この研究は、カナダの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Environmental Research Food Systems
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
何を目的とした研究か
この論文は、カナダで国内生産・国内消費されているすべての動物性食品(肉・乳製品・卵など)と魚を、国内産の高タンパク質な植物性食品に置き換えた場合、農業に使われる土地面積がどれだけ節約できるかを見積もったものです。あくまで「もし全国民がそうした食事に移行したら」という仮想の想定にもとづく試算であり、実際の食生活の変化を観察したものではありません。
置き換えにあたっては、国内産の果物・野菜の消費を増やす一方、植物油と甘味料の消費を減らし、タンパク質の摂取量は同じに保ちながら、代謝可能エネルギー(体が利用できる熱量)の摂取はわずかに減る、という条件を置いています。
どのように見積もったか
著者らは、動物性食品と植物性食品のそれぞれについて、生産から消費に至る流通の各段階で生じる損失を計算に組み込んでいます。また、家畜の飼料として供給される作物やサイレージ(発酵させた飼料)と、動物性食品を置き換える食用作物とでは、1ヘクタールあたり何キログラムのタンパク質が得られるか(平均タンパク質収量)が異なる点も考慮しています。
検討された食事シナリオは、動物性食品をすべて廃止し、国内産の果物・野菜の一人あたり平均消費量を3倍にし、植物油の消費を20%、甘味料の消費を50%減らすというものです。さらに、穀物と豆類の推奨消費比率である2対1を実現するため、国内産穀物の消費を83%増、豆類の消費を6倍に増やすと想定しています。
報告された主な結果
このシナリオのもとでは、脂質の摂取量は45%減り、食物繊維の摂取量は少なくとも2倍になる一方、タンパク質とエネルギーの摂取量はほぼ変わらないと報告されています。
土地の面積については、カナダで食用作物に使われる土地が26%減少し、作物用地と放牧地を合わせた土地需要の総量は約80%減少するという結果が示されました。さらに、この食事の転換に加えて、小売段階と消費者段階の食品廃棄が(食品の種類に応じて)2分の1から3分の2減った場合には、節約幅はそれぞれ37%と84%に拡大すると報告されています。
この試算が示すこと
この研究が示しているのは、食事の内容が土地利用の規模と強く結びついているということです。とりわけ、作物用地だけを見た場合の減少幅(26%)と、放牧地を含めた総量の減少幅(約80%)の差は、動物性食品の生産にどれだけ広い土地が使われているかを浮き彫りにしています。また、食品廃棄の削減を組み合わせた場合の数字は、食べ方そのものと食べ物を捨てない工夫とが、土地の節約という点で重なり合う効果を持ちうることを示唆しています。
著者:L. D. Danny Harvey(University of Toronto)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):L. D. Danny Harvey. Reduction in land area devoted to agriculture from a hypothetical universal vegan diet in Canada. Environmental Research Food Systems 2026-09-18. DOI: 10.1088/2976-601x/aea22b. 原著ライセンス:CC BY.