著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Jurnal Ilmu Gizi dan Dietetik
ライセンス: CC BY 4.0 確認元: 雑誌の掲載方針
研究のねらい
アイスクリームは水、脂肪、たんぱく質、糖、空気などから作られる冷凍食品で、一般に糖分と脂肪分が多くなりがちです。著者らは、食物繊維を多く含む素材を取り入れれば、おいしさを保ちながら食物繊維をとりやすいアイスクリームを作れるのではないかと考えました。
研究チームが注目したのは、インドネシアの地元食材である黒米の米ぬかと、ベネン・タロイモの粉です。黒米の米ぬかは食物繊維や、色素のアントシアニンなどのポリフェノール類を含みます。ベネン・タロイモは一般的なタロイモより大きく育つ品種で、でんぷんと食物繊維を含みます。論文によると、白米や赤米の米ぬかを使ったアイスクリームの研究はあるものの、黒米の米ぬかを使った例は見当たらず、この二つの素材を組み合わせたアイスクリームもまれでした。そこで本研究は、両素材の配合比を変えたアイスクリームについて、食べたときの感じ方と栄養組成を調べることを目的としました。
どのように調べたか
研究チームは、黒米の米ぬかとベネン・タロイモ粉の割合を70対30(F1)、80対20(F2)、90対10(F3)とした3種類のアイスクリームを試作しました。そのほかの材料は低脂肪の牛乳、脱脂粉乳、コーンスターチ、増粘剤のカラギーナン、お茶の抽出液などで、3種類とも同量です。甘味には砂糖ではなく、甘味料のステビアを使いました。
官能評価、つまり人が実際に食べて味や見た目などを判断する試験には、試食評価の経験がある大学生35人が参加しました。評価は2種類です。一つは「どのくらい好きか」を5段階で答える嗜好評価で、見た目、色、香り、食感、味、全体の好ましさを尋ねました。もう一つは、色の濃さ、牛乳らしい香りの強さ、なめらかさ、甘さ、口当たりのクリーミーさ、溶け方といった性質そのものを5段階で答える品質評価です。3種類の間に差があるかを統計的に検定し、各項目に重みをつけて総合点を出す方法で最良の配合を選びました。選ばれた配合については、専門の分析機関でエネルギー、主要な栄養素、食物繊維の量を測定しました。
主な結果
品質評価では、香りだけに配合による差がみられました。米ぬかの割合が最も高いF3は、牛乳らしい香りの評価が5段階で平均4.06となり、「まずまず牛乳の香りがする」の水準でした。これはF1の3.23より統計的に有意に高い値です。一方、なめらかさ、クリーミーさ、溶け方は3種類とも差がなく、いずれも「まずまずなめらか」「まずまずクリーミー」「ゆっくり溶ける」の水準と評価されました。甘さはどの配合も平均3前後で「味が薄い」の水準にとどまり、ステビアを使った低糖の製品として通常のアイスクリームほどの甘さには届いていないと論文は述べています。
嗜好評価では、全項目の平均が5段階で3.40〜4.17の範囲に収まり、「やや好き」から「好き」の水準でした。配合による差がみられたのは食感だけで、F3は4.17とF1・F2より有意に高く評価されました。味や全体の好ましさには3種類の間で有意な差はなく、著者らはどの配合も受け入れられたとしています。重みづけによる総合判定では、F3が最良の配合に選ばれました。
F3の栄養分析では、1食分50グラムあたりエネルギー63キロカロリー、たんぱく質2.1グラム、脂質1.3グラム、炭水化物10.6グラム、食物繊維3.1グラムでした。食物繊維は1日の基準量(1日2150キロカロリーを前提とする基準)の約9.9%に相当します。論文によると、100グラムあたり6.2グラムという食物繊維量は、インドネシアの食品表示制度で「高食物繊維」と表示できる基準を満たしています。なお、黒米の米ぬかに含まれる抗酸化成分については、今回の製品では測定していないと著者らは明記しています。
研究が示すこと
この研究は、黒米の米ぬかとベネン・タロイモ粉を使い、甘味をステビアに置き換えたアイスクリームでも、試食した学生たちから一定の好評価を得られることを報告しています。米ぬかの割合を90%に高めた配合は食感の好ましさで上回り、1食分で1日の基準量の約1割の食物繊維を含んでいました。甘さが控えめと評価された点も含め、地元の食材を生かした食物繊維の多いアイスクリームの配合と、その風味や栄養の特徴を具体的に示した研究といえます。
原著論文の著者・所属:Vieta Annisa Nurhidayati(Program Studi Manajemen Industri Jasa Makanan dan Gizi, Sekolah Vokasi, Institut Pertanian Bogor, Bogor 16128, Jawa Barat, Indonesia)、Mia Mustika Hutria Utami(Program Studi Manajemen Industri Jasa Makanan dan Gizi, Sekolah Vokasi, Institut Pertanian Bogor, Bogor 16128, Jawa Barat, Indonesia)、Ksatriadi Widya Dwinugraha(Program Studi Manajemen Industri Jasa Makanan dan Gizi, Sekolah Vokasi, Institut Pertanian Bogor, Bogor 16128, Jawa Barat, Indonesia)、Hafidz Nawawi Ramadhan(Program Studi Manajemen Industri Jasa Makanan dan Gizi, Sekolah Vokasi, Institut Pertanian Bogor, Bogor 16128, Jawa Barat, Indonesia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Vieta Annisa Nurhidayati, Mia Mustika Hutria Utami, Ksatriadi Widya Dwinugraha, et al. Sensory Characteristics and Nutritional Composition of Ice Cream Made from Black Rice Bran and Beneng Taro Flour. Jurnal Ilmu Gizi dan Dietetik 2026-09-30. DOI: 10.25182/jigd.2026.5.3.601-609. 原著ライセンス:CC BY.