著者の所属・活動拠点の国は、トルコです。
掲載誌:Archives animal breeding/Archiv für Tierzucht
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF
研究の目的
アワシ羊は、厳しい環境に強いことから半乾燥地域で広く飼われている品種で、肉と乳の両方に使われる地域の在来品種です。一方、チュクロヴァ肉用羊(CMS)は、肉の生産量と枝肉の特性を高める目的で作出された肉用の系統です。血統はイル・ド・フランス種とランブイエ種がそれぞれ37.5%、アワシ種とサクズ種がそれぞれ12.5%とされています。
論文によると、これら2品種の成長、枝肉の特性、肉の品質や栄養成分を、同じ肥育条件で比べた情報は限られており、特にCMSについてはデータがほとんどありません。そこで著者は、同一の飼料と飼養管理のもとで育てた両品種の子羊を比較しました。品種の違いが育種や食肉生産の方針を考えるうえで実用的な情報になるかを確かめることが目的です。
何を調べたか
研究は亜熱帯性の気候が続く地中海東部で行われました。年齢と体重がそろった雄の子羊を、2頭ずつ同じ大きさの囲いで飼い、両品種に同じ飼料を与えました。飼育期間中は体重の変化と飼料の摂取量を記録し、増えた体重に対してどれだけ飼料を食べたかを示す飼料要求率も求めています。
肥育後には、枝肉(頭、皮、内臓などを取り除いた食肉となる部分)の重さを量り、前肢、首、背、あばら、腹、腰、ももなどの部位に切り分けて、それぞれの重さと割合を調べました。ロース部分の筋肉については、太さと表面の脂肪の厚みを測定しています。肉そのものについては、pH、加熱による重さの減少、色、硬さや弾力などの物理的な性質に加え、たんぱく質や脂肪の量、脂肪酸、ミネラル、アミノ酸の組成を分析しました。
主な結果
成長については、両品種に大きな差はみられませんでした。肥育開始時の体重はアワシが27.91kg、CMSが27.70kg、終了時の体重はそれぞれ51.28kgと49.86kgで、1日あたりの体重の増え方にも統計的な差はありませんでした。1日あたりの飼料摂取量はアワシの方が多かったものの、飼料要求率には品種による差が認められませんでした。
枝肉では品種による違いが目立ちました。枝肉の重さはアワシの方が重く、皮と毛の重さもアワシが上回りました。羊の尾の付け根にたまる脂肪である尾脂はアワシにだけみられ、枝肉重量の14.73%を占めていました。ロース部分の筋肉を覆う脂肪の厚さも、アワシが5.47mm、CMSが3.38mmで、アワシの方が厚いと報告されています。一方、CMSは前肢、左側のあばら、腰、ももの重さとその枝肉中の割合が高い結果でした。たとえば左もも部分が枝肉に占める割合は、アワシの14.62%に対してCMSは18.22%でした。
肉の物理的な性質は全体に似ていました。pH、加熱による減少、明るさや赤みなどの色の指標、生肉の切りにくさ、加熱後の食感の指標には品種による差がなく、生肉の色の鮮やかさを示す値にだけ差がみられました。
肉の成分では、脂肪の量は両品種でほぼ同じでしたが、たんぱく質の割合はCMSが21.01%と、アワシの19.27%より高くなりました。脂肪酸の多くは差がなかった一方で、アラキドン酸はCMSの方が多く、ミネラルではカリウムとマグネシウムがCMSで多い結果でした。アミノ酸は26種類が確認され、大部分は両品種で似ていましたが、グルタミン酸とタウリンはCMSの肉に多く含まれていました。
研究が示すこと
著者は、同じ飼料と管理のもとでは両品種の成長や肉の物理的な品質はおおむね同等であり、品種の違いは主に枝肉の構成と肉の一部の成分に現れたとまとめています。アワシは脂肪の蓄積が多い特徴を示し、CMSは経済的に重要な部位の割合や、たんぱく質などいくつかの成分が高い結果でした。
ただし論文は、使用した動物の数が比較的少ないことや、飼育方法が1通りだけであることを挙げ、結果の一般化には限界があるとしています。各品種の父親となる雄羊の数が少なく、品種の影響と個々の父親による遺伝的な違いを切り分けにくい点も挙げられています。また、飼料摂取量は個体ごとではなく囲いごとに記録されており、食味の評価や分子レベルの分析は行われていません。こうした前提を踏まえると、この研究は、同じ条件で育てても品種によって肉の量の配分や成分に違いが出うることを示した報告といえます。
原著論文の著者・所属:Murat Durmuş(Cukurova University (Adana, Türkiye))
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Murat Durmuş. Growth performance, carcass traits, and meat quality of Awassi and Cukurova Meat Sheep lambs. Archives animal breeding/Archiv für Tierzucht 2026-10-14. DOI: 10.5194/aab-69-569-2026. 原著ライセンス:CC BY.