著者の所属・活動拠点の国は、ドイツです。

掲載誌:Biological Trace Element Research

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ホウ素は食事から取り込まれる微量元素の一つです。過去30年ほどの研究で、人の体に作用し有益である可能性が指摘されてきました。一方で、人に必要な量はまだ確定していません。そのため、推奨量や目安量も定められていません。ホウ素は野菜、果物、ナッツ、種実類などの植物性食品に多く、コーヒーやワイン、乳製品も主な供給源とされています。

著者らによれば、こうした食品を多くとる食事でのホウ素の摂取と排泄は、これまでほとんど調べられていません。特に、ドイツで長期間ヴィーガン(動物性食品を一切とらない完全菜食)を続けている人を対象にした研究は見当たらなかったといいます。そこで研究チームは、長期の雑食者、ラクト・オボ・ベジタリアン(肉や魚は食べず、卵や乳製品はとる菜食)、ヴィーガンの3グループを比べました。ヴィーガンは他の2グループよりホウ素の摂取量がずっと多く、尿への排泄量にもそれが表れるという仮説を立てて検証しています。

何を調べたか

この研究は、ドイツ・フライブルクで行われた別の研究(LAKE研究)のデータと尿検体を使った二次解析です。LAKE研究の参加者は、18〜60歳の健康な人で、少なくとも12か月間同じ食事スタイルを続けていました。最終的に解析対象となったのは89人です。参加者の多くは学生で、年齢の中央値は23歳でした。

参加者は連続した2日間、食べたり飲んだりしたものをすべてはかりで量って記録しました。研究チームは、この記録と食品ごとのホウ素含有量をまとめたデータをもとに、1日あたりのホウ素摂取量を推定しました。含有量データは212品目分で、主に米国のデータを用い、大豆や海藻など菜食で多く食べられる食品のデータで補っています。また2日目には24時間分の尿をすべて集め、尿中のホウ素量を測定しました。カリウム、リン、カルシウムといった他の元素の尿中排泄との関係も、探索的に調べています。

主な結果

1日あたりのホウ素摂取量の中央値は、ヴィーガンが最も高く、次いでラクト・オボ・ベジタリアン、雑食者の順でした。ただし、個人差が大きく、摂取量は1日約0.66mgから約5.8mgまで幅がありました。グループ間の差は統計的に有意ではありませんでした。欧州食品安全機関(EFSA)が定める許容上限量(1日10mg)を超えた人はいませんでした。

尿中へのホウ素排泄も、ヴィーガンが最も多く、雑食者が最も少ない結果でした。尿の濃さの違いをならすため、筋肉由来の物質であるクレアチニンあたりで補正した値も調べています。補正しない値でも補正した値でも、グループ間の差は統計的に有意でした。補正後の中央値は、雑食者で約919、ラクト・オボ・ベジタリアンで約1235、ヴィーガンで約1559(いずれもクレアチニン1gあたりのマイクログラム)でした。

ホウ素の摂取量と尿中排泄量の間には、3グループすべてで正の相関がみられました。摂取が多い人ほど尿中の排泄も多い傾向です。相関係数は雑食者で0.74、ラクト・オボ・ベジタリアンで0.45、ヴィーガンで0.79でした。またホウ素の排泄は、どのグループでもカリウムの排泄と正の相関を示しました。リンの排泄との関連はヴィーガンでのみみられ、カルシウムの排泄とは有意な関連がありませんでした。

動物実験から外挿して、有益な作用を得るには1日1mg以上の摂取が必要とする見方があります。今回の参加者でこの量に達していたのは、全体で82%でした。グループ別では、雑食者71%、ラクト・オボ・ベジタリアン78%、ヴィーガン97%でした。

研究から分かること

著者らは、ヴィーガンの食事は、以前から目安として提案されている1日1mgのホウ素摂取を満たすのに適していたとまとめています。ただし、この研究はある一時点の状態をみた横断研究で、因果関係は判断できません。参加者は若く教育水準の高い人に偏っており、人数も多くありません。食事の記録は2日分だけで、ホウ素の含有量にもドイツの食品データが使えなかったことなど、著者ら自身が限界を挙げています。それでも、食事スタイルによってホウ素のとり方や体からの出方に違いがありうることを、摂取と尿の両面から具体的な数値で示した研究といえます。

原著論文の著者・所属:Frieda Stübing(Department of Internal Medicine II, Centre for Complementary Medicine, Medical Center - University of Freiburg, Faculty of Medicine, University of Freiburg, Freiburg, Germany)、Stefanie Kowarschik(Department of Internal Medicine II, Centre for Complementary Medicine, Medical Center - University of Freiburg, Faculty of Medicine, University of Freiburg, Freiburg, Germany)、Christian Koeder(Independent researcher, Ellwangen, 73479, Germany)、Johanna Dürrschnabel(Department of Internal Medicine II, Centre for Complementary Medicine, Medical Center - University of Freiburg, Faculty of Medicine, University of Freiburg, Freiburg, Germany)、Roman Huber(Department of Internal Medicine II, Centre for Complementary Medicine, Medical Center - University of Freiburg, Faculty of Medicine, University of Freiburg, Freiburg, Germany)、Maximilian Andreas Storz(Department of Internal Medicine II, Centre for Complementary Medicine, Medical Center - University of Freiburg, Faculty of Medicine, University of Freiburg, Freiburg, Germany. [email protected])

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Frieda Stübing, Stefanie Kowarschik, Christian Koeder, et al. Boron Intake and 24-hour Urinary Excretion in Long-term Omnivores, Vegetarians and Vegans: a Cross-sectional Study. Biological Trace Element Research 2026-08-12. DOI: 10.1007/s12011-026-05297-x. 原著ライセンス:CC BY.