この研究は、イスラエルの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Clinical Nutrition ESPEN
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
動物性食品を一切とらない厳格なヴィーガン食を妊娠中に続けた場合、どのような栄養の特徴があり、それがおなかの赤ちゃんの成長とどう関係するのかについては、これまで十分な知見がありませんでした。
研究チームは、ヴィーガンの妊婦の栄養摂取の特徴を明らかにし、食事のどの要素が新生児の出生体重や「SGA(在胎週数に比べて小さく生まれること)」と関連するのかを調べることを目的としました。この研究でのSGAは、出生体重が10パーセンタイル未満、つまり基準となる分布の下位10%未満に当たる場合と定義されています。
調べた方法
この研究は、ある前向き観察研究のデータを改めて分析した「二次解析」です。対象は、一つの医療機関で出産した単胎妊娠の女性で、一定の食習慣を続けていた人たちです。参加者はヴィーガンとそれ以外に分けられ、属性やサプリメントの使用状況を報告しました。
妊娠後期には、妥当性が確認された食物摂取頻度調査票(ふだん何をどのくらいの頻度で食べているかを尋ねる質問票)に回答してもらい、出産の結果は医療機関の電子的なデータベースから取得しました。そのうえで、両グループの栄養摂取を比べ、たんぱく質やアミノ酸の摂取と赤ちゃんの成長との関連を、回帰分析や、データを条件ごとに枝分かれさせて分類する決定木の手法、探索的な相関分析で検討しました。
主な結果
参加者230人のうち54人がヴィーガン食でした。抄録によると、ヴィーガンの女性はたんぱく質の摂取量が少なく(1日60グラム対82グラム)、妊娠前の体重1キログラムあたりで見ても少ない(1日1.10グラム対1.44グラム)という結果でした。
また、食事に占めるたんぱく質の割合が高いほどSGAのリスクが低いという関連が報告されています(オッズ比0.80)。決定木の分析では、たんぱく質全体に占めるアミノ酸の一種ロイシンの割合が出生体重を分ける最初の分岐の要素として選ばれ、その割合が5.636%を上回るグループの平均出生体重は3341グラム、それ以下のグループは3074グラムで、267グラムの差がありました。
探索的な相関分析では、赤ちゃんの成長の指標と、いずれも控えめながら正の相関を示したものとして、食事に占めるたんぱく質の割合、ロイシンの摂取量そのもの、そしてロイシン、チロシン、バリンそれぞれがたんぱく質全体に占める割合が挙げられています。
ほかの栄養素では、ヴィーガンの女性は炭水化物、食物繊維、葉酸、鉄の摂取が多い一方、脂質、カルシウム、ビタミンD、ビタミンB12、DHA、コリンの摂取が少ないことが示されました。たとえばビタミンB12は1日1.5マイクログラム対4.6マイクログラム、カルシウムは764ミリグラム対1053ミリグラムでした。
研究が示すこと
著者らは、ヴィーガンの女性ではそれ以外の女性よりSGAの割合が高く、その高いリスクの一部は母親のたんぱく質の摂取量や組成の違いに関係している可能性があると結論づけています。これは観察研究で見られた関連であり、因果関係を示したものではありません。
さらに著者らは、ヴィーガンの妊婦ではカルシウム、ビタミンB12、ビタミンD、DHA、コリンの摂取が少なかったことから、厳格なヴィーガン食を続ける妊婦の栄養評価や相談の際に、これらの栄養素が重要な検討事項になるとしています。
著者:Efrat Paz Dubinsky(Nutrition Department, Tel Aviv Sourasky Medical Center, Tel Aviv, Israel. Electronic address: [email protected])、Tomer Avnon(Lis Hospital for Women's Health, Tel-Aviv Sourasky Medical Center, Gray Faculty of Medical and Health Sciences, Tel Aviv University, Tel Aviv, Israel)、Sivan Shaham(Nutrition Department, Tel Aviv Sourasky Medical Center, Tel Aviv, Israel)、Yaffa Elbaum Shiff(Nutrition Department, Tel Aviv Sourasky Medical Center, Tel Aviv, Israel; Department of Nutrition Sciences, School of Health Sciences, Ariel University, Ariel, Israel)、Yariv Yogev(Lis Hospital for Women's Health, Tel-Aviv Sourasky Medical Center, Gray Faculty of Medical and Health Sciences, Tel Aviv University, Tel Aviv, Israel)、Ronit Anbar(Nutrition Department, Tel Aviv Sourasky Medical Center, Tel Aviv, Israel)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Efrat Paz Dubinsky, Tomer Avnon, Sivan Shaham, et al. Characterization of Nutritional Intake in Vegan Pregnant Women and its Association on Birth Weight. Clinical Nutrition ESPEN 2026-10-01. DOI: 10.1016/j.clnesp.2026.105172. 原著ライセンス:CC BY.