著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Foods
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
中国では農産物のブランドづくりが、農業の質を高めるための重要な方策として政策的に重視されています。ブランドの付いた農産物は、品質や価値を消費者に伝える「目印」としての役割を持ち、生産側の品質向上と消費側の需要の高まりを結びつける存在と考えられています。
牛肉は、店頭で見ただけでは品質や安全性を確かめにくい食品です。研究チームはこの点に着目し、消費者がブランドをどの程度知っているか(ブランド認知)が、ブランド牛肉を実際に買ったことがあるかどうかとどう関係しているのかを調べました。あわせて、その関係が「買いたい」という気持ち(購買意向)を経由して生じるのか、それとも認知から直接購買へ結びつく部分が大きいのかを検討しています。
どのように調べたか
研究チームは2025年8月から9月にかけて、吉林省の長春、蛟河、白城、延吉の4都市で、大型スーパーや食肉専門店に来ていた牛肉の購入者に声をかけ、質問紙調査を行いました。配布した300票のうち、回答に不備のあるものを除いた273票が分析に使われています。無作為に選んだ標本ではなく、その場で協力を得た人を対象とする方法のため、著者らは結果の一般化には限界があると述べています。
ブランド認知は「ブランド牛肉をどの程度よく知っているか」を1(まったく知らない)から5(とてもよく知っている)の5段階で尋ねて測りました。購買行動は「ブランド牛肉を買ったことがあるか」という「はい/いいえ」の質問です。購買意向は、認証表示を好むかどうかなど4つの質問への回答の平均で表しました。
分析では、価格、品質、味、安全性、包装、栄養価、牛の品種といった商品の特徴をどれだけ重視するかの影響を差し引いたうえで、ブランド認知と購買の関係を統計的に推定しています。さらに、ブランド認知と購買の関係のうち、どれだけの部分が購買意向を経由しているかを複数の手法で分解しました。
主な結果
調査対象者のブランド認知の平均は5段階で2.88で、著者らは中程度の水準だと報告しています。都市部の人は農村部の人より、また既婚の人や家庭で食料品の買い出しを担う人は、そうでない人より認知が高い傾向がみられました。
商品の特徴の重視度を考慮しても、ブランド認知が高い人ほどブランド牛肉を購入した経験がある傾向がはっきりみられました。論文によると、認知の段階が1つ上がるごとに、購入経験がある見込み(オッズ)は約2.9倍になると推定されています。分析方法を変えたり、性別・年齢・所得などの属性を考慮に加えたりしても、この結果は大きく変わりませんでした。
ブランド認知は購買意向の高さとも関連し、購買意向は購買経験とも関連していました。ただし、ブランド認知と購買の関係のうち、購買意向を経由する部分は全体の約11%にとどまり、約89%は意向を経由しない直接的なつながりとして推定されました。著者らはこれを、消費者が「買いたい」という気持ちを改めて形づくるよりも、すでに持っているブランドへの信頼をもとに判断している可能性を示すものと解釈しています。
属性別に分けた分析では、女性、農村部の人、中年層、中所得層で、ブランド認知と購買の結びつきが特に強い傾向がみられました。農村部の人は平均的な認知は低い一方、認知が購買に結びつきやすい可能性があるとされています。ただし、これらのグループには人数が少ないものもあり、著者らはこの結果を探索的なものと位置づけています。
この研究が示すこと
この研究は、品質を店頭で確かめにくい牛肉のような食品では、よく知っているブランドであること自体が品質の目印として働き、購買の判断を簡単にしている可能性を、吉林省の消費者調査から示しました。
一方で著者らは、調査が特定の4都市での便宜的な標本に基づくこと、一時点の調査のため因果関係を強く主張できないこと、購買経験が本人の申告によることなどを限界として挙げています。結果は調査対象者についての傾向として受け止める必要があります。
原著論文の著者・所属:Xing-Long Yang(College of Economics and Management, Jilin Agricultural University, Changchun 130118, China)、Yu-Wen Zhou(College of Economics and Management, Jilin Agricultural University, Changchun 130118, China)、Kui-Xiu Teng(College of Economics and Management, Jilin Agricultural University, Changchun 130118, China)、Yu-Shi Mao(College of Biological and Agricultural Engineering, Jilin University, Changchun 130025, China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Xing-Long Yang, Yu-Wen Zhou, Kui-Xiu Teng, et al. Brand Awareness, Purchase Intention, and Branded Beef Purchasing Behavior: An Empirical Study Based on Jilin Province, China. Foods 2026-10-14. DOI: 10.3390/foods15203645. 原著ライセンス:CC BY.