著者の所属・活動拠点の国は、ポーランド、イタリアです。
掲載誌:Molecules
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
捨てられがちなブロッコリーの葉をパスタに生かす
ブロッコリーは地上部のうち食べられているのは10〜15%ほどで、主につぼみの部分です。茎や葉の多くは廃棄されています。一方で葉には、グルコシノレート(アブラナ科野菜に特有の含硫黄成分)、ポリフェノール、色素などの植物由来成分が豊富に含まれることが知られています。研究チームは、この葉を乾燥させて粉末にし、デュラム小麦のパスタに練り込む方法に注目しました。
ただし、パスタは生地の練り混ぜ、押し出し成形、乾燥、ゆで調理という工程を経ます。そのたびに熱や水の影響を受けるため、葉に含まれる成分がどれだけ残るのかは分かっていませんでした。著者らは、ブロッコリー葉粉末を加えたパスタについて、乾燥条件とゆで調理によって植物成分の構成がどう変わるかを調べました。あわせて、完成品が試験管内でどのような働きを示すかも評価しています。
粉末の量と乾燥条件を変えて比較
パスタはデュラムセモリナ、水、オリーブ油、塩で作られ、ブロッコリー葉粉末を0%(対照)、2.5%、5%の3段階で加えました。それぞれについて、乾燥させない生パスタ、50℃で8時間乾燥させたもの、80℃で3時間乾燥させたものの3種類を用意しました。
グルコシノレート、ポリフェノール類、クロロフィル(葉緑素)とその分解物、カロテノイド(黄色や橙色の色素)の量は、ゆでる前と後の両方で測定しました。抗酸化能、抗糖化作用、ACE阻害活性は、実際に食べる状態に近づけるため、ゆでたパスタで評価しています。抗糖化作用とは、たんぱく質と糖が結びついて終末糖化産物(AGEs)ができるのを抑える働きです。ACE(アンジオテンシン変換酵素)は、血圧を上げる物質をつくる酵素です。これらの評価はいずれも試験管内で行われました。
成分ごとに異なる加工への反応
葉粉末を加えるとパスタに含まれる植物成分は増え、グルコシノレートやクロロフィルAは添加量にほぼ比例して増加しました。ただしカロテノイドは一様には増えず、ルテインやβ-カロテンなど一部の成分は、5%添加より2.5%添加のパスタで多く検出されました。乾燥の影響も成分や添加量によって異なりました。ポリフェノールのうちフェノール酸は乾燥温度が高いほど減少し、クロロフィルAはどちらの乾燥条件でも減少しました。
ゆで調理に対しては、グルコシノレートが最も弱く、生パスタでは8〜54%減少しました。ポリフェノール類も多くの場合で減少し、その程度は種類や加工条件によって違いました。クロロフィルAは分解されやすい一方、分解物のフェオフィチンAは一部の試料でゆでた後に増えました。カロテノイドは最も安定しているように見え、生パスタではβ-カロテンなどのカロテン類の測定値がゆでた後に上がりました。著者らは、こうした増加は成分が新しく作られたためではなく、加工によって成分が取り出しやすくなったことや、別の形への変化を反映している可能性が高いと述べています。ただし、その仕組みは今回の研究では直接確かめられていません。
ゆでたパスタで見られた試験管内の働き
ゆでたパスタでは、葉粉末を加えたものの抗酸化能が対照より明らかに高く、添加量が多いほど高まりました。ただし80℃で乾燥させた場合は、一部の指標で値が低くなりました。抗糖化作用も対照ではわずか、またはまったく見られなかったのに対し、葉粉末入りでは高まりました。乾燥による変化の方向は、添加量や評価の方法によって異なりました。ACE阻害活性も、生パスタでは添加量に応じて強まりましたが、乾燥させると両方の添加量で弱まりました。
なお、各パスタは1回の製造ロットから作られています。そのため著者らは、報告されたばらつきは分析の繰り返しによるもので、製造ロット間の違いは反映していないことを限界として挙げています。
研究が示すこと
著者らは、ブロッコリーの葉の粉末がパスタに植物成分を加える有望な素材であり、廃棄されがちな副産物の活用策になると結論づけています。成分の残り方や試験管内の働きは乾燥やゆで調理の条件によって大きく変わりましたが、どの条件でも葉粉末入りのパスタは対照より高い機能性を示しました。素材を加えるだけでなく、加工条件の調整も重要であることを示した研究です。
原著論文の著者・所属:Natalia Drabińska-Fois(Food Volatilomics and Sensomics Group, Faculty of Food Science and Nutrition, Poznan University of Life Sciences, 60-624 Poznań, Poland; InLife, Institute of Animal Reproduction and Food Research of Polish Academy of Sciences, Trylińskiego 18 Str., 10-683 Olsztyn, Poland)、Mariana Nogueira(InLife, Institute of Animal Reproduction and Food Research of Polish Academy of Sciences, Trylińskiego 18 Str., 10-683 Olsztyn, Poland)、Paulina Nowicka(Department of Fruit, Vegetable and Plant Nutraceutical Technology, Faculty of Biotechnology and Food Science, Wrocław University of Environmental and Life Sciences, Chełmońskiego 37 Str., 51-630 Wrocław, Poland)、Maja Jeż(InLife, Institute of Animal Reproduction and Food Research of Polish Academy of Sciences, Trylińskiego 18 Str., 10-683 Olsztyn, Poland; PUM Clinical Research Support Center, Unii Lubelskiej 1, 71-252 Szczecin, Poland)、Joanna Honke(InLife, Institute of Animal Reproduction and Food Research of Polish Academy of Sciences, Trylińskiego 18 Str., 10-683 Olsztyn, Poland)、Cristina Manis(Department of Life and Environmental Sciences, University of Cagliari, Cittadella Universitaria di Monserrato, 09042 Monserrato, Italy)、Anna Michalska-Ciechanowska(Department of Fruit, Vegetable and Plant Nutraceutical Technology, Faculty of Biotechnology and Food Science, Wrocław University of Environmental and Life Sciences, Chełmońskiego 37 Str., 51-630 Wrocław, Poland)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Natalia Drabińska-Fois, Mariana Nogueira, Paulina Nowicka, et al. Changes in the Profile of Phytochemicals During Processing of Durum Pasta Fortified with Broccoli Leaf Powder and Its Effect on Bioactive Properties. Molecules 2026-07-31. DOI: 10.3390/molecules31152672. 原著ライセンス:CC BY.