著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:Growth Innovation and Nutrition Science in Indonesia

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

幼児期の栄養状態は、子どもの成長や発達を測る重要な指標とされています。母親が子どもの栄養についてどれだけ知っているか、そして子どもがエネルギーやたんぱく質を十分にとれているかは、栄養状態に関わる要因と考えられてきました。ただ、これまでの研究では関連があるとする報告とないとする報告があり、結果は一致していません。著者らは、食事の測り方、対象となる子どもの年齢、地域や経済状況、栄養状態を判定する指標の違いが、こうした食い違いの一因になりうると論じています。

そこで研究チームは、インドネシアのプマタン・カンディス地域保健センター(プスケスマス)の管轄地域で、母親の幼児栄養に関する知識、幼児のエネルギー摂取量とたんぱく質摂取量が、幼児の栄養状態とどう関連しているかを調べました。地域の保健医療の現場で役立つ、その地域に即した根拠を得ることがねらいです。

どのように調べたか

この研究は横断研究です。横断研究とは、ある一時点で複数の項目を同時に調べ、項目どうしの関連を見る方法で、介入は行いません。対象地域に登録された12〜36か月の幼児282人から、無作為に53組の母子を選びました。

母親の知識は、母乳育児、バランスのとれた栄養、成長記録カード(KMS)を使った成長の見守り、栄養の必要量、幼児の発育といった内容を問う質問票で測りました。幼児のエネルギーとたんぱく質の摂取量は、食物摂取頻度調査票(FFQ)で調べました。FFQは、一定期間にどの食品をどのくらいの頻度で食べたかを尋ねて、ふだんの摂取量を推定する方法です。栄養状態は「年齢相応の体重かどうか」を示す年齢別体重Zスコア(WAZ)で判定しました。WAZは、同じ年齢の子どもの標準と比べて体重がどの程度ずれているかを表す数値です。そのうえで、ピアソンの相関分析を用いて、それぞれの項目と栄養状態との関連を検討しました。

主な結果

母親の知識得点は平均18.58(標準偏差3.07)で、最低10点から最高26点まで幅がありました。論文は、母親の知識はおおむね中程度だったと報告しています。幼児のWAZは平均でマイナス0.95でした。

幼児のエネルギー摂取量は1日平均約1,008キロカロリーでした。著者らは、インドネシアで1〜3歳児に推奨される1日約1,350キロカロリーと比べると、平均はその約75%にとどまると述べています。たんぱく質摂取量は1日平均36.67グラムで、推奨量の約20グラムを上回り、約183%に当たると報告されています。よく食べられていたたんぱく質源は、卵、牛乳、豆腐、テンペ(大豆の発酵食品)でした。

しかし、母親の知識(p=0.951)、エネルギー摂取量(p=0.553)、たんぱく質摂取量(p=0.950)のいずれについても、幼児の栄養状態との間に統計的に意味のある関連は認められませんでした。つまり、この調査の対象者の間では、母親の知識が多いほど、あるいは摂取量が多いほど子どものWAZが高い、という傾向ははっきりとは見られなかったということです。

この研究が示すこと

著者らは、幼児の栄養状態は一つの要因だけで決まるものではないと考察しています。食事の質や多様さ、ほかの栄養素の充足、感染症の有無、体での栄養の吸収や利用、与え方や育児の習慣、家庭の経済状況や食料の入手しやすさなど、さまざまな要因が関わっている可能性があります。また、FFQはふだんの食べ方を捉える方法なので、日ごとの摂取の変動までは十分に反映できない可能性も指摘しています。

研究チームは、栄養改善の取り組みでは、母親の知識を高めたりエネルギーやたんぱく質の量を満たしたりするだけでなく、食事の質、子どもへの食事の与え方、感染症の予防、保健サービスや栄養のある食品へのアクセスも含めた、総合的な視点が必要だと結論づけています。この研究は、知識や摂取量という単独の要因だけでは幼児の栄養状態を説明しきれないことを、一つの地域のデータから示したものといえます。

原著論文の著者・所属:Wilma Florensia(Universitas Cenderawasih, Indonesia)、Oktavianis(Universitas Fort De Kock, Indonesia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Wilma Florensia, Oktavianis. Maternal Nutritional Knowledge, Energy and Protein Intake and Toddler Nutritional Status: A Cross-Sectional Study in Pematang Kandis, Indonesia. Growth Innovation and Nutrition Science in Indonesia 2026-10-21. DOI: 10.69855/gizi.v1i2.723. 原著ライセンス:CC BY.