ヨーグルトに含まれる乳酸菌が体によいというイメージは広く知られていますが、そこに「バナナの粉末」を加えるとどうなるのでしょうか。今回紹介するのは、インドネシアで行われた、2型糖尿病の外来患者を対象にした臨床試験の研究です。研究の舞台になったのは、ピサンバトゥ(Musa balbisiana)と呼ばれるバナナの一種の粉末を使った「シンバイオティックヨーグルト」。少し聞き慣れない言葉ですが、これは乳酸菌などの生きた微生物(プロバイオティクス)と、その微生物のエサになる食物繊維成分(プレバイオティクス)を組み合わせた食品を指す用語です。この研究では、ヨーグルト発酵に使われるLactobacillus bulgaricusとStreptococcus thermophilusという乳酸菌に加え、ピサンバトゥ粉末に含まれるフラクトオリゴ糖(FOS)がプレバイオティクスの役割を果たすとされています。研究チームは、こうしたシンバイオティックヨーグルトが、乳酸菌の発酵によって生じる短鎖脂肪酸を通じてコレステロール値に、またFOSに由来するプロピオン酸を通じてインスリン抵抗性に、それぞれ影響しうるのではないかという考えのもとで、実際に糖尿病患者に摂取してもらう試験を行いました。
この研究は、インドネシアのKMRT Wongsonegoro地域病院に通院する2型糖尿病患者47名を対象に行われた、ランダム化比較試験(RCT)です。参加者は無作為に2つのグループに分けられ、24名は「治療群」として1日300mlのシンバイオティックヨーグルトを4週間毎日摂取し、残る23名は「対照群」としてヨーグルトを摂取しない状態で経過を追いました。介入の前後で血糖値とコレステロール値を測定し、統計的な比較(対応のあるt検定など)が行われています。
結果として、ヨーグルトを摂取した治療群では、血糖値が平均8.72±23.51 mg/dL有意に低下したと報告されています(p=0.000)。一方、対照群ではむしろ血糖値がわずかに上昇する傾向が見られ(-3.35±17.20 mg/dLの変化、p=0.005)、両群の血糖値変化の差も統計的に有意であったとされています(11.07±7.08 mg/dLの差、p=0.000)。つまりこの研究の範囲では、シンバイオティックヨーグルトを摂取したグループの方が、摂取しなかったグループに比べて血糖値の改善がみられたということです。一方で、コレステロール値については、治療群と対照群のあいだに統計的に有意な差は認められなかった(p=0.224)とされており、血糖値ほどはっきりした効果は示唆されていません。
この研究をどう読むか
この研究は、あくまで47名という限られた人数を対象に、4週間という一定期間だけ行われた一つの臨床試験です。血糖値の低下について統計的に有意な差が報告されている一方、コレステロール値については明確な差は見られなかったとされており、この食品がすべての面で効果を持つと結論づけられるものではありません。今回の要旨には、対象者の詳しい背景(年齢や重症度、服薬状況など)や長期的な影響についての情報は含まれておらず、これらの点については触れられていません。特定の食品が糖尿病の治療や予防の手段になると断定するものではなく、あくまで一つの研究結果として捉える必要があります。
今回紹介した研究では、ピサンバトゥ粉末を使ったシンバイオティックヨーグルトを4週間毎日300ml摂取することで、2型糖尿病患者の血糖値の低下につながったと報告されました。一方でコレステロール値への効果は認められなかったとされています。乳酸菌やプレバイオティクスを組み合わせた発酵食品が代謝にどう関わるのかを考えるうえで、興味深い一例といえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:ピサンバトゥ(Musa balbisiana)粉末を用いたシンバイオティックヨーグルトの2型糖尿病患者における血糖値およびコレステロール値への効果(インドネシア栄養学雑誌(ジュルナル・ギジ・インドネシア)・2026年06月)