掲載誌:CyberLeninK (CyberLeninka)

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: DataCite

研究の目的

敗血症は、感染に対する体の反応が暴走し、複数の臓器が傷つく重い病態です。著者らは論文の背景で、敗血症では代謝が大きく乱れてエネルギー消費が急に高まり、筋肉量の減少や細胞内のミトコンドリアの機能低下につながり、短期・長期の経過に影響すると述べています。また、消費カロリーは患者ごとに異なり、同じ患者でも時期によって大きく変わると指摘しています。

一方で、敗血症の患者に経腸栄養(胃や腸へ管などで栄養剤を入れる方法)をどれだけの量から始め、どの程度の速さで増やすべきかは、個々の患者に合わせた形では確立していないとされます。そこで研究チームは、代謝を評価する現代的な方法を使って敗血症患者の栄養療法を合理化し、治療成績を高めることを目的としました。

何を調べたか

対象は、手術後に治療用の栄養剤「Nutriset D」を受けた敗血症の患者11人です。この栄養剤には、多成分からなる「メタバイオティクス複合体」と、多糖類の一種であるβ-グルカンが含まれています。

代謝の評価には専用の診断システムを使いました。中心となるのは間接熱量測定と呼ばれる方法で、呼吸で取り込む酸素と吐き出す二酸化炭素を測り、体が消費しているカロリーを推定します。あわせて、二酸化炭素の排出量と酸素の消費量の比である「呼吸商(RQ)」を求めました。RQは、体が主に糖質・脂質・たんぱく質のどれをエネルギー源として使っているかの目安になります。

このほか、臓器障害の程度を点数化するSOFAスコア、炎症の指標であるプロカルシトニンやC反応性タンパク(CRP)、栄養状態を反映するアルブミンやトランスフェリン、抗体(免疫グロブリン)、腸内の乳酸菌やビフィズス菌などを、入院時から9日目にかけて複数の時点で記録しました。

主な結果

論文によると、観察したすべての時点で、多臓器障害の徴候、炎症、栄養不良、エネルギー必要量、腸内細菌叢の乱れ(ディスバイオシス)の程度が低下し、抗体による免疫(液性免疫)やRQの改善が記録されました。なお、この研究は11人の経過を追ったもので、論文の抜粋からは比較対照群は確認できず、これらの変化がどこまで栄養剤によるものかを切り分けた結果として示されているわけではありません。

指標同士の関係を調べる相関分析では、SOFAスコアとプロカルシトニンの間に強い関連が見られ、1日目の相関係数は0.92と報告されています。プロカルシトニンとCRP、アルブミンとトランスフェリンの間にも関連がありました。さらに治療が進んだ時期には、IgG(抗体の一種)と乳酸菌、IgMとビフィズス菌、アルブミンと乳酸菌、IgAとビフィズス菌の関連も確認されました。これらは指標が連動して動くことを示す関連であり、一方が他方の原因であることを示すものではありません。

研究が示すこと

著者らは結論として、人工呼吸を受けている敗血症患者では、間接熱量測定で消費カロリーとRQを継続的に見ることが妥当だとしています。これらの情報は、栄養剤の中身や量だけでなく、投与する量や速さを患者ごとに合わせるための重要な手がかりになるという考えです。著者らは、計算式によるカロリーの推定は間接熱量測定が使えない場合に限られるとも述べています。

また著者らは、敗血症患者にはメタバイオティクス複合体とβ-グルカンを含む栄養療法の使用が望ましいと結論づけています。患者一人ひとりの代謝を実際に測りながら栄養を調整するという考え方を、少人数の臨床経過とともに示した報告といえます。

原著論文の著者・所属:Гирш Андрей Оттович、Щетина Александр Владимирович、Измайлова Наталья Александровна、Фролов Евгений Александрович、Степанов Сергей Степанович、Клементьев Алексей Владимирович、Черненко Сергей Владимирович、Суздальцев Андрей Муратович

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Гирш Андрей Оттович, Щетина Александр Владимирович, Измайлова Наталья Александровна, et al. ПЕРЕДОВАЯ ДИАГНОСТИКА И ТЕРАПИЯ МЕТАБОЛИЧЕСКОЙ ДИСФУНКЦИИ У БОЛЬНЫХ С СЕПСИСОМ. CyberLeninK (CyberLeninka) 2026-10-24. DOI: 10.24412/1819-1495-2026-2-17-29. 原著ライセンス:CC BY.