著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Animals

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の目的

飼料需要の増加と持続可能な畜産への関心から、農業や食品加工で出る副産物を飼料に活用する取り組みが進んでいます。研究チームが注目したのは、エノキタケを栽培した後に残る培地(廃培地)です。この廃培地は主にトウモロコシの芯、大豆の皮、もみ殻でできています。

今回の研究で使った廃培地を含む混合原料からは、カビが作る毒素(カビ毒)のゼアラレノン(ZEN)とデオキシニバレノール(DON)が検出されていました。著者らによると、こうした副産物について、二つのカビ毒を同時に減らすことを目標に発酵条件を最適化し、栄養面の評価からブロイラーへの給与試験までを一貫して調べた研究はまだ限られていました。そこで研究チームは、複数の微生物を組み合わせる固体発酵(水分の少ない固形の材料のまま微生物を増やす発酵)の仕組みを作りました。そのうえで、発酵が混合原料のカビ毒濃度や栄養価に与える影響と、肉用鶏の一種である黄羽ブロイラーに与えたときの効果を調べました。

発酵条件の検討と給与試験の方法

発酵に使った原料は、エノキタケ廃培地80%に糖蜜7%、大豆かす6%、小麦ふすま6%、魚粉1%を混ぜたものです。微生物には、酵母の一種であるサッカロミセス・セレビシエ、バチルス・コアグランス、酪酸菌の一種であるクロストリジウム・ブチリカム、枯草菌の4種類を用いました。

発酵条件は、ZENとDONの減少率を一つの指標にまとめた「重み付けスコア」が高くなるように調整しました。発酵前の原料ではZENの濃度がDONより高かったため、ZENの減少率に0.6、DONの減少率に0.4の重みを掛けています。研究チームはまず4種類の菌の配合比を絞り込み、続いて菌の添加量、発酵時間、水分量の組み合わせを検討しました。

給与試験では、基本飼料だけの対照群に加え、発酵させた混合原料または発酵させていない混合原料を飼料の3%、5%、7%配合した6群を設け、合わせて7群で42日間飼育しました。成長、血液中の抗酸化に関わる指標、腸(空腸)の組織の形、胸肉の肉質、盲腸の細菌の構成などを比較しています。

主な結果

4種類の菌の配合比は、セレビシエ、コアグランス、ブチリカム、枯草菌の順に2対1対2対3のときに重み付けスコアが最も高くなりました。同じ条件で改めて確かめた実験でも、スコアは58.93と近い値でした。単一の条件を変える実験では、菌の添加量7%、発酵時間5日、水分量45%付近で比較的高いスコアが得られています。論文は、発酵によって混合原料から検出されるZENとDONの濃度が下がり、栄養面の品質と試験管内での消化性(消化を模した実験で測った消化されやすさ)が改善したと報告しています。

著者らは測定した濃度と配合率から、混合原料が飼料に持ち込むカビ毒の量も見積もりました。配合率3〜7%の場合、発酵させた原料ではZENが飼料1kgあたり40.49〜94.49マイクログラムでした。発酵させていない原料では258.67〜603.57マイクログラムです。発酵させていない原料を7%配合した場合の603.57マイクログラムは、中国の飼料基準が他の配合飼料に定めるZENの上限500マイクログラムを上回っており、著者らは注意が必要だとしています。

給与試験では、発酵させた原料を3%または5%配合した群で、同じ配合率の未発酵群と比べて成長が促され、飼料の利用効率が改善しました。血液の抗酸化状態と空腸の組織の形もより良好でした。同じ配合率どうしで比べると、未発酵群は脂質の酸化の目印となる物質(MDA)の濃度が高く、抗酸化酵素の働きは低くなっていました。また、3%と5%の発酵群では、加熱したときに肉から失われる水分の割合(加熱損失)や全体的な食感に悪い影響は見られませんでした。盲腸の細菌の構成は、対照群に比較的近い状態でした。一方、配合率を7%に上げてもそれ以上の利点はなく、いくつかの測定項目では好ましくない変化が伴いました。

この研究が示すこと

この研究は、エノキタケ廃培地を含む原料を複数の微生物で発酵させると、検出されるカビ毒の濃度を下げられることを示しました。あわせて、3〜5%程度の配合であれば黄羽ブロイラーの飼料原料として良好な結果が得られたと報告しています。ただし、著者ら自身がいくつかの点を注意事項として挙げています。カビ毒の測定は簡易な抗体検査法(ELISA)だけで行っており、毒素が分解されたのか、材料に吸着しただけなのかは区別できていません。発酵前後で材料の重さがどう変わったかも測っていないため、濃度が下がったことを毒素の総量が減ったことと同じとはみなせません。さらに、鶏の体の指標に表れた違いを、カビ毒を摂る量が減ったことだけで説明することはできず、発酵による栄養面の変化なども関わっている可能性があるとしています。

原著論文の著者・所属:Jiaru Pei(College of Biological Engineering, Henan University of Technology, Zhengzhou 450001, China)、Haorui Zhou(College of Biological Engineering, Henan University of Technology, Zhengzhou 450001, China)、Xuelei Zhang(College of Biological Engineering, Henan University of Technology, Zhengzhou 450001, China)、Xiaoxiao Liang(College of Biological Engineering, Henan University of Technology, Zhengzhou 450001, China)、Yong Zhang(College of Biological Engineering, Henan University of Technology, Zhengzhou 450001, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Jiaru Pei, Haorui Zhou, Xuelei Zhang, et al. Effects of Mixed-Strain Solid-State Fermentation on Mycotoxin Levels and Feeding Value of a Mixture Containing Spent Flammulina velutipes Substrate for Yellow-Feathered Broilers. Animals 2026-10-25. DOI: 10.3390/ani16213363. 原著ライセンス:CC BY.