この研究は、カザフスタン、ウクライナの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Eastern-European Journal of Enterprise Technologies

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

チーズなどの製造過程で大量に生じるホエー(乳清)は、かつては廃棄物として扱われてきましたが、乳たんぱく質や乳糖、ビタミン、ミネラルを含む有用な原料です。研究チームは、このホエーを副産物として有効活用しながら、植物由来の材料だけで安定した食感をつくる乳デザートの開発が十分に進んでいない点を課題として取り上げました。

そこで本研究は、ホエーを主原料とし、カボチャ(バターナッツスクワッシュ)の粉末を加えた機能性乳デザートの特性を明らかにすることを目的としています。具体的には、デザートに適した植物素材を選ぶこと、酸度が構造の形成に与える影響を調べること、そして完成したデザートの官能的・理化学的な品質を確かめることが目標として掲げられました。

何をどのように調べたか

著者らはまず、カボチャ、ズッキーニ、パティソン(円盤形のカボチャの一種)といった複数の野菜を10%加えたデザートを試作し、味・香り・色・食感・外観を5点法で評価して比較しました。

次に、赤外分光法(物質に赤外線を当て、吸収のされ方から含まれる成分の種類を推定する手法)でカボチャ粉末やデザートの成分的な特徴を調べ、走査型電子顕微鏡で内部の微細構造を観察しました。さらに、回転粘度計を使って「極限せん断応力」(固体状の構造が崩れて流動し始める境目の強さ)を測定し、カボチャの配合量を10〜50%の範囲で変えながら、活性酸度(pH)と滴定酸度が構造の強さにどう関わるかを調べています。すべての実験は3回繰り返し、平均値と標準偏差で結果をまとめています。

報告された主な結果

官能評価では、カボチャを加えた試料が味と色の面で最も良い影響を示し、ホエーだけのデザートに見られた色の淡さや味の弱さが改善されたと報告されています。赤外分光の結果からは、カボチャ粉末が多糖類や糖を多く含み、水酸基(-OH)を持つ成分が豊富であることが示され、これが高い保水性や安定化作用と結びついていると著者らは説明しています。

構造面では、pH 5.10〜5.19の範囲で極限せん断応力が高くなり、pH 5.12 ± 0.01のときに最も強い構造が得られたと報告されました。カボチャの配合割合が増えるほど滴定酸度とせん断応力はともに上昇し、ホエーのみの対照と比べて構造強度は15〜25%高まり、離水(シネレシス、ゲルから水が分離する現象)が減って保水性が向上したとされています。電子顕微鏡による観察でも、大きな空隙や相分離のない均質なたんぱく質-多糖マトリックスが形成されていることが確認されました。

また、砂糖(スクロース)の代わりに甘味料のステビオシドを用いたところ、望ましい風味を保ったままエネルギー値が40.4%低下したと報告されています。試作したデザートは均一な濃いオレンジ色とつややかでなめらかな質感を示し、ステビオシドの草のような風味はカボチャの味と香りによって和らげられたとされています。

この研究が示すこと

この研究は、これまで利用が進みにくかったホエーを主原料に据えつつ、カボチャ粉末という身近な植物素材を構造づくりの役割に用いることで、安定した食感をもつ低エネルギーの乳デザートが成り立つことを、酸度・流動特性・微細構造の各面から示したものです。著者らは、この結果が乳業の副産物をより効率的に活用する技術的な土台になると位置づけています。

著者:Sholpan Baizhanova(M. Auezov South Kazakhstan University)、Z. K. Konarbayeva(M. Auezov South Kazakhstan University)、Zhanat B. Kaldybekova(M. Auezov South Kazakhstan University)、Viktoriia Yevlash(State Biotechnological University; Dmytro Motornyi Tavria State Agrotechnological University)、Anastasiia Demydova(Dmytro Motornyi Tavria State Agrotechnological University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Sholpan Baizhanova, Z. K. Konarbayeva, Zhanat B. Kaldybekova, et al. Determination of the characteristics of a functional dessert based on whey and plant ingredients. Eastern-European Journal of Enterprise Technologies 2026-08-28. DOI: 10.15587/1729-4061.2026.368907. 原著ライセンス:CC BY.