著者の所属・活動拠点の国は、ブラジルです。

掲載誌:Journal of Food Nutrition and Diet Science

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

果物加工の副産物を食パンに生かせるか

レッドモンビン(学名Spondias purpurea)はアメリカ大陸原産の熱帯果樹で、ブラジル北東部の乾燥地帯カーティンガに広く分布しています。小さな丸い実は甘酸っぱい風味と香りをもち、近年は冷凍果肉の産業が広がっています。一方、果肉を取ったあとには皮や種が大量に残り、その多くは十分に活用されていません。

研究チームは、冷凍果肉の工場から出る副産物を粉に加工し、その成分や性質を調べました。そのうえで、この粉が食パンの栄養、官能、カロリー、機能の面での品質を高める材料になるかを検討しました。著者らによれば、これまでの研究はレッドモンビンの果肉や果皮抽出物の成分、乾燥方法、あるいは果物副産物の食品への応用一般が中心でした。レッドモンビンの加工残渣を主食的な食品に直接加え、栄養、技術的性質、微生物、味や食感への影響を同時に評価した研究は少なかったといいます。

皮から作った粉とパンの試作

研究チームはブラジル・レシフェの冷凍果肉工場から皮と種を入手しました。種を手作業で取り除いた皮を50℃前後で乾燥させてから粉砕し、「レッドモンビン残渣粉」を作りました。この粉について、成分、水分活性(食品中で微生物などが利用できる水の度合いを示す指標)、微生物の数、水や油を抱え込む力、水を吸って膨らむ力を測定しました。

続いて、食パンの小麦粉の5%、10%、15%をこの粉に置き換えた3種類のパンを焼きました。訓練を受けていない一般の参加者72人に、見た目、色、香り、味、食感の好ましさ、順位づけによる好み、購入意向をたずねました。最も評価の良かった配合については、小麦粉だけで作ったパンと比べ、成分、カロリー、色、体積、硬さなどを調べました。小麦粉にこの粉を混ぜたときの生地のこね上がりや伸びやすさも、専用の装置で測定しています。

食物繊維の多い粉と、受け入れられやすい配合

論文によると、残渣粉は100gあたり炭水化物を約53.4g、食物繊維を27.5g、灰分(ミネラル分の目安)を約3.07g含み、脂質は約1.98gと少ない結果でした。水分活性は0.29と低く、著者らはこれを微生物が増えにくい状態を示すものとしています。微生物の数も少なく、粉作りの衛生状態が保たれていたと報告されています。

官能評価では、5%と10%の配合のパンがすべての項目で9段階評価の平均7点以上(「とても好き」に相当)を得ました。また、多くの項目で15%より有意に高く評価されました。15%では色が濃くなり、見た目や食感の評価が下がりました。香りだけは配合間で差がありませんでした。購入意向も5%と10%が15%を上回りました。5%と10%の間に有意な差はなかったため、研究チームは食物繊維の多い10%配合を選んで詳しく分析しました。

10%配合のパンは、小麦粉だけのパンに比べて食物繊維が約5倍(100gあたり0.88gから4.75g)に増えました。論文では、「食物繊維源」と表示できる100gあたり3gを超える水準に達したと報告されています。炭水化物と灰分は増え、脂質は減りましたが、水分やたんぱく質、カロリーには有意な差はありませんでした。

一方で、10%配合のパンは体積が小さく、硬さが増し、外皮の色はより暗くなりました。10%配合の粉で作る生地では吸水量が増え、生地の安定性や伸びやすさは低下しました。著者らは、食物繊維が小麦のたんぱく質による網目構造(グルテン)の形成を妨げることが関係していると考察しています。それでも生地はパン作りに適した強さを保ち、官能評価での受け入れられやすさも損なわれなかったと報告しています。

研究から見えること

この研究は、果物の加工で活用されにくい皮を乾燥・粉砕するという比較的簡単な方法で、食パンの食物繊維を増やせる可能性を示しました。著者らは、試した配合のなかでは10%の置き換えが、食物繊維の強化、パン作りへの適性、消費者の受け入れやすさのバランスが最も良かったとまとめています。

ただし、生地の性質の測定は小麦粉だけのものと10%配合の2種類に限られていました。そのため、ほかの配合に結果をそのまま当てはめるには注意が必要だと著者ら自身が述べています。

原著論文の著者・所属:Helen Maria Lima da Silva(Postgraduate Program in Food Science and Technology, Federal Rural University of Pernambuco (UFRPE), Rua Dom Manoel de Medeiros, s/n, Recife, Pernambuco, 52171-900, Brazil)、Marcony Edson da Silva Júnior(Postgraduate Program in Food Science and Technology, Federal Rural University of Pernambuco (UFRPE), Rua Dom Manoel de Medeiros, s/n, Recife, Pernambuco, 52171-900, Brazil)、Michelle Maria Barreto de Souza(Postgraduate Program in Food Science and Technology, Federal Rural University of Pernambuco (UFRPE), Rua Dom Manoel de Medeiros, s/n, Recife, Pernambuco, 52171-900, Brazil)、Daniele Silva Ribeiro(Department of Food Engineering, Federal University of Agreste of Pernambuco (UFAPE), Av. Bom Pastor, s/n, Boa Vista, Garanhuns, Pernambuco, 55292-270, Brazil)、Maria Beatriz de Abreu Gloria(Postgraduate Program in Food Science and Technology, Federal Rural University of Pernambuco (UFRPE), Rua Dom Manoel de Medeiros, s/n, Recife, Pernambuco, 52171-900, Brazil)、Maria Inês Sucupira Maciel(Postgraduate Program in Food Science and Technology, Federal Rural University of Pernambuco (UFRPE), Rua Dom Manoel de Medeiros, s/n, Recife, Pernambuco, 52171-900, Brazil)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Helen Maria Lima da Silva, Marcony Edson da Silva Júnior, Michelle Maria Barreto de Souza, et al. Red mombin by-product as a functional ingredient for improving the quality of sliced bread. Journal of Food Nutrition and Diet Science 2026-08-11. DOI: 10.55976/fnds.42026161076-87. 原著ライセンス:CC BY.