイリリー(Hemerocallis citrina)は、つぼみを食用や薬用に利用してきた植物です。研究チームによると、収穫期は毎年6月から8月までと短く、収穫後は呼吸が盛んで傷みやすいため、乾燥して保存性を高める加工が行われています。

業界で主流の熱風乾燥には課題があります。乾燥に時間がかかり、褐色に変色(褐変)したり、色素が失われたりしやすいうえ、つぼみに含まれる有毒なアルカロイドであるコルヒチンが残る問題もあります。著者らは、乾燥前にどのような下処理(前処理)を施せば、乾燥効率と品質、安全性を両立できるかを明らかにすることを目的に、複数の前処理を体系的に比較しました。

比べた前処理と調べた項目

比較した前処理は5種類です。100℃の湯に2分間通す「湯通し」、100℃の蒸気で2分間加熱する「蒸気処理」、クエン酸・アスコルビン酸(ビタミンC)・亜硫酸水素ナトリウムを混ぜた色止め液に30分間浸す「色止め液浸漬」、1%炭酸水素ナトリウム(重曹)のアルカリ性溶液に30分間浸す「アルカリ浸漬」、短時間の湯通しのあと塩化カルシウム水溶液中で超音波を20分間当てる「湯通し+超音波処理」です。これに、何も処理しない対照群を加えました。

すべての試料は同じ条件で乾燥させました。60℃で2時間乾燥し、その後は50℃で水分が10%以下になるまで乾燥を続けています。研究チームはこの過程で、乾燥の速さを測りました。さらに、核磁気共鳴(NMR)とMRIを使い、試料内部の水が「結合水」「自由に動ける水」などのどの状態で、どこに残っているかを調べています。乾燥後の製品については、色、褐変の程度、色素(クロロフィルとカロテノイド)、ポリフェノール、褐変反応に関係する物質である5-ヒドロキシメチルフルフラール(5-HMF)、コルヒチンの量を測定しました。組織の微細構造や香り成分も分析しています。

主な結果

乾燥にかかった時間は、湯通し+超音波処理と色止め液浸漬が最も短い5時間でした。湯通しと蒸気処理は6時間、アルカリ浸漬と対照群は8時間でした。NMRの分析では、湯通し+超音波処理の試料から自由に動ける水が最も早く抜けており、この処理で乾燥が最も速かった理由を説明する結果と論文は述べています。

色止め液浸漬は、品質面で多くの利点を示しました。乾燥品は最も明るい色になり、黄色みも蒸気処理とともに最も強く、市場で好まれる黄金色に近い仕上がりでした。カロテノイドとポリフェノールの量は最も多く、褐変の程度は最も低く抑えられました。湯通しと蒸気処理という加熱による二つの前処理では、褐変が対照群より強く出ています。

湯通し+超音波処理は、組織の細胞構造を比較的よく保ち、5-HMFの量が最も少ない処理でした。ただし、クロロフィルが残りすぎて乾燥品が緑がかり、黄色みが弱くなりました。カロテノイドとポリフェノールの量も最も少ない結果でした。

安全性の面では、5種類の前処理のいずれでも、乾燥品のコルヒチン量が対照群より大きく減りました。前処理どうしの間には統計的に意味のある差は見られませんでした。微細構造の観察では、湯通しとアルカリ浸漬で組織の損傷が目立ちました。一方、色止め液浸漬では対照群に近い均一な構造が保たれていました。

研究が示すこと

著者らは、品質、安全性、市場での受け入れやすさを総合的に考え、色止め液浸漬をデイリリーの工業的な熱風乾燥に最適な前処理として推奨しています。湯通し+超音波処理は乾燥を速めますが、緑がかった色を抑える追加の工夫と組み合わせた場合に限って用いるべきだとしています。

この研究は、乾燥の速さと乾燥品の品質が必ずしも一致しないことを示しました。また、最適な前処理を選ぶには、色や成分、安全性をあわせて評価する必要があることも示しています。

原著論文の著者・所属:Yongkang Xie(Agricultural Product Processing Research Center, Henan Academy of Agricultural Sciences)、Junjun Geng(Agricultural Product Processing Research Center, Henan Academy of Agricultural Sciences)、Xuanxuan Yang(Agricultural Product Processing Research Center, Henan Academy of Agricultural Sciences)、Yan Zhao(Agricultural Product Processing Research Center, Henan Academy of Agricultural Sciences)、Liuyan Wang(Agricultural Product Processing Research Center, Henan Academy of Agricultural Sciences)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yongkang Xie, Junjun Geng, Xuanxuan Yang, et al. Pre-treatments modulate drying characteristics, moisture removals, pigments and browning substrates, flavor, and microstructure in hot air dried daylily (Hemerocallis citrina). Frontiers in Nutrition 2026-08-04. DOI: 10.3389/fnut.2026.1896965. 原著ライセンス:CC BY.