著者の所属・活動拠点の国は、ガーナです。

掲載誌:Journal of African Sustainable Development

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

教員の食生活に目を向けた理由

食生活が関わる生活習慣病(非感染性疾患)の増加を背景に、さまざまな集団の食習慣への関心が高まっています。研究チームが注目したのは学校の教員です。教員は授業を担うだけでなく、生活習慣を通じて生徒の健康観にも影響しうる存在であり、その栄養状態は授業の質や欠勤、学校全体の健康文化にも関わると著者らは述べています。

これまでの研究は生徒や若者の食習慣を扱うものが中心で、同じ食環境にいる教員はあまり調べられてきませんでした。特に、収入の制約や根強い食文化、栄養知識の不足が重なりやすいガーナ北部アッパーウェスト州のシサラ・イースト地区では、教員の食生活はほとんど研究されていません。そこで著者らは、この地区の高校教員を対象に、年齢、性別、婚姻状況、学歴、教職経験、月収といった社会人口学的な属性が、食べ物の選び方とどう関わっているかを調べました。

調査の方法

調査対象は、同地区にある2校の高校の教員です。教員総数は約198人で、各校80人ずつ、合わせて160人が回答しました。参加者は、協力しやすい人から集める「便宜的抽出」で選ばれています。著者ら自身も、この方法では結果を広く一般化することに限界があると述べています。

質問票はメッセージアプリのWhatsAppで配布されました。前半では属性を、後半では食習慣を尋ねています。食習慣の項目は、果物、野菜、加工食品、全粒穀物、砂糖入り飲料、赤身肉(牛肉など)の6つの摂取頻度です。著者らはこれらの回答を集計して傾向を示すとともに、属性と各食品の摂取頻度との間に相関、つまり一方が変わるともう一方も変わる傾向があるかを分析しました。

教員の食生活の実態

回答者は41〜50歳が約52%、男性が67.5%、既婚者が87.5%でした。月収は1,500〜3,000ガーナ・セディの層と3,000セディを超える層がそれぞれ46.9%を占めています。

果物を毎日食べると答えた教員は5.6%にとどまり、41.9%は「ほとんど、または全く食べない」と回答しました。野菜は果物よりやや多く、毎日食べる人が19.4%、週3〜4回が28.1%でした。加工食品については、全体の約4分の3が少なくとも週1回は食べていました。全粒穀物を1日3サービング以上とる人は8.8%で、26.9%は全く食べていませんでした。一方、砂糖入り飲料は46.9%、赤身肉は43.1%が「ほとんど、または全くとらない」と答えています。

著者らはこの結果を次のようにまとめています。教員の食事にはある程度の多様性があるものの、果物と野菜の摂取は推奨水準を下回っている。加工食品にもある程度頼っており、全粒穀物の摂取は少ない。そのため、栄養面での不足が生じている可能性がある。

属性と食の選択の関係

相関分析の結果について、著者らは、年齢、性別、婚姻状況、学歴、月収が教員の食べ物の選び方と有意に関連していたと報告しています。著者らの解釈では、年齢が高い教員ほど果物・野菜・全粒穀物をよく食べ、若い教員ほど加工食品や砂糖入り飲料、赤身肉に傾く傾向がありました。性別では、女性教員が果物と野菜を多くとり、男性教員は全粒穀物を好む傾向が示されたとしています。

また、月収が高い教員ほど多様で健康的な食事をとり、収入が低い教員は安価でエネルギーの多い食品に頼りがちだったと著者らは述べています。学歴の高さは食事の多様性と関連する一方で、加工食品など現代的な食べ方とも結びついていたと報告されています。教職経験は、全粒穀物の摂取と負の相関があったことを除き、多くの食品との間に有意な関連が見られませんでした。

研究が示すこと

著者らは、この地区の高校教員の食生活は理想的な栄養水準に達しておらず、その背景には収入や教育の差があると結論づけています。そのうえで、ガーナ教育サービスと保健省が連携して教員向けの栄養教育を定期的に行うことや、学校の食堂で栄養バランスのよい食事を提供することなどを提言しました。

この研究は、生徒の陰に隠れがちだった教員の食生活を取り上げ、同じ職場で働く人々の間でも、年齢や収入などの違いによって食べ方に差が生じうることを示した報告といえます。

原著論文の著者・所属:YIAH HAGBENE(Akenten Appiah-Menka University of Skills Training and Entrepreneurial Development, Kumasi, Ghana)、ELLEN LOUISE OLU FAGBEMI(Akenten Appiah-Menka University of Skills Training and Entrepreneurial Development, Kumasi, Ghana)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):YIAH HAGBENE, ELLEN LOUISE OLU FAGBEMI. SOCIO-DEMOGRAPHIC DETERMINANTS OF DIETARY CHOICE AMONG SENIOR HIGH SCHOOL TEACHERS IN THE SISSALA EAST MUNICIPALITY, GHANA. Journal of African Sustainable Development 2026-07-31. DOI: 10.70382/bejasd.v12i2.069. 原著ライセンス:CC BY.