著者の所属・活動拠点の国は、ヨルダン、マレーシアです。

掲載誌:Veterinary World

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の背景と目的

世界で生産される食料のおよそ3分の1は、供給の過程で失われたり捨てられたりしているとされます。研究チームの拠点であるヨルダンでも、食品廃棄は年間1人あたり93kg、総量で100万トンを超えると推計されています。一方、ヨルダンのような乾燥・半乾燥地域では牧草が限られ、飼料の価格も高いことが、羊やヤギなど小型反すう家畜の生産を難しくしています。中東では大麦が主な飼料穀物として多く使われており、それに代わる身近な飼料が求められています。

そこで著者らが注目したのが、パンやクッキー、菓子類などの売れ残りや規格外品からなる「ベーカリー廃棄物」です。でんぷんなど繊維以外の炭水化物や脂肪を多く含み、エネルギー源として穀物の一部を置き換えられる可能性があります。ヤギの子では少量の配合で効果が報告されていましたが、中東で主流の羊の品種であるアワシ種の子羊に、より多く配合した場合の知見は限られていました。この研究は、ベーカリー廃棄物が育成中のアワシ種子羊にとって実用的で持続可能な代替飼料になるかを確かめることを目的としています。

どのように調べたか

研究チームは、雄のアワシ種子羊を3つの飼料グループに分け、73日間飼育しました。通常の飼料を与える対照グループと、大麦をはじめとする従来の濃厚飼料原料の一部をベーカリー廃棄物で置き換え、飼料の乾物(水分を除いた重さ)1kgあたり100gまたは200gを配合したグループです。子羊は個別に飼われ、飼料と水を自由に摂取できるようにしました。

調べた項目は多岐にわたります。飼料の摂取量や体重の増え方、飼料コスト、栄養素の消化率、体内に取り込まれた窒素の量(たんぱく質の利用度の目安)、と体(食肉に加工される枝肉)の重さや脂肪の付き方、肉のpHや保水性、硬さ、色、肉の脂肪酸組成、さらに血液の生化学的な指標です。著者らは、これらを同じ管理された飼育試験の中でまとめて評価した点を研究の強みとしています。

主な結果

実験期間中、病気になったり死んだりした子羊はいませんでした。飼料コストはベーカリー廃棄物の配合量が多いほど下がり、対照の飼料に比べて100g配合で約7.1%、200g配合で約14.9%安くなったと報告されています。

ベーカリー廃棄物を与えた2つのグループは、対照グループより飼料を多く食べ、たんぱく質やエネルギーの摂取量も多くなりました。特に200g配合のグループでは、最終体重、増体量、1日あたりの増体量がほかの2グループより大きく、飼料効率も向上し、体重1kgを増やすためのコストも下がりました。乾物とたんぱく質の消化率も、200g配合のグループで対照より高くなりました。体内に保持された窒素の量と割合は、2つの配合グループの両方で対照より多くなっています。

と体の重さも200g配合のグループで大きくなりましたが、枝肉の歩留まりや赤身・骨・脂肪の総量などの多くの項目には差がありませんでした。肉のpH、加熱による重量の減り方、保水性、硬さ、色、そして脂肪酸組成にも、グループ間で有意な差は見られませんでした。

血液検査では、尿素窒素、血糖、コレステロール、中性脂肪など多くの指標が変わりませんでした。肝臓に関連する酵素であるALTは配合グループで低くなりましたが、著者らは、この値だけで肝臓の健康が改善したとはいえず、慎重に解釈すべきだとしています。

研究が示すこと

著者らは、育成中のアワシ種子羊の飼料にベーカリー廃棄物を乾物1kgあたり100gまたは200g配合しても、健康状態や肉の品質、脂肪酸組成に悪影響は見られず、試した中では200gの配合が最も良い結果だったと結論づけています。飼料が高価または不足しがちな地域で、飼料費を抑えながら食品廃棄物を有効に使う方法になりうるというのが著者らの見方です。

ただし、試験は比較的少数の雄の子羊を対象に、2つの配合量、73日間という条件で行われ、ベーカリー廃棄物も1回分の同じロットだけを使っています。ベーカリー廃棄物は原料や時期によって成分が大きく変わりうるため、著者らは、使う前に成分を確認し、脂肪、塩分、カビ毒の混入などに注意する品質管理が欠かせないと指摘しています。捨てられる食品を家畜の飼料として生かす道を、具体的なデータで示した研究といえます。

原著論文の著者・所属:Belal S. Obeidat(Jordan University of Science and Technology)、Hadil S. Subih(Jordan University of Science and Technology)、Linda Alyahya(Universiti Sains Malaysia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Belal S. Obeidat, Hadil S. Subih, Linda Alyahya. Bakery waste as a sustainable feed resource for growing Awassi lambs: Effects on growth performance, nutrient utilization, carcass traits, meat quality, and health indicators. Veterinary World 2026-09-24. DOI: 10.14202/vetworld.2026.4230-4243. 原著ライセンス:CC BY.