著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

品種によってグアバ葉茶の品質はどう違うのか

グアバは熱帯・亜熱帯で広く栽培される常緑の低木で、果実だけでなく葉も食品や民間薬の素材として使われてきました。近年は、グアバの葉がカフェインを含まないハーブティーの原料として注目されています。

これまでの品種比較の研究は、主に生の葉に含まれるポリフェノールやフラボノイドの総量、抗酸化力の指標といった「全体量」を比べるものでした。そうした研究では、品種によってこれらの値が変わることが繰り返し報告されています。一方で、お茶に加工した後の香り・味・抗酸化性が、どの成分と結びついて品種ごとに違ってくるのかは、成分単位では十分に整理されていませんでした。

そこで研究チームは、品種による香りの違いを特徴づける成分のまとまりを明らかにすること、香りを持たない成分のグループ分けを味の違いと結びつけることに取り組みました。さらに、抗酸化力が成分の総量で決まるのか、それとも特定の成分と関係するのかを確かめ、これらを一つの枠組みにまとめることを目指しました。

同じ条件で作ったお茶を複数の方法で分析

研究には、中国・広西チワン族自治区南寧市にある遺伝資源保存施設で育てられた8品種のグアバを用いました。葉の成熟度をそろえるため、樹齢18か月の健康な木から、先端の芽のすぐ下にある十分に開いた若い葉2枚だけを、同じ日に採取しました。品種ごとに9本の木を選び、3本ずつまとめて3つの試料としています。

葉は緑茶と同じ標準的な手順でお茶に加工されました。しおれさせた後、加熱して酵素の働きを止め、揉んでから乾燥させる工程です。

分析はいくつもの方法を組み合わせて行われました。香りについては、センサーで匂いのパターンをとらえる「電子鼻」と、揮発性の成分を一つずつ分けて調べるガスクロマトグラフィー質量分析を使いました。味については、センサーで渋み・うま味・苦みなどの反応を測る「電子舌」を使いました。さらに液体クロマトグラフィー質量分析で、香りを持たない成分を網羅的に調べ、21種類のフラボノイド・フェノール化合物を定量しました。あわせて、ポリフェノールやフラボノイドの総量、ビタミンC、試験管内でDPPHという物質を使って測るラジカル消去活性、ポリフェノールを酸化させる酵素(PPO)の活性も測定しています。

香り・渋み・抗酸化性で見えた品種ごとの違い

香りでは、電子鼻の段階から「Yanzhi Hong」と「Hongbaoshi」が対照的な反応パターンを示しました。成分分析を合わせると、品種の香りは大きく3つの型で説明されました。1つ目は、リモネンやα-ピネンといったモノテルペン類が多く集まる型で、「Yanzhi Hong」と「Jindou Xiang」がこれにあたり、特にYanzhi Hongで最も目立ちました。Yanzhi Hongのモノテルペン類の合計量は、ほかの品種のおよそ1.8〜3.7倍でした。2つ目は「Xigua」「Xigua No. 2」「Hongbaoshi」に見られた型で、モノテルペン以外のさまざまな種類の成分が含まれていました。3つ目は、品種の区別に効く香り成分の多くが少なめの型です。論文は、1つ目の型を柑橘や樹脂、ハーブを思わせる香りの背景と結びつけて考察しています。ただし、1つ目の型(2品種)と2つ目の型(3品種)の比較は品種数が少ないため統計的な裏付けが限られており、著者らはこのグループ分けを統計的に確定したものではなく、調べた品種についての記述として扱っています。

味では、電子舌で渋みの値が最も高かった「Fenhongmi」と「Xigua」が、どちらも成分の網羅分析で同じグループに入りました。このグループはフラボノイド配糖体が多いという特徴を持っています。このグループ分けは味のデータを使わずに成分だけから導かれたものなので、著者らは渋みとの一致を、異なる測定どうしが互いを支える結果と位置づけています。渋みに関わる候補成分と可溶性糖の比率も、渋みの指標と安定して関連していました。著者らはこれを因果関係ではなく、成分どうしのバランスと味の関連として示しています。一方、苦みの品種差は比較的小さく、どの成分によるものかは特定できませんでした。

抗酸化性では、DPPHラジカル消去活性と、ポリフェノールやフラボノイドの総量との相関が弱いことが分かりました(相関係数はいずれも0.188)。実際、DPPH活性が最も高かったのは「Xinshiji」でしたが、ポリフェノールとフラボノイドの総量が最も多かったのは「Wuzi」でした。統合解析では、アストラガリンなど5つの成分が有力な候補として挙げられています。著者らは、この結果をDPPH試験という一つの化学的な測定に限ったものとし、抗酸化力全体を表すものではないと注意を促しています。

品質は「総量」より成分の組み合わせで形づくられる

香り・味・抗酸化の各分野を統合した結果、品質と関連する候補成分として110種類が絞り込まれました。また、香りによる品種のグループ分けと、香りを持たない成分によるグループ分けは完全には一致しませんでした。著者らはここから、香りと、味や抗酸化に関わる性質が、ある程度別々の成分の軸と結びついている可能性を示しています。

論文は、グアバ葉茶の品質の違いは個々の目印となる成分ではなく、複数の性質がまとまって表れたものだと結論づけています。そのうえで、テルペン類の香りが豊かな製品、それとは異なる香りの製品、ポリフェノールが残りやすいタイプといった方向で、品種選びの手がかりになり得るとしています。

一方で著者らは、多くの成分の同定が推定の段階にあること、分析が品種の平均値に基づいていることを挙げています。味や抗酸化との関連は候補の段階にとどまり、標準物質による確認や加工過程を追った検証が必要だとしています。この研究は、グアバ葉茶の品質を総量の比較から一歩進め、成分の組み合わせという視点で品種の個性をとらえ直す試みといえます。

原著論文の著者・所属:Songqiong Ma(Guangxi Subtropical Crops Research Institute, Guangxi Academy of Agricultural Sciences, Nanning 530001, China)、Shimiao Chen(Guangxi Key Laboratory of Quality and Safety Control for Subtropical Fruits, Guangxi Subtropical Crops Research Institute, Nanning 530001, China; Guangxi Subtropical Crops Research Institute, Guangxi Academy of Agricultural Sciences, Nanning 530001, China; Key Laboratory of Quality and Safety Control for Subtropical Fruit and Vegetable, Ministry of Agriculture and Rural Affairs, Nanning 530001, China)、Lin Ning(Guangxi Subtropical Crops Research Institute, Guangxi Academy of Agricultural Sciences, Nanning 530001, China)、Jingsheng Fan(Guangxi Subtropical Crops Research Institute, Guangxi Academy of Agricultural Sciences, Nanning 530001, China)、Jingwen Ai(Guangxi Subtropical Crops Research Institute, Guangxi Academy of Agricultural Sciences, Nanning 530001, China)、Haojun Chen(Guangxi Subtropical Crops Research Institute, Guangxi Academy of Agricultural Sciences, Nanning 530001, China)、Jiang He(Guangxi Subtropical Crops Research Institute, Guangxi Academy of Agricultural Sciences, Nanning 530001, China)、Qinyu Lu(Guangxi Key Laboratory of Quality and Safety Control for Subtropical Fruits, Guangxi Subtropical Crops Research Institute, Nanning 530001, China; Guangxi Subtropical Crops Research Institute, Guangxi Academy of Agricultural Sciences, Nanning 530001, China; Key Laboratory of Quality and Safety Control for Subtropical Fruit and Vegetable, Ministry of Agriculture and Rural Affairs, Nanning 530001, China)、Gan-Lin Chen(Guangxi Key Laboratory of Quality and Safety Control for Subtropical Fruits, Guangxi Subtropical Crops Research Institute, Nanning 530001, China; Guangxi Subtropical Crops Research Institute, Guangxi Academy of Agricultural Sciences, Nanning 530001, China; Key Laboratory of Quality and Safety Control for Subtropical Fruit and Vegetable, Ministry of Agriculture and Rural Affairs, Nanning 530001, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Songqiong Ma, Shimiao Chen, Lin Ning, et al. Multi-Platform Metabolomic and Sensory Profiling Reveals Cultivar-Dependent Volatile, Taste, and Antioxidant Chemotypes in Guava Leaf Tea. Foods 2026-10-11. DOI: 10.3390/foods15203616. 原著ライセンス:CC BY.