著者の所属・活動拠点の国は、セルビアです。

掲載誌:Metabolites

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

捨てられがちな部分の価値を、根拠の強さとともに見直す

カボチャは生のまま食べられるほか、ピューレ、ジュース、スープ、菓子の材料、スナック、種子油などに加工されています。加工の過程では、皮、種子、種皮、果汁やピューレを搾った後の繊維質の残りかす(搾りかす)、油を搾った後の種子のかす(プレスケーキ)が大量に出ます。これらは価値の低い残さとして扱われがちですが、たんぱく質、不飽和脂肪酸を含む脂質、カロテノイド(黄色や橙色の色素)、トコフェロール(ビタミンEの仲間)、植物ステロール、フェノール化合物、食物繊維などを含んでいます。

著者らによると、国連食糧農業機関(FAO)の統計で「カボチャ・スクワッシュ・ヒョウタン類」に分類される作物の2024年の世界生産量は、約3460万トンでした。この分類はカボチャだけを指すものではありませんが、作物群としての規模の大きさを示しています。資源を捨てずに使い続ける循環型の考え方が広がり、副産物をより価値の高い食品素材などに変える試みへの関心が高まっています。

一方で、研究の数は急速に増えているものの、結果を比べたり統合したりするのは簡単ではありません。成分は種や品種、果実のどの部位か、熟度、栽培環境、保存、分析方法によって変わります。結果が生の重さ当たりで示される場合と乾燥重量当たりで示される場合が混在しています。生物学的な研究でも、食品そのもの、種子油、粗い抽出物、精製した成分、複数の素材を混ぜた製品が、同じものであるかのように論じられることがあります。この総説で著者らは、部位ごとの成分と分析の仕方、抽出技術、加工による変化、生物学的な根拠の強さ、実用化への準備状況を一つの流れとして結びつけ、研究結果をどこまで比較し応用できるかを批判的に整理しています。

どのように文献を整理したか

この論文は、決められた手順で網羅的に文献を集める系統的レビューやメタ解析ではなく、著者らが論点を絞って評価を加える「批判的ナラティブレビュー」です。2026年7月20日までに公開された文献を中心に、医学文献データベースなどを繰り返し検索し、FAOの統計や欧州の規制関連文書でも内容を確認しました。

著者らは、扱ったカボチャの種や部位、加工・処理の方法、測定した結果が特定できる研究を残しました。証拠は部位ごとに整理し、さらに研究の段階ごとに分類しています。段階は、試験管内の化学的試験、培養細胞の実験、動物実験、対照群のない人での研究、対照群を置いた臨床試験の順です。食品そのもの、油、抽出物、精製した成分、混合製品は、別々の「摂取するもの」として扱われました。

著者らは、よく混同される三つの概念も区別しています。「抽出されやすさ」は、決まった手順で取り出せた成分の割合です。「試験管内での消化による放出(模擬的なバイオアクセシビリティ)」は、消化を再現した実験で食品から溶け出し、吸収されうる状態になった割合です。「バイオアベイラビリティ」は、実際に体内で吸収され、利用される割合を指します。また、加工で水分が抜けて成分の濃度が見かけ上高くなることと、成分が実際にどれだけ残ったか(真の残存率)も分けて考えるべきだとしています。真の残存率は、加工前後の成分濃度と製品全体の重さの両方から求めます。

部位によって異なる成分と、加工・抽出の評価

著者らは、カボチャの各部位が互いに補い合う成分構成を持つことを示しています。果肉は主にカロテノイドと多糖類(食物繊維などのもとになる糖の鎖)の供給源です。種子は、報告によっておよそ14〜38%のたんぱく質と22〜55%の脂質を含みます。種子油では、リノール酸やオレイン酸などの不飽和脂肪酸が一般に70%を超えます。皮にはカロテノイド、フェノール化合物、セルロースやペクチンなどの構造多糖類が含まれます。いくつかの研究では、皮のβ-カロテンや総カロテノイドの濃度が果肉より高く、最大でおよそ10倍の差が報告されています。ただし皮は果実全体に占める重さが小さいため、1グラム当たりの濃さと、果実全体での量への寄与は分けて考える必要があると著者らは指摘しています。花や葉、発芽中の種子にも特有の成分やたんぱく質がありますが、これらは十分に調べられていません。

安全面では、ククルビタシンという強い苦味を持つ成分が取り上げられています。野生種には多く含まれることがありますが、現在の栽培品種は一般に、食べる部分の含有量が少なくなるよう選抜されてきました。それでも、栽培品種の果実が異常に苦い場合は、急性の胃腸症状を起こすおそれがあるため食べるべきではない、と著者らは述べています。

分析手法の例として、代謝物を網羅的に測る方法の研究が紹介されています。品種の違いに関わる目印となる成分の候補を探す研究や、保存中の成分変化を追う研究がありました。カボチャ種子油への他の油の混入を見分ける研究では、試験条件のもとで3%(重量比)という低い混入まで検出できたと報告されています。

抽出技術については、従来の溶媒抽出や圧搾に加え、超臨界二酸化炭素、深共晶溶媒と呼ばれる新しいタイプの溶媒、酵素を使う抽出、超音波、マイクロ波、パルス電場、高圧均質化などを比較しています。著者らによれば、これらは取り出せる成分の選び分け方、回収量、規模を大きくしたときの扱いやすさがそれぞれ異なり、どれか一つが常に優れているわけではありません。いわゆる「環境に優しい抽出法」についても、工程全体での溶媒回収、エネルギーや水の使用、廃棄物、経済性、製品のライフサイクル全体の評価がなければ、環境面で優れているとはいえないとしています。

加工については、加熱や組織の破砕によって成分が取り出しやすくなったり、試験管内での放出が増えたりする場合があります。一方で、熱や酸素、光に長くさらされると、成分の分解や損失も起こりえます。測定されるカロテノイドの量が増えても、もともと含まれていた総量が増えたわけではない点に、著者らは注意を促しています。

期待される働きと、まだ確かめられていないこと

実験研究では、カボチャ由来の成分や調製品について、抗酸化、抗炎症、血糖に関わる作用、抗菌、細胞の増殖を抑える作用などの可能性が示されています。しかし著者らによれば、その大部分は化学的試験、細胞、動物での結果です。人での証拠は調製品ごとに限られており、最も研究が進んでいるのは、前立腺肥大に伴う排尿の悩み(下部尿路症状)に対する一部のカボチャ種子製品です。血糖などの全身的な健康指標については、対照を置いた人での証拠は限られているか、結果が一致していません。

著者らは、カボチャの組織や抽出物を、多くの病気を予防・治療する確立した手段ではなく、機能性食品素材や標準化された健康食品素材の有望な候補と位置づけています。近い将来に見込まれる用途としては、食品素材、油、たんぱく質の画分、色素の利用、一部の包装材料を挙げています。

この総説が伝えているのは、カボチャの捨てられがちな部分が多様な成分の供給源になりうる一方で、その価値を確かなものにするには前提となる手順が欠かせない、ということです。具体的には、原料が何であるかの確認、検証された分析、調製品の標準化、安全性と安定性の試験、そして健康に関する主張を裏づける十分な規模の人での試験です。

著者:Bela Kolarš(Department of General Medicine and Geriatrics, Faculty of Medicine, University of Novi Sad, 21000 Novi Sad, Serbia)、Ivana Minaković(Department of General Medicine and Geriatrics, Faculty of Medicine, University of Novi Sad, 21000 Novi Sad, Serbia)、Milana Bosanac(Department of Histology and Embryology, Faculty of Medicine, University of Novi Sad, 21000 Novi Sad, Serbia)、Nemanja Gvozdenovi(Clinic for Orthopedic Surgery and Traumatology, University Clinical Center of Vojvodina, 21000 Novi Sad, Serbia)、Jovanka Milak(Clinic of Nephrology and Clinical Immunology, University Clinical Center of Vojvodina, 21000 Novi Sad, Serbia)、Nemanja Petrović(Clinic of Cardiovascular Surgery, Institute for Cardiovascular Diseases of Vojvodina, 21208 Sremska Kamenica, Serbia)、Vesna Mijatović(Department of Pharmacology, Toxicology and Clinical Pharmacology, Faculty of Medicine, University of Novi Sad, 21000 Novi Sad, Serbia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Bela Kolarš, Ivana Minaković, Milana Bosanac, et al. Bioactive Compounds from Cucurbita spp. and Their Processing By-Products: A Critical Review. Metabolites 2026-10-08. DOI: 10.3390/metabo16100754. 原著ライセンス:CC BY.