著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

緑茶と砂糖代替甘味料を組み合わせたクッキーを設計する

クッキーは世界中で広く食べられている焼き菓子ですが、一般に砂糖や脂質が多く、エネルギーも高めです。そのため、砂糖を減らしつつ、植物由来の成分を加えて付加価値を高めたクッキーの開発が進められています。研究チームは、砂糖の代わりに甘味料のエリスリトールを使い、緑茶を細かく粉砕した緑茶パウダーを加えたクッキーを開発しました。エリスリトールは糖アルコールと呼ばれる甘味料の一種で、著者らは、甘みがすっきりしていてエネルギーにほとんど寄与しないと説明しています。

著者らによると、緑茶パウダーを加えたクッキーと、エリスリトールを使った焼き菓子はそれぞれ別々に研究されてきたものの、両方を一つのクッキーで組み合わせた例は少ないといいます。また、従来の配合検討では成分値などの物理化学的な指標が重視されがちで、食べたときのおいしさを最優先の目標とする例は多くありませんでした。そこで本研究では、官能評価の点数、つまり人が実際に見て食べて評価した点数を最大にすることを目標に配合を決め、そのうえで完成したクッキーを成分、色、食感、抗酸化性、内部構造の面から詳しく調べました。

官能評価の点数を目標に配合を絞り込む

クッキーの基本配合では、緑茶パウダーは薄力粉の一部と同じ重さで置き換えて加えられました。研究チームはまず、緑茶パウダー、エリスリトール、バターの量と焼成条件を一つずつ変える実験を行い、それぞれ評価が最も高くなる範囲を探りました。評価は茶学を専攻する訓練を受けた12人のパネリストが担当し、形と外観、色、香り、味、食感の5項目に重みをつけて100点満点で採点しました。

一つずつの検討では、緑茶パウダー、エリスリトール、バターのいずれも、量を増やすと評価がいったん上がり、多すぎると下がる傾向が見られました。著者らは、緑茶パウダーが多すぎると苦みや渋みが強まる可能性、エリスリトールが少ないと緑茶の苦みが目立ち多いと甘すぎて茶の香りを覆う可能性などを考察しています。焼成条件の影響は比較的小さかったため、その後の検討は3つの材料の量に絞られました。

次に、複数の要因を同時に変えて最適な組み合わせを統計的に推定する「応答曲面法」と呼ばれる手法で、3つの材料の量を最適化しました。検討した範囲では、評価への影響はバターの量が最も大きく、次いで緑茶パウダー、エリスリトールの順でした。得られた最適配合は緑茶パウダー7.88グラム、エリスリトール39.63グラム、バター72.13グラムで、モデルが予測した点数は80.35点でした。この配合で別々に3回作って評価したところ、実際の点数は81.07点となり、予測とよく一致したと報告されています。

緑茶パウダーなしのクッキーとの比較

研究チームは、最適配合の緑茶クッキーを、同じ作り方で緑茶パウダーの代わりに同量の薄力粉を使った対照のバタークッキーと比較しました。最も大きな違いが見られたのは抗酸化性に関する指標です。植物に含まれるポリフェノールなどの量を示す総フェノール含量は、緑茶クッキーで対照の約4.5倍でした。鉄イオンを還元する力で抗酸化性をはかる試験では、緑茶クッキーの値が乾燥重量1グラムあたり96.06ミリグラム(アスコルビン酸換算)で、対照の7.71ミリグラムを大きく上回りました。試験管内でフリーラジカルと呼ばれる不安定な分子を消去する能力も、緑茶クッキーでは試料の濃度に応じて高まった一方、対照ではほとんど変化しませんでした。なお、これらはいずれも試験管内での測定結果です。

見た目と食感も変わりました。緑茶クッキーは対照より暗く、緑みと黄みが強い色合いになりました。食感の測定では、緑茶クッキーのほうが硬く、割れるまでのたわみや割るのに必要な仕事量も大きく、著者らはこれを、粘りや丈夫さが増してサクサク感が減ったことを示すと解釈しています。成分面では、緑茶クッキーは水分と灰分(ミネラル分の目安)が多く、炭水化物がやや少なくなりましたが、脂質と計算上のエネルギーには目立った差がありませんでした。

内部構造については、電子顕微鏡で断面を観察したところ、緑茶クッキーは対照より密で均一な構造を示し、画像に占める空隙の面積割合は17.8%から8.0%に減っていました。さらに、赤外線の吸収を調べる分析では、クッキー中のたんぱく質の立体構造を構成する要素の割合に変化が見られ、著者らは構造の再編成が起きた可能性を示唆しています。

研究が示すこと

この研究は、エリスリトールを甘味料とするクッキーに緑茶パウダーを加えることで、試験管内で測定した抗酸化性が高まり、同時に色や食感、内部構造も変化することを報告しています。おいしさの評価を最優先にして配合を決めたうえで、成分から微細な構造までを一貫して調べた点が特徴であり、著者らは、エリスリトールを使った機能性食品を開発する一つの手がかりになるとまとめています。

原著論文の著者・所属:Luna Zhu(College of Horticulture, Northwest A&F University, Taicheng Road, Xianyang 712100, China)、Jiale Huo(College of Horticulture, Northwest A&F University, Taicheng Road, Xianyang 712100, China)、Feng Hu(College of Horticulture, Northwest A&F University, Taicheng Road, Xianyang 712100, China)、Fuqiang Qi(College of Horticulture, Northwest A&F University, Taicheng Road, Xianyang 712100, China)、Yao Xiao(Shaanxi Horticultural Technology Station, Xi’an 710018, China)、Manzhao Yan(Xixiang County Tea Industry Development Center, Hanzhong 723500, China)、Qingshan Xu(College of Horticulture, Northwest A&F University, Taicheng Road, Xianyang 712100, China)、Youben Yu(College of Horticulture, Northwest A&F University, Taicheng Road, Xianyang 712100, China)、Jie Zhou(College of Horticulture, Northwest A&F University, Taicheng Road, Xianyang 712100, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Luna Zhu, Jiale Huo, Feng Hu, et al. Sensory-Driven Formulation Optimization, Physicochemical Properties, Antioxidant Activity, and Structural Characterization of Erythritol-Based Green Tea Cookies. Foods 2026-10-22. DOI: 10.3390/foods15213776. 原著ライセンス:CC BY.