著者の所属・活動拠点の国は、アメリカです。
掲載誌:Frontiers in Oncology
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
超加工食品とは、精製された原料、加工された油脂、添加糖、食塩などを主な材料に、工場で製造される食品です。味や見た目、食感、日持ちを良くするための添加物が多く使われています。この総説で著者らは、超加工食品によく含まれる原材料や添加物と、慢性疾患やがんとの関係を示す研究を集めて整理しました。注目したのは、炎症、代謝の乱れ、酸化ストレス、腸内細菌叢の乱れといった、互いにつながった体内の仕組みです。
論文は複数の研究をまとめて論じるナラティブ・レビュー(叙述的総説)です。著者らは2026年3月から9月にかけてPubMedとGoogle Scholarで文献を検索しました。対象は主に2001年1月から2026年9月までに発表された研究で、主要な論文や総説、メタ解析の参考文献リストからも関連する論文を探しています。
成分ごとに見た報告
総説では、小麦粉の漂白剤、甘味料、食塩、うま味調味料、増粘剤や乳化剤、着色料、保存料などを成分ごとに取り上げています。たとえば小麦粉の漂白に使われる過酸化ベンゾイルについては、マウスの皮膚発がんモデルの研究が紹介されています。良性の腫瘍(乳頭腫)に繰り返し処理すると、乳頭腫の総数は増えないまま、がん(癌腫)の発生が325%、ケラトアカントーマの発生が44%増えました。著者らはこの結果を、新しい腫瘍を作るというより、すでにある病変の悪性化を後押しする可能性を示すものと位置づけています。
塩素による小麦粉処理では、アロキサンという物質が生じることがあります。アロキサンは膵臓のインスリンを作る細胞を傷つけるため、糖尿病の実験モデルづくりに使われます。総説が引用した研究では、市販の小麦粉175試料の24%から微量のアロキサンが検出されました。平均濃度は1キログラムあたり0.95ミリグラムで、検出はケーキ用小麦粉に限られていました。
人工甘味料については、観察研究で認知機能の低下が速まることとの関連が報告されていると紹介しています。ただし著者らは、観察研究では因果関係を判断できないことも併せて述べています。うま味調味料のグルタミン酸ナトリウムでは、動物実験で腸内細菌叢の変化、肥満や血糖値の上昇、脂肪肝炎に似た肝臓の変化が報告されています。一方で論文は、現時点の証拠からは直接の発がん物質とは言えず、代謝の乱れや炎症などを通じて間接的にがんを起こしやすい環境に関わる可能性があるとしています。
共通する仕組みと新しい概念の提案
著者らによれば、個々の成分は化学的な性質が大きく異なります。それでも、腸内細菌叢の乱れ、腸の粘膜のバリア機能の低下、弱い炎症の持続、酸化ストレス、代謝の乱れが、超加工食品が健康に悪影響を及ぼしうる共通の経路として浮かび上がるといいます。
そのうえで著者らは「オンコペリジェニック環境」という用語を提案しています。食事、腸内細菌、代謝、環境、生活習慣などに長く影響されることで、全身や組織に少しずつ変化が積み重なり、がんになりやすい状態ができていくという考え方です。この考え方では、がんの発生を一度の遺伝子変異ではなく、さまざまな臓器で進む乱れが積み重なった結果とみなします。すでにできた腫瘍の成長を支える「腫瘍促進微小環境」とは異なり、腫瘍ができる前の段階を対象にした枠組みだと説明されています。
限界と研究の意味
著者らは、証拠の読み取りには注意が必要だとも述べています。仕組みを調べる実験研究の多くは、人が通常とる量を超える量を使っています。そのため、結果をそのまま人に当てはめることには慎重であるべきだとしています。また疫学研究の多くは超加工食品の摂取量を全体として扱っており、個々の成分の寄与や因果関係を特定するのは難しいと指摘しています。
この総説は、超加工食品と慢性疾患やがんの関連を、個々の原材料や添加物がどのような仕組みで体に影響しうるかという観点から整理し直したものです。確立した知見と推測を見分け、因果関係を明らかにするには、なお多くの課題が残っていることも示しています。
原著論文の著者・所属:Sunil Thomas(Division of Gastroenterology, Lankenau Medical Center; Lankenau Institute for Medical Research)、Olivia Lutz(Lankenau Institute for Medical Research)、Nicole Albert(Division of Gastroenterology, Lankenau Medical Center)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Sunil Thomas, Olivia Lutz, Nicole Albert. Ultra-processed food ingredients as environmental contributors to chronic diseases and cancer: emerging evidence linking gut dysbiosis, inflammation, oxidative stress, and metabolic dysfunction. Frontiers in Oncology 2026-11-03. DOI: 10.3389/fonc.2026.1978662. 原著ライセンス:CC BY.