著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Journal La Sociale
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
インドネシアでは、低所得世帯が食料や栄養に必要なものを手に入れられるよう、社会省が「スンバコ・プログラム」と呼ばれる社会支援を実施しています。この制度は以前「非現金食料支援(BPNT)」と呼ばれ、指定された販売所で食料を購入するための電子残高として支給されていましたが、現在は受給世帯の銀行口座に資金を直接振り込む形になっています。論文によると、このプログラムは7300万人を超える人々を対象とする大規模な施策です。
研究チームは、このプログラムを受給世帯がどう受け止め、どのように経験しているのか、また都市と農村で実施状況にどのような共通点と違いがあるのかを調べました。あわせて、プログラムの有効性を「政策」「実施者」「対象」「環境」「手続き」の五つの観点から評価し、改善の方向性を検討しています。
何をどのように調べたか
調査地は、南スラウェシ州ボネ県のラッパボッセ村(農村)と、マカッサル市のカルクボドア地区(都市)です。それぞれの地域で受給世帯数が最も多い場所として選ばれ、受給世帯はラッパボッセ村で236世帯、カルクボドア地区で584世帯でした。
研究は、数値の統計分析ではなく、関係者の経験や考えを深く理解することを目指す質的研究として行われました。協力者は計60人で、少なくとも2回支援を受けた受給世帯の人々が両地域から25人ずつ、ほかに社会ファシリテーター(受給世帯を支援する担当者)、村や地区の役職者、社会サービス局の職員が含まれます。半構造化インタビュー、現地観察、関連資料の収集、グループで意見を出し合う座談会(フォーカスグループ・ディスカッション)を組み合わせ、複数の情報源を突き合わせて結果を確かめています。
主な結果
論文によると、支援は3か月ごとに60万ルピアが各受給世帯の口座に振り込まれる仕組みです。受給世帯は都市・農村とも、品物そのものを受け取るより現金の方が良いと答え、支援は「とても役立つ」と評価していました。一方で、主食の値上がりを踏まえると金額は十分ではないとし、理想額として都市では3か月あたり150万ルピア、農村では120万ルピアを挙げました。著者らはこの違いを都市の生活費の高さを反映したものとしています。農村では、村内に銀行の代理窓口がなく、資金の引き出しに交通費がかかることが課題として挙がりました。
購入品にも地域差がありました。農村では魚などのおかず、食用油、砂糖、卵が優先されたのに対し、都市では米、卵、食用油、砂糖が中心でした。また、購入の証明を提出する義務はなく、一部では資金が化粧品などの身の回り品に使われていた例も観察されたと報告されています。
五つの観点での評価では、政策、実施、地域の実情との適合という面では比較的有効だった一方、対象の選び方と手続きの面には課題が残るとされました。受給者は、世帯を豊かさの順に10段階に分けた全国データのうち、下から4段階までに入る世帯として社会省が直接決めており、村や地区の役職者は最終決定に関わっていません。その結果、条件を満たさない世帯が受給する「包含エラー」と、条件を満たすのに受給できない「除外エラー」の両方が起きていました。観察では、包含エラーは農村で、除外エラーは都市で多く見られたとされています。
この研究が示すこと
著者らは、このプログラムは食料品そのものを配る制度ではなく、実質的には現金を直接渡す支援として理解するのがより正確だと述べています。そのうえで、受給世帯が自分たちの事情に合わせて使い道を選べる点は評価されている一方、誰に支援を届けるかという対象選定の正確さが有効性を左右する重要な要素だと指摘しました。
研究チームは、村や地区の役職者など地域の実情を知る人々が受給世帯の決定に関わり、地域で合意した指標に基づく生活水準の把握を参考にすることで、包含・除外の誤りを減らせる可能性があると提案しています。全国一律のデータだけでは、都市と農村で異なる暮らしの実態を十分にとらえきれないことが、受給世帯や現場の声から浮かび上がった研究といえます。
原著論文の著者・所属:Jamaruddin Jamaruddin(Institut Pemerintahan Dalam Negeri, Indonesia)、Nur Ichsan Amin(Institut Pemerintahan Dalam Negeri, Indonesia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Jamaruddin Jamaruddin, Nur Ichsan Amin Effectiveness of the Sembako Program for Communities: A Comparative Study. Journal La Sociale 2026-11-03. DOI: 10.37899/journal-la-sociale.v7i5.6029. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。