この研究は、南アフリカ、オーストラリアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Applied Food Research
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
食品の加工では、収穫や調理の過程で使われずに残る部分が多く出ます。カボチャの花もその一つで、食材として利用されないまま副産物となることがあります。この研究は、そうしたカボチャの花の副産物を、乳酸発酵によって食品素材として活かせないかを調べたものです。
乳酸発酵とは、乳酸菌のはたらきで食材を変化させる加工法です。著者らは、植物由来の副産物に乳酸発酵を行うと栄養面・機能面の質が高まると述べており、本研究ではその効果をカボチャの花で確かめることを目的としています。
何を調べたか
研究チームは、Lactiplantibacillus plantarum L75 という乳酸菌を用いて、カボチャ属3種の花を発酵させました。対象となったのは、ニホンカボチャ(Cucurbita moschata、略称CMS)、セイヨウカボチャ(C. maxima、CMX)、ペポカボチャ(C. pepo、CPP)の3種です。
花をピューレ状にして24時間・48時間・72時間の発酵を行い、それをフリーズドライ(凍結乾燥)の粉末にしました。そのうえで、栄養成分、体内に取り込まれやすい形で取り出せるミネラルの量、植物由来の化学成分(ファイトケミカル)、抗酸化のはたらきなどを測定しています。あわせて、あらかじめ狙いを定めずに成分全体の変化を広く調べる「ノンターゲット・メタボロミクス」という手法も用いられました。
主な報告結果
論文によると、発酵中の菌は良好に増えており、24時間の時点でおよそ9 log CFU/mLの生菌数が保たれていました。また、タンニン、フィチン酸、シュウ酸といった「抗栄養素」が有意に減少したと報告されています。抗栄養素とは、栄養素の吸収を妨げるはたらきを持つ成分のことです。
同時に、取り出せる鉄とカルシウムの割合が増加しました。24時間発酵のセイヨウカボチャ(CMXL7524)では取り出せる鉄が乾燥重量100 gあたり57.86 mg、24時間発酵のペポカボチャ(CPPL7524)では取り出せるカルシウムが同2.00 mgと報告されています。
CPPL7524ではさらに、アミノ酸のリシン(1.33 mg/100 g DW)、フェニルアラニン(2.48 mg/100 g DW)、アスパラギン酸(2.96 mg/100 g DW)の濃度が高まり、色素成分であるルテイン(37.41 mg/100 g DW)、シス型β-カロテン(15.52 mg/100 g DW)、トランス型β-カロテン(53.98 mg/100 g DW)、ビオラキサンチン(10.51 mg/100 g DW)も増加していました。抗酸化のはたらきについては、CPPL7524とCMSL7524でFRAP(鉄還元による抗酸化力の指標)とABTSラジカル消去活性が上昇し、有意な改善がみられたとされています。
成分全体を広く調べたメタボロミクスでは、発酵への反応が種によって異なることが示されました。変化が最も大きかったのはCPPL7524で28種類の成分が増加、次にCMXL7524で16種類の成分に変動、CMSL7524で13種類の成分が増加しています。代謝の経路を整理するKEGG解析では、C. maximaとC. moschataでフラボノイド(植物色素の一群)に関わる代謝の広い組み換えが示され、一方でC. pepoは栄養面・機能面の改善が最も大きかったと報告されています。
この研究が示すこと
著者らは、同じ乳酸菌で発酵させても、素材となるカボチャの種類によって結果が変わることを示しました。抗栄養素が減り、取り出せるミネラルや色素成分が増えた一方で、その変化の大きさや方向は3種で一様ではありませんでした。
論文はこの結果から、カボチャの花の副産物を機能性食品素材として活かすうえで、どの素材を選ぶかが重要であると結論づけています。使われずに残る部分の活用を考えるとき、加工の方法だけでなく素材の選択そのものが結果を左右するという指摘です。
著者:Mogwale Janet Ramputla(Phytochemical Food Network Research Group. Department of Crop Sciences. Tshwane University of Technology. Pretoria West 0001. South Africa)、Nobahle Pretty Cele(Phytochemical Food Network Research Group. Department of Crop Sciences. Tshwane University of Technology. Pretoria West 0001. South Africa)、Dharini Sivakumar(Centre of Nutrition and Food Science Queensland Alliance for Agriculture and Food Innovation. The University of Queensland. Australia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Mogwale Janet Ramputla, Nobahle Pretty Cele, Dharini Sivakumar. Valorisation of Cucurbita flower by-products through Lactiplantibacillus plantarum L75 fermentation: effects on nutrient composition, extractable minerals, and phytochemical profiles. Applied Food Research 2026-09-01. DOI: 10.1016/j.afres.2026.102631. 原著ライセンス:CC BY.