著者の所属・活動拠点の国は、インドです。

掲載誌:European Journal of Nutrition & Food Safety

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

食べ物が手に入るだけでは、家庭の食事が栄養的に整うとは限りません。手に入る食材をどう選び、どう調理し、どう組み合わせるかを知っていることが、実際の食生活につながります。研究チームは、この橋渡しをする「栄養知識」に注目しました。

農村の女性は、農作物の生産に関わるだけでなく、食材の選択や調理、家庭の食料の管理も担うことが多く、この過程で特に重要な役割を持ちます。著者らは、実践的な栄養知識が不足していると、地域で手に入る栄養豊富な食材が十分に活用されず、農業生産がもたらす栄養面での恩恵も小さくなるおそれがあると指摘しています。

そこでこの研究は、インド南部テランガナ州ムルグ県の農村女性を対象に栄養知識の水準を調べ、食事の多様性、栄養素の供給源と働き、調理、栄養不良、地域の農業資源の活用といった分野で、どこに知識の不足があるのかを明らかにすることを目的としました。

調査の方法

調査は、対象者の状態をありのままに記述する「記述的研究」として行われました。ムルグ県から行政区画である郡(マンダル)を2つ、そこから村を8つ無作為に選び、各村で農作業に従事する女性15人を、研究の目的に合う人として選んで、合計120人を対象としました。

栄養知識は、あらかじめ質問項目を決めた調査票を使って評価されました。質問は、バランスの取れた食事、主要な栄養素(たんぱく質・脂質など)と微量栄養素(ビタミン・ミネラルなど)、食品に含まれる栄養素とその働き、貧血、果物と野菜、家庭菜園、家禽(鶏など)、調理の仕方、栄養不良など幅広い内容です。回答は「はい」を1点、「いいえ」を0点として採点され、合計得点は16〜98点の範囲だったと報告されています。

主な結果

論文によると、女性の多く(66.66%)は中程度の栄養知識を持っており、知識が高い人は20.00%、低い人は13.34%でした。

比較的よく知られていたのは、体の働きに必要な栄養素(92.50%)、たんぱく質の多い食品(85.00%)、ビタミンAの多い食品(84.16%)、鉄分の多い食品(81.66%)に関する知識でした。

一方で、かなりの知識の不足が見られた分野として、バランスの取れた食事(89.17%)、食物繊維(65.83%)、脂質の働き(67.00%)、望ましい調理の仕方(81.67%)、低栄養の原因(62.50%)、栄養不良の予防(85.84%)、栄養不良が健康に及ぼす悪影響(91.67%)が挙げられています。つまり、個々の食品や栄養素については知っていても、食事全体の組み立て方や栄養不良についての総合的な理解には課題が残っていたということです。

さらに研究チームは、栄養豊富な食材を生産したり手に入れたりできることと、それを実際に家庭の食事で使うこととの間にずれがあることも報告しています。著者らは、栄養についての知識があっても、それが必ずしも適切な食習慣に結びつくわけではないことを示唆していると述べています。

研究が示すこと

著者らは、農村の女性たちは栄養知識の基礎を備えている一方で、総合的で実践的な栄養知識には大きな不足が残っていると結論づけています。

この結果を踏まえ、論文は、農家に技術や情報を届ける「農業普及」活動のうち栄養に配慮したものについて、単に意識を高めるだけでなく、実践的な栄養教育、食事の多様化、家庭菜園、家禽の活用、適切な調理法、行動の変化を促すコミュニケーションへと踏み込む必要があると提言しています。

畑で育てたものを家族の食卓へとつなぐ「農場から家族へ」という考え方は、地域の農業資源と家庭での食材の使い方を結びつけるものとして示されています。この研究は、知っていることと実際に食べていることの間にある距離に目を向ける重要性を伝えています。

原著論文の著者・所属:Amtul Waris(ICAR-Indian Institute of Rice Research, Hyderabad, India)、T. Maneesha(PJTAU, Hyderabad, India)、Geetha Reddy(PJTAU, Hyderabad, India)、Anila Kumari(PJTAU, Hyderabad, India)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Amtul Waris, T. Maneesha, Geetha Reddy, et al. Assessing Nutritional Knowledge among Rural Women in Mulugu District of Telangana, India: Implications for Strengthening Nutrition-sensitive Agricultural Extension. European Journal of Nutrition & Food Safety 2026-10-05. DOI: 10.9734/ejnfs/2026/v18i102168. 原著ライセンス:CC BY.