この研究は、インドの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Nutrients

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

インドでは2型糖尿病を抱える人が多く、食生活や食品をとりまく環境も変化を続けています。インドの食事では、米や小麦などの穀類に由来する炭水化物(糖質)が今もエネルギーの大きな供給源です。ただし、炭水化物が体に与える影響は量だけでなく、どの食品から摂るか、食物繊維をどれだけ含むか、どの程度精製・加工されているかによっても変わると考えられています。

研究チームは、こうした背景から、2型糖尿病のある成人とない成人を対象に、現在の食事で炭水化物・たんぱく質・脂質がそれぞれ総エネルギーのどれだけを占めるか、食物繊維をどれだけ摂っているかを明らかにすることを主な目的としました。あわせて、炭水化物のうち単純な糖類と、でんぷんなどの複合的な炭水化物の割合も調べています。

どのように調べたか

調査は2025年に、インド14州にある糖尿病診療を中心とする29の医療施設で行われました。分析対象は成人1104人で、そのうち690人が2型糖尿病、414人が糖尿病のない人です。参加者は施設を受診した人から集められており、著者らは、この集団はインドの一般住民を代表するものではなく、医療機関を利用している人の集団として解釈すべきだと述べています。また、糖尿病の人を意図的に多く集めているため、その割合は有病率を示すものではありません。

食事内容は、訓練を受けた調査員が対面で聞き取る「3日分の食事思い出し法」で記録しました。これは、食べた料理や飲み物とその量を、計量カップやスプーンなどの家庭用の目安を使って思い出してもらう方法です。記録した食品はインドの食品成分データベースと照らし合わせ、栄養素量を計算しました。照合は文字列の類似度で候補を並べる専用ツールで補助したうえで、最終的な判断は調査担当者や栄養士が確認しています。

糖尿病の有無による比較では、年齢と性別の違いや、施設ごとの傾向の違いを考慮する統計手法を用いました。ここでいう「単純な炭水化物」は、食品成分データ上の単糖類・二糖類を指し、果物や牛乳に含まれる糖も含みます。そのため、著者らは、これを加工食品などに加えられた砂糖の摂取量と同じものとして読まないよう注意を促しています。

主な結果

参加者全体の1日の平均エネルギー摂取量は約1779キロカロリーでした。総エネルギーに占める割合は、炭水化物が62.1%で最も大きく、脂質が25.1%、たんぱく質が12.8%でした。食物繊維の摂取量は1日平均15.4グラムで、論文はこれを少ない水準と表現しています。炭水化物のうち約5分の1(20.1%)は単糖類・二糖類で、残りの約8割は複合的な炭水化物でした。

糖尿病のある人とない人を比べると、年齢・性別と施設ごとの傾向を考慮したうえで、糖尿病のある人は炭水化物からのエネルギーの割合が3.23ポイント低く、炭水化物に占める単糖類・二糖類の割合も4.15ポイント低い結果でした。一方、たんぱく質の割合は0.82ポイント、脂質の割合は2.38ポイント高くなっていました。食物繊維の摂取量には、はっきりした差はみられませんでした。

これらの違いについて、著者らは、糖尿病と診断された後に指導を受けて食事を見直した可能性や、食事の推奨内容をよく知っている人ほど申告内容が影響を受ける可能性を挙げています。そのうえで、この調査は一時点の比較であるため、糖尿病が食事を変えたといった因果関係は示せず、あくまで調査した集団の違いを表すものだとしています。

今回の三大栄養素の割合は、インド全国を対象とした別の大規模調査の値(炭水化物62.3%、脂質25.2%、たんぱく質12.0%)とよく似ていました。ただし著者らは、この一致によって今回の集団が全国を代表すると言えるわけではないと注意しています。また、2014年に発表された先行調査と比べると、今回は炭水化物の割合が低く脂質の割合が高い数値でしたが、両調査は対象の選び方や調査方法が異なるため、時間とともに変化した証拠とは見なせないとしています。

この研究が伝えること

この研究は、インドの医療機関を受診する成人の食事で、炭水化物が依然としてエネルギーの中心であること、炭水化物のうち約5分の1が単糖類・二糖類であること、そして食物繊維の摂取が少ないことを示しました。著者らは、炭水化物の量だけでなく、その中身と食物繊維にも目を向けることの大切さを支持する結果だとしています。

また、たんぱく質の平均摂取割合は12.8%で、インドの2型糖尿病向けの指針が示す15〜20%を下回っていました。ただし著者らは、個人ごとのたんぱく質の過不足はこの割合だけでは判断できないとし、今回の結果は全粒穀物や豆類、野菜、果物を含むバランスのとれた食事を勧める既存の指針を記述的に裏づけるものであり、食事の助言は一人ひとりに合わせるべきだと述べています。

著者:Nitin Kapoor(Christian Medical College, Vellore)、Sanjay Kalra(Bharti Hospital)、Neeta Deshpande、Sheryl S. Salis、Smriti Gadia(USV (India))、Thamburaj Anthuvan(USV (India), Manipal Academy of Higher Education, Dubai)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Nitin Kapoor, Sanjay Kalra, Neeta Deshpande, et al. Macronutrient Intake and Carbohydrate Quality in Indian Adults With and Without Type 2 Diabetes: The Multicentre I-STARCH-1 Cross-Sectional Study. Nutrients 2026-09-13. DOI: 10.3390/nu18182993. 原著ライセンス:CC BY.