著者の所属・活動拠点の国は、チリです。

掲載誌:International Journal of Molecular Sciences

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

食後の血糖値の動きは、体の代謝の状態を示す手がかりとして重視されるようになっています。とくに過体重や肥満の人では重要な指標とされます。著者らによると、炭水化物の多い食事のあとに血糖値が一時的に上がると、体内で酸化ストレスが高まることがあります。酸化ストレスとは、体を傷つける反応性の高い物質が増えた状態のことです。また、血液中の抗酸化力が下がることもあり、こうしたことが繰り返されると血糖の調節に影響しうると考えられています。

マキベリーはチリ原産の果実で、アントシアニンと呼ばれる色素を多く含みます。アントシアニンはポリフェノールの一種で、マキベリーではデルフィニジンやシアニジンという色素の仲間が中心です。一方で、アントシアニンは加工や温度、酸素などで壊れやすく、苦みや渋みのもとにもなります。こうした成分を保護したり扱いやすくしたりする方法として、マイクロカプセル化が使われることがあります。これは成分を担体と呼ばれる素材で包み込む加工技術で、一般にはマルトデキストリンなどを用いた噴霧乾燥が知られています。ただし著者らは、こうした加工上の利点が、そのまま食べやすさや体への作用の向上につながるとは限らないと指摘しています。

研究チームは、マキベリーを配合したグミを開発しました。このグミについて、成分の特徴、食べやすさ(官能評価)、そして白パンと一緒に食べたときの食後の血糖・ホルモン・抗酸化関連の指標の変化を調べることを目的としました。マイクロカプセル化したマキベリーを使ったグミと、使わなかったグミの比較も行っています。著者らはこの研究を、結果を慎重に解釈すべき探索的な予備研究と位置づけています。

何を調べたか

まず、原料のマキベリー粉末に含まれる色素を分析しました。その結果、アントシアニンに関連する主なピークが5つ検出され、デルフィニジン系とシアニジン系の色素と推定されました。このうちデルフィニジン系が最も大きな割合を占めていました。完成したグミの総ポリフェノール量は、1グラムあたり28.87ミリグラム(ケルセチン換算)と報告されています。1回分として食べたグミ3個には、693ミリグラム(同換算)が含まれていました。

人での試験には、過体重または肥満の成人10人が参加しました。1人の参加者が3つの条件をすべて体験し、条件どうしを比べる方式です。3つの条件は、基準となる白パンだけを食べる対照条件、白パンとカプセル化していないグミを食べる条件、白パンとマイクロカプセル化したグミを食べる条件でした。各回のあいだには1週間の間隔を置きました。

血糖値は、食後120分までの推移を調べました。あわせて、その間の血糖値の推移を時間で積み重ねた総量にあたる曲線下面積(総AUC)を求め、条件どうしで比べています。インスリンと、血糖調節に関わる腸のホルモンであるGLP-1は、食前と食後120分に測りました。抗酸化に関わる指標としては、2種類の抗酸化酵素(SODとカタラーゼ)の活性と、血液の抗酸化力を示すTRAPという測定値を調べました。

主な結果

官能評価では、どちらのグミも全体としてまずまず受け入れられる評価でした。評価項目は、見た目、色、苦み、渋み、甘さ、柔らかさ、なめらかさ、味などです。2つのグミのあいだで統計的な差が見られたのは香りだけで、カプセル化していないグミのほうが高く評価されました。ただし著者らは、差がなかった項目についても、両者が同等であることが示されたわけではないと述べています。

血糖については、マイクロカプセル化グミの条件で、対照条件に比べて一部の時点の血糖値と食後120分までの総AUCが低くなりました。一方、2種類のグミを直接比べると、AUCに統計的な差は確認されませんでした。そのため、この結果はマイクロカプセル化のほうが優れていることを示すものではない、と著者らは述べています。

食後120分の時点では、どちらのグミの条件でもインスリンが対照条件より高い値でした。GLP-1は、マイクロカプセル化グミの条件で対照条件より高い値でした。ただし、食前からの変化量で比べると、GLP-1に条件間の差は確認されませんでした。このため、グミがGLP-1の分泌を促したとはいえないとされています。ホルモンは2時点しか測っていないため、食後の変化の全体像は分からない点にも注意が必要です。

抗酸化指標では、カタラーゼの変化に差は見られませんでした。一方、食前の値を考慮した解析では、カプセル化していないグミの条件で、対照条件と比べてTRAPが高く、SOD活性が低いという違いが報告されました。それでも著者らは、どちらのグミにも抗酸化的な保護作用があることは示されていないとしています。

この研究が示すこと

マキベリーをグミに配合して食べたときの急な食後反応については、これまで知見が限られていました。この研究は、そうしたグミを炭水化物の多い食事と一緒に食べたときに、食後の反応がどう動くかを探った予備的な報告です。食べやすさの面では、どちらのグミも受け入れられる範囲でした。一方、マイクロカプセル化による一貫した利点は確認されませんでした。

著者ら自身も、結果の解釈には大きな制約があると強調しています。参加者が少ないこと、全員が同じ順番で条件を体験したため条件の違いと時期の違いを切り分けられないこと、マキベリーを含まない見た目のそろった偽のグミを比較に使っていないことなどです。そのため、今回観察された血糖や抗酸化指標の違いは、グミの効果だと断定できる結果ではなく、あくまで予備的な反応の傾向として示されたものです。

原著論文の著者・所属:Paula Acevedo-Hernández(Centro Interdisciplinario de Neurociencia de Valparaíso (CINV), Facultad de Ciencias, Universidad de Valparaíso, Valparaíso 2362905, Chile)、Viviana Valero-Jara(PhD Program in Health Sciences and Engineering, Facultad de Medicina, Universidad de Valparaíso, Valparaíso 2362905, Chile)、Carlos Jara-Gutiérrez(Centro Interdisciplinario de Investigación Biomédica e Ingeniería para la Salud-MEDING, Escuela de Kinesiología, Facultad de Medicina, Universidad de Valparaíso, Valparaíso 2362905, Chile)、Claudia Ibacache-Quiroga(Centro de Micro-Bioinnovación, Facultad de Farmacia, Escuela de Nutrición y Dietética, Universidad de Valparaíso, Valparaíso 2361814, Chile)、Gonzalo Jorquera(Instituto de Fisiología, Facultad de Ciencias, Universidad de Valparaíso, Valparaíso 2361814, Chile; Instituto de Nutrición y Tecnología de los Alimentos (INTA), Universidad de Chile, Santiago 7810430, Chile)、Samanta Thomas-Valdés(Centro de Micro-Bioinnovación, Facultad de Farmacia, Escuela de Nutrición y Dietética, Universidad de Valparaíso, Valparaíso 2361814, Chile)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Paula Acevedo-Hernández, Viviana Valero-Jara, Carlos Jara-Gutiérrez, et al. Acute Postprandial Glycemic and Antioxidant Responses to Maqui Berry Gummies in Adults with Overweight/Obesity: A Small Within-Subject Pilot Study. International Journal of Molecular Sciences 2026-10-15. DOI: 10.3390/ijms27209133. 原著ライセンス:CC BY.