著者の所属・活動拠点の国は、インドです。
掲載誌:Food biomacromolecules.
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
ひよこ豆から取り出したでんぷんに超音波を当てると、その性質はどう変わるのでしょうか。研究チームは、超音波処理の時間を10分、20分、30分、40分と変え、でんぷんの物理化学的性質、水や油との関わり方などの機能的性質、粒の構造、熱に対するふるまい、加熱して糊状にしたときの粘り方(レオロジー特性)への影響を調べました。ここでは、論文の抄録に記載された内容をもとに紹介します。
水や油の吸収と、膨らみ方の変化
著者らによると、超音波処理によって、でんぷんが水を吸収する能力(吸水能)と油を吸収する能力(吸油能)は大きく高まりました。最も高い値は40分処理のでんぷんで見られ、吸水能は1グラムあたり2.13グラム、吸油能は1グラムあたり2.19グラムでした。研究チームはこの変化を、キャビテーションによってでんぷんの粒が壊されたためと説明しています。キャビテーションとは、超音波によって液体の中に微小な泡が生じてはじける現象です。
でんぷんを水中で加熱したときにどれだけ膨らむか(膨潤力)も調べられました。処理していない元のでんぷんは、95℃で最も高い膨潤力(1グラムあたり11.54グラム)を示しました。一方、20〜40分処理したでんぷんは85℃までは膨潤力が増えたものの、その後は低下しました。著者らは、これを高い温度で粒の安定性が下がったことを示すものと解釈しています。
また、でんぷんの糊が光を通す度合い(光透過率)は、超音波処理の時間が長くなるほど下がり、保存中にもさらに低下しました。研究チームは、これを分子どうしが再び寄り集まる動きが強まったことの表れとみています。
糊としての性質と、粒の構造
でんぷんを水と加熱して糊にしたときの粘り方の変化(糊化特性)も大きく変わりました。加熱中に最も高くなる粘度(ピーク粘度)は3220 cPから2080 cPへ低下し、加熱を続けたときの粘度の落ち込み(ブレークダウン)や、冷ましたときの粘度の戻り(セットバック)も小さくなりました。著者らは、この結果から糊の安定性が高まり、冷えた糊が硬くなる「老化」が起こりにくくなる傾向が示唆されるとしています。
粒の形や分子の並び方は、電子顕微鏡による観察(SEM)、赤外線による分子構造の分析(FTIR)、X線回折による結晶構造の分析(XRD)で調べられました。その結果、超音波処理によってでんぷんの粒の表面に溝や孔、ひび割れが生じ、分子の近い範囲での並び方の秩序が変化し、結晶部分の割合(相対結晶化度)が下がったことが確認されたと報告されています。ただし、ひよこ豆でんぷんが持つ「C型」と呼ばれる結晶の型そのものは変わりませんでした。
研究から分かること
この研究は、超音波を当てる時間の違いによって、ひよこ豆でんぷんの粒の表面や内部の構造が変わり、それに伴って水や油の吸収、加熱時の膨らみ方、糊の粘り方などの性質が変化することを示しています。結晶の基本的な型は保たれたまま、粒の壊れ方や分子の並び方が変わるという点が、研究チームの報告の中心です。
原著論文の著者・所属:Sakshi Singh(Department of Food Technology Jamia Hamdard Delhi India)、Mehvish Habib(Department of Food Technology Jamia Hamdard Delhi India)、Shumaila Jan(National Institute of Food Technology Entrepreneurship and Management Sonipat India)、Kulsum Jan(Department of Food Technology Jamia Hamdard Delhi India)、Suhaib Hasan(Department of Food Technology Jamia Hamdard Delhi India)、Khalid Bashir(Department of Food Technology Jamia Hamdard Delhi India)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Sakshi Singh, Mehvish Habib, Shumaila Jan, et al. Structural, physicochemical, and techno‐functional properties of ultrasound‐treated chickpea starch. Food biomacromolecules. 2026-10-24. DOI: 10.1002/fob2.70102. 原著ライセンス:CC BY.