著者の所属・活動拠点の国は、ポーランドです。

掲載誌:Molecules

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ラズベリーは、ポリフェノールなどの生理活性成分を含む果物として関心を集めています。生理活性成分とは、体の働きに何らかの作用を持つと考えられている成分のことです。ただし著者らによると、果実の味に関わる品質、フェノール類の組成、抗酸化能力、一部のフェノール酸をまとめて調べ、果実の色や実のつけ方が異なる品種どうしを比べた研究はまだ少ないといいます。

そこで研究チームは、同じ条件で栽培したラズベリー品種を対象に、果実の物理化学的な性質、生理活性成分、抗酸化能力、一部のフェノール酸を比較しました。品種による品質の違いをより広く理解し、好ましい味や成分を持つ品種選びに役立てることがねらいです。

何をどのように調べたか

研究は、ポーランドの主要なラズベリー産地の一つであるルブリン県の露地の畑で行われました。赤、黄、黒紫色の実をつける16品種を、同じ施肥方法と点滴かん水のもとで育てています。各品種15株を5株ずつ3つのグループに分け、2025年のシーズンに完熟した果実をグループごとに収穫しました。各グループの果実はそれぞれ独立した試料として分析されました。

調べた項目には、乾物率(水分を除いた固形分の割合)、糖度の目安となる可溶性固形分(°Brix)、酸味の目安となる滴定酸度、甘さと酸味のバランスを示す両者の比率(TSS/TA比)が含まれます。成分面ではビタミンC、タンニン、総フェノール化合物、フラボノイド、アントシアニン(赤や紫の色素)を測りました。さらに、FRAP法とDPPH法という試験管内の化学的な測定で抗酸化能力を評価し、6種類のフェノール酸が含まれるかどうかと、その量を調べました。

対象品種には、伸びた翌年の枝に実をつける「フロリケーン型」と、その年に伸びた枝にも実をつける「プリモケーン型」が含まれていました。著者らは、この二つのグループの比較も行っています。

主な結果

論文によると、評価したすべての品質項目で、品種間に統計的に意味のある差が見られました。乾物率は8.36〜17.29%の範囲で、Delniwaが最も高く、Poranna Rosaは他の品種より明らかに低い値でした。可溶性固形分は8.50〜13.30°Brixで、Promyk、Delniwa、Husariaが高く、Glen CarronとGlen Morが低い結果でした。滴定酸度は生の果実100gあたり1.41〜2.74gで、PoranekとPolanaが最も高く、黒紫色の品種Hebanが最も低い値でした。TSS/TA比は3.40〜8.37と大きく異なり、Promykが最も高い値を示しました。

実のつけ方のタイプ別に見ると、プリモケーン型のグループは乾物率、可溶性固形分、TSS/TA比、フラボノイド含量が高く、甘さや食べやすさにつながりうる特徴を示しました。一方、フロリケーン型のグループは、ビタミンC、タンニン、総フェノール化合物などの成分がより多く、FRAP法で測った抗酸化能力も高い値でした。アントシアニン含量とDPPH法の値には、両グループ間で差がありませんでした。ただし著者らは、両グループは異なる品種で構成されているため、この違いを実のつけ方のタイプそのものの性質とみなすことはできないと述べています。

成分どうしの関係を調べると、FRAP法の値が高い果実ほど総フェノール化合物、フラボノイド、アントシアニンが多い傾向があり、とくにフラボノイドとの結びつきが強く見られました。著者らは、抗酸化能力は単一の成分群で決まるのではなく、複数の成分の組み合わせを反映していると解釈しています。なお、これらは相関関係として示されたもので、因果関係を直接確かめたものではありません。

6種類のフェノール酸は、多くの品種で検出されないか、検出されても量を正確に測れる水準に達しませんでした。シナピン酸は全品種で検出され、フェルラ酸は16品種中15品種で検出されましたが、量を測れたのは一部の品種に限られました。著者らは、これらの酸が他の物質と結合した形で存在している可能性に触れつつ、今回はその点を直接調べていないとしています。

研究が示すこと

この研究は、同じ畑・同じ管理で育てても、ラズベリーの味に関わる性質や抗酸化に関わる成分は品種によって大きく異なることを示しました。著者らは、果実の品質を評価する際には特定の成分だけでなく全体の組成を見ることが重要であり、品種選びが味と成分の両面を左右する重要な要素になると述べています。

一方で、今回の結果は1か所・1シーズンの栽培にもとづくもので、抗酸化能力も体内での働きではなく試験管内の測定によるものです。また、黒ラズベリーの品種は対象に含まれていません。著者らは、品種間の差が別の場所や年でも保たれるかどうかは、今回の結果からは判断できないとしています。

原著論文の著者・所属:Kamil Buczyński(Institute of Horticulture Production, University of Life Sciences in Lublin, Głęboka 28, 20-612 Lublin, Poland)、Magdalena Kapłan(Institute of Horticulture Production, University of Life Sciences in Lublin, Głęboka 28, 20-612 Lublin, Poland)、Tomasz Czernecki(Department of Biotechnology, Microbiology and Human Nutrition, University of Life Sciences in Lublin, Skromna 8, 20-704 Lublin, Poland)、Anna Stój(Department of Biotechnology, Microbiology and Human Nutrition, University of Life Sciences in Lublin, Skromna 8, 20-704 Lublin, Poland)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Kamil Buczyński, Magdalena Kapłan, Tomasz Czernecki, et al. Comparative Evaluation of Bioactive Compounds, Antioxidant Capacity, and Quality Traits of Raspberry Cultivars. Molecules 2026-10-15. DOI: 10.3390/molecules31203703. 原著ライセンス:CC BY.