日本主導:この研究は、筆頭著者・責任著者、または著者の主要所属が日本の研究機関である研究です。

掲載誌:Agronomy Journal

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

上空から作物を観測するリモートセンシングでは、写真のような平面の画像だけでなく、作物の形を立体的に捉えたデータも得られます。その代表が「点群」です。点群は、物体の表面を無数の点の位置として記録した3次元データで、葉の広がりや株の盛り上がりといった、作物が茂った部分(キャノピー)の構造を細かく表せます。研究チームは、こうした立体情報を使うと、収量の推定精度が上がり、別の畑のデータにもあてはまりやすくなると考えました。

この研究の主な目的は、ドローン(無人航空機)から得た点群をもとに、キャベツの収量を1株ごとに推定し、その精度を評価することです。あわせて、学習に使っていない畑のデータでも推定が通用するかどうか、いわゆる汎化能力も調べました。

何を比べたのか

研究チームが用いたのは「マルチビュー畳み込みニューラルネットワーク」という手法です。畳み込みニューラルネットワークは画像の特徴を読み取るのが得意な機械学習の仕組みで、マルチビュー型では、立体データを複数の方向から見た画像に変換し、それらをまとめて読み取ります。

著者らは4種類のモデルを作りました。2つはマルチビュー型で、株を斜めから見た8方向の画像を使うものと、それに真上から見た画像を加えたものです。残る2つは比較用の基準モデルで、一つは「オルソモザイク」(多数の空撮写真をつなぎ合わせて真上から見た地図状の画像)から切り出した1枚の画像を使う畳み込みニューラルネットワーク、もう一つは画像の画素の情報をもとにした単純な線形モデルです。

評価には、学習や調整に使ったのと同じ畑のデータに加え、それとは別の独立した2つの畑のデータを用いました。

主な結果

予測値と実際の値がどれだけ一致しているかは、「リンの一致相関係数」という指標で評価されました。値が1に近いほど、予測と実測がよく一致していることを示します。学習に使ったのと同じ畑のデータでは、2つのマルチビュー型モデルはそれぞれ0.74±0.013と0.73±0.017を示し、1枚の画像を使うモデルを上回ったと報告されています。

学習に使っていない別の畑では、同じ畑のデータを無作為に分けて評価した場合に比べて予測の誤差が大きくなりました。それでもマルチビュー型モデルは基準モデルより良い成績を示し、著者らは、学習時とは異なる条件でも比較的安定して推定できることを示すものだとしています。

さらに研究チームは、モデルが画像のどこに注目して判断したかを色分けして示す「Grad-CAM」という手法で分析しました。その結果、マルチビュー型モデルは、1枚の画像を使うモデルとは異なる領域に注目していることがうかがえたと報告しています。

研究が示すこと

この研究は、ドローンで得た立体データを複数の方向から見た画像として扱うことで、キャベツ1株ごとの収量推定の精度が上がり、別の畑にも通用しやすくなる可能性を示しました。著者らは、こうした手法が収量推定にとどまらず、精密農業におけるストレスの検出や生育の把握といった、より幅広い用途を支えうると述べています。

原著論文の著者・所属:Yui Yokoyama(Department of Agroecology Faculty of Technical Sciences Aarhus University Slagelse Denmark; The United Graduate School of Agriculture and Science Gifu University Gifu City Japan)、René Gislum(Department of Agroecology Faculty of Technical Sciences Aarhus University Slagelse Denmark)、Tsutomu Matsui(Faculty of Applied Biological Sciences Gifu University Gifu City Japan)、Takashi S. T. Tanaka(Department of Agroecology Faculty of Technical Sciences Aarhus University Slagelse Denmark; Tokyo University of Agriculture and Technology Fuchu City Japan)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yui Yokoyama, René Gislum, Tsutomu Matsui, et al. Cabbage yield estimation with multi‐view convolutional neural networks from UAV‐derived point clouds. Agronomy Journal 2026-10-24. DOI: 10.1002/agj2.70598. 原著ライセンス:CC BY.