クッキーやビスケットは手軽なおやつですが、栄養面では改善の余地があるとされることも少なくありません。一方で、砂糖の原料となるビート(テンサイ)を搾った後に残る「ビートパルプ」や、ゴマ油を搾油する際に取り除かれる「ゴマの種皮」は、食品加工の過程で生じる副産物であり、そのまま廃棄されることも多い素材です。今回紹介する研究は、こうした農産加工の副産物をビスケットの原料として活用できないかを調べたものです。
研究チームは、ビートパルプ粉末(SBPP)とゴマ種皮粉末(SSHP)を使い、小麦粉(72%抽出粉)の一部をこれらの粉末に置き換えたビスケットを作りました。置き換える割合は2.5〜7.5%の範囲で複数段階に設定され、単独での添加や組み合わせでの添加を含む10種類の配合と、何も置き換えない対照サンプルが用意されました。そのうえで、物理化学的な性質、抗酸化性、貯蔵中の安定性、そして食べたときの官能評価(味や食感など)が比較されました。
研究でわかったこと
まず原料そのものの成分分析では、ビートパルプ粉末は食物繊維と炭水化物を多く含む一方、ゴマ種皮粉末はたんぱく質、脂質、カルシウム、鉄を多く含むことが示されました。また両素材とも、ポリフェノールやフラボノイドといった成分を一定量含んでおり、これが抗酸化活性に寄与していると報告されています。
ビスケットの物理的な特徴については、ビートパルプ粉末を加えると食物繊維含量の高さを反映して、生地の広がりやすさ(スプレッド比)や直径が小さくなり、逆に厚みと硬さが増す傾向が見られました。対照的に、ゴマ種皮粉末を加えると、その脂質成分の影響でビスケットは広がりやすくなり、硬さは低下しました。色についても違いがあり、ビートパルプ粉末を加えたビスケットは色が濃く明度が下がる一方、ゴマ種皮粉末を加えたビスケットは明るく見た目が良い状態が保たれたとされています。
貯蔵中の変化を追跡したところ、ビートパルプ粉末やゴマ種皮粉末を加えたビスケットは、対照サンプルに比べて過酸化物価や酸価が低く抑えられており、酸化に対する安定性が向上した可能性が示唆されています。さらに官能評価では、置き換える割合が2.5〜5%程度のときに、味・食感・見た目・総合的な好ましさの評価が最も高くなったと報告されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、ビートパルプ粉末とゴマ種皮粉末という2種類の農産加工副産物を、特定の配合や条件のもとでビスケットに応用した一つの実験結果です。置き換える割合によって食感や見た目、風味への影響が変わることが示された一方で、どの程度の量までなら製品として受け入れられるかは、素材の種類や添加量によって異なる点に留意が必要です。健康への効果を直接示したものではなく、あくまで食品としての物理的・化学的特性や官能評価、貯蔵安定性を評価した研究である点にも注意してください。
まとめ
今回紹介した研究では、通常は副産物として扱われがちなビートパルプとゴマ種皮の粉末を、適切な割合でビスケットに配合することで、風味や食感を大きく損なうことなく、栄養成分や抗酸化性、貯蔵中の酸化安定性を高められる可能性が示されました。食品廃棄物の有効活用という観点からも、こうした副産物を活かした食品開発は今後注目される分野の一つと言えそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:農産加工副産物を利用したビスケットの技術的・栄養的特性の向上(食品乳製品科学誌・2026年07月)