食べ残しや作りすぎで余った白いご飯を、そのまま捨てずに別の料理に作り替えられたら――という発想から生まれたのが、今回紹介する研究です。フィリピンのシティ・カレッジ・オブ・アンジェレスのGeraldine D. Pili氏、Aira Joyce V. Tumang氏、Marvin C. Punsalan氏らは、鶏肉の代わりに米(Oryza sativa)の残りご飯を主原料としたナゲット「ライスナゲット」を試作し、実際に食べた人々がどの程度おいしいと感じるかを調べました。
ナゲットといえば一般に鶏肉のすり身を成形して衣をつけ、揚げたり焼いたりする加工食品で、1950年代に米コーネル大学の食品科学者ロバート・C・ベイカー氏が考案したとされる食品です。研究チームはこの成形・調理の発想を応用し、鶏肉の代わりに炊いた後に余ったご飯を使う調理法を考案しました。研究の背景には、米が世界の人々が摂取する総カロリーの半分以上を供給し、エネルギーの21%、タンパク質の15%を占める重要な主食であるにもかかわらず、炊いた後に傷んで捨てられてしまうことがあるという問題意識がありました。
どうやって作り、どう評価したのか
ライスナゲットの材料は、炊いた残りご飯1ボウルに、みじん切りにしたピーマン、にんじん、茹でてつぶしたじゃがいも2個、みじん切りのにんにく6片、玉ねぎ1個、卵2個、塩・こしょう、油というシンプルな構成です。作り方は、まずご飯をボウルの中でつぶして生地状にし、つぶしたじゃがいもとみじん切りの野菜類を混ぜ合わせ、卵と塩こしょうを加えてよく混ぜたあと、ナゲット状に丸めて油で揚げるという手順が本文中で示されています。
この試作品を評価したのは、同校の学生55人です。研究チームは、外見・色・食感・香り・提供状態・味という観点から、消費者にどの程度好まれるかを調べるため、食品業界で広く使われている「9段階の嗜好度評価(ヒードニックスケール)」という手法を採用しました。これは1(非常に嫌い)から9(非常に好き)までの段階で好みの度合いを答えてもらう方式で、平均点をもとに「非常に好き」「やや好き」「どちらでもない」などの評価に分類します。
ライスナゲットはどう評価されたか
結果として、外見・味・食感・色・香り・総合評価のすべての項目で、平均点は7.9〜8.3点の範囲におさまり、いずれも「非常に好き(Like Very Much)」という評価帯に入ったことが報告されています。具体的には、外見は平均8.25点、味は平均8.02点、食感は平均8.04点、色は平均8.31点、香りは平均8.31点という結果でした。回答した学生からは、見た目・味・食感・色・香りのいずれについても、市販の鶏肉ナゲットと区別がつかないという声が寄せられたとされています。論文では、色は「黄金がかった茶色」、食感は「サクサクしている」、味は「香ばしい(塩味の効いた旨み)」、香りは「ほどよい」といった言葉で特徴づけられています。
あわせて研究チームは、この試作品が事業として成立しうるかを見積もる簡単な収支計算(投資収益率、ROI)も示しています。にんじん・ピーマン・じゃがいも・玉ねぎ・にんにく・こしょう・塩・油・卵といった材料費の合計は167ペソで、これでライスナゲットが68個できたとし、1個5ペソで販売した場合の売上は340ペソ、差し引きの純利益は173ペソ、投資収益率は104%になると試算されています。この数字は今回作った少量の試作分をもとにした簡易な計算であり、実際の商業生産における採算性を保証するものではない点には留意が必要です。
この研究を読むうえでの注意点
この研究は、あくまで1つの教育機関に通う学生55人を対象にした嗜好調査であり、対象者の年齢層や属性が限られている点、また評価が主に「見た目や食感が鶏肉ナゲットに似ているかどうか」という比較の印象に基づいている点には注意が必要です。栄養成分の詳細な分析や、保存性(賞味期限)に関する検証は今回の研究には含まれておらず、著者ら自身も、今後は保存性の試験や別の配合の検討が必要だと述べています。また、著者らは今回の米ナゲットにとどまらず、米を使った米麺、米粉ケーキ、餃子の皮、米ぬか油、米由来の酒、米酢、米乳、米シロップ、ポン菓子、せんべいといった他の食品への応用可能性にも言及していますが、これらは今回の研究で実際に検証されたものではなく、あくまで今後の展望として挙げられているものです。
まとめ
今回の研究では、炊いた後に余ったご飯を鶏肉の代わりに使ったナゲットが、外見・味・食感・色・香りのいずれの面でも学生55人から高く評価され、市販の鶏肉ナゲットと区別がつかないという感想も得られたことが報告されました。簡易な収支試算でも黒字となる結果が示されており、著者らは米を肉の代替材料としてナゲットに活用できる可能性を提案しています。ただし、これは限られた対象者による1つの嗜好調査の結果であり、保存性や大規模な生産の実現可能性については今後さらなる検証が必要とされています。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Geraldine Pili, Aira Joyce V. Tumang Aira Joyce V. Tumang, Marvin Punsalan. Consumer Acceptability of Rice (Oryza Sativa) as the Main Ingredient in Making Rice Nuggets. プンラ (2026). DOI: 10.67730/6g69ex94.