著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:JURNAL KREATIVITAS PENGABDIAN KEPADA MASYARAKAT (PKM)
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
なぜ大学生を伝え手に育てるのか
2型糖尿病は、食生活の変化や運動不足を背景に、若い世代でも増えている病気です。論文によると、インドネシアの成人における年齢調整後の有病率は11.3%で、世界でも上位に位置しています。若いうちに身についた食習慣は大人になっても続きやすいため、早い段階からの予防教育が重要だと著者らは述べています。
インドネシアには、テンペ、オンチョム(赤と黒の2種類)、タウチョ(大豆の発酵調味料)といった大豆発酵食品があります。研究チームによると、発酵によって生まれる生理活性ペプチドやフェノール化合物には、抗糖尿病作用などに関わるものがあると報告されています。ただし、若者がこうした地元の食品を糖尿病予防と結びつけて認識しているかを調べた研究は、まだ限られているとしています。
そこでジャカルタ国立大学の研究チームは、生化学や食品化学を学んだ化学専攻の学生に注目しました。学生たちが科学的な根拠をもとに同世代の若者へ予防情報を伝える「ピア教育(同じ立場の仲間どうしで学び合う教育)」の担い手になれるよう、能力を高めることを目的とした社会貢献プログラムを実施しました。
成分分析から講義、ポスター制作まで
研究チームはまず、2026年3〜5月に大学の研究室で大豆発酵食品の「一般成分分析」を行いました。一般成分分析とは、炭水化物、たんぱく質、脂質、水分、灰分(燃やした後に残る、主にミネラル分)などの基本的な栄養成分の量を測る方法です。オンチョムとタウチョは実際に測定し、テンペについては既存の文献の値を比較用に用いています。
続く2026年6月には、参加を希望した化学専攻の学生65人を対象にプログラムを行いました。最初に理解度を確かめる事前テストを実施し、90分の講義を2回行いました。講義では、2型糖尿病の基礎知識、危険因子と予防策、大豆発酵食品の栄養と生理活性成分、血糖値の調節との関わりなどを扱いました。その後、研究成果をもとにした科学ポスターの作り方を学ぶ研修と質疑応答を行い、最後に事後テストを実施しました。
効果は三つの方法で評価されました。一つ目は20問の知識テストで、事前と事後の成績から「正規化ゲイン」を算出しました。正規化ゲインとは、伸びる余地のうち実際にどれだけ伸びたかを示す指標で、0.7以上を「高い」と判定します。二つ目は、学生グループが作ったポスターを科学的内容、メッセージの明確さ、分かりやすさ、デザインなど6つの観点から4段階で採点する評価です。三つ目は参加者へのアンケートです。
報告された主な結果
成分分析では、黒オンチョムがたんぱく質(100gあたり18.77g)と脂質(同16.02g)の含有量で、比較した食品の中で最も高い値を示しました。たんぱく質は文献値のテンペをわずかに上回っています。炭水化物はどの食品も100gあたり1.85〜5.48gと低く、最も低かったのは黒オンチョムでした。一方、タウチョは灰分が100gあたり17.99gと際立って高い値でした。著者らはこれを塩分(塩化ナトリウム)の蓄積によるものと考え、高血圧の観点から摂取量に注意が必要だと述べています。
知識テストでは、20問すべてで正答率が事前より事後に上がるか、満点を維持しました。そのうち18問で正規化ゲインが「高い」水準(0.7以上)に達しています。残る2問は事前テストの時点ですでに全員が正解していたため、ゲインは計算されていません。また、食品づくりを予防活動に選ぶ戦略的理由を問う1問は「中程度」の伸びにとどまりました。
16グループが作成したポスターは、すべて4段階評価で3〜4点、つまり「良い」から「非常に良い」の評価を受けました。アンケートでは、96.92%の参加者が、プログラムによって知識が深まったこと、全体として満足していること、他の学生にも勧めたいことについて「強くそう思う」と回答しました。
この取り組みが示すこと
著者らは、このプログラムによって学生の2型糖尿病と大豆発酵食品の成分に関する理解が、低〜中程度から高い水準へ高まったと結論づけています。あわせて、ポスターという形で若者に予防を伝える科学コミュニケーションの力も身についたとしています。
また著者らは、食品ごとに栄養の特徴が異なるため、すべての大豆発酵食品に同じ効果があると一般化せず、根拠に基づいて具体的に伝えることが大切だと指摘しています。テンペの値は文献からの引用であり、今回の分析にはイソフラボンや、灰分と分けたナトリウム量は含まれていません。そのため、抗糖尿病作用の仕組みについてはさらなる確認が必要だとしています。
この研究は、食品を食べることによる健康効果を確かめたものではありません。地域になじみのある食品の科学的データを教材にして、大学生を同世代への健康情報の伝え手として育てる試みの成果を報告したものです。
原著論文の著者・所属:Irma Ratna Kartika(Prodi Magister Pendidikan Kimia - UNJ)、Muktiningsih Nurjayadi(Prodi Magister Pendidikan Kimia , Fakultas Matematika dan Ilmu Pengetahuan Alam , Universitas Negeri Jakarta)、Irwanto Irwanto、Lauzer Zeral(Fakultas Matematika dan Ilmu Pengetahuan Alam , Universitas Negeri Jakarta)、Ridha Zulfatun Nafisah(Prodi Magister Pendidikan Kimia , Fakultas Matematika dan Ilmu Pengetahuan Alam , Universitas Negeri Jakarta)、Fera Kurniadewi(-10 Prodi Kimia ,)、Windi Astuti(Prodi Magister Pendidikan Kimia , Fakultas Matematika dan Ilmu Pengetahuan Alam , Universitas Negeri Jakarta)、Bayu Rizki Setiawan(Fakultas Matematika dan Ilmu Pengetahuan Alam , Universitas Negeri Jakarta)、Azka Adskiya Wahyudi(Prodi Magister Pendidikan Kimia , Fakultas Matematika dan Ilmu Pengetahuan Alam , Universitas Negeri Jakarta)、Sabilla Adhisti Maharani(Prodi Magister Pendidikan Kimia , Fakultas Matematika dan Ilmu Pengetahuan Alam , Universitas Negeri Jakarta)、Enny Nugraheni Sulistyorini(Prodi Pendidikan Profesi Dokter , Fakultas Kedokteran dan Ilmu Kesehatan , Universitas Bengkulu)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Irma Ratna Kartika, Muktiningsih Nurjayadi, Irwanto Irwanto, Lauzer Zeral, Ridha Zulfatun Nafisah, Fera Kurniadewi, Windi Astuti, Bayu Rizki Setiawan, Azka Adskiya Wahyudi, Sabilla Adhisti Maharani, Enny Nugraheni Sulistyorini Pemberdayaan Mahasiswa Kimia UNJ sebagai Agen Edukasi Sebaya Pencegahan Diabetes Melitus Tipe 2 Berbasis Uji Proksimat Pangan Fermentasi Kedelai. JURNAL KREATIVITAS PENGABDIAN KEPADA MASYARAKAT (PKM) 2026-08-14. DOI: 10.33024/jkpm.v9i9.27349. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。