著者の所属・活動拠点の国は、イタリアです。

掲載誌:Pharmaceuticals

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

加工食品や菓子、清涼飲料、調理済み食品などには、保存性や見た目、食感を保つための工業的な食品添加物が多く使われています。著者らは、工場での高度な加工を経て、家庭の調理ではあまり使わない原料や添加物を含む食品を「超加工食品」と呼び、その消費が増えたことで、リン・ナトリウム・カリウムを含む化合物や乳化剤、保存料、合成着色料にさらされる機会が増えていると指摘しています。

この論文は、新しい実験や調査を行ったものではなく、既存の研究を整理した総説です。研究チームは、こうした添加物が一般の人の腎臓の健康や、慢性腎臓病(腎臓の働きが長期間にわたって低下していく病気)の進行にどう関わりうるかについて、現時点の知見をまとめることを目的としました。あわせて、植物などに由来する「天然生理活性成分」が、食品の保存という役割を果たしつつ腎臓を守る、より安全な代替になりうるかも検討しています。

添加物と腎臓をめぐる知見

著者らがまとめた文献では、超加工食品を多くとることは、慢性腎臓病の発症や進行のリスク上昇と関連していると報告されています。その背景として論文が挙げるのは、体内で有害な活性酸素が過剰になる「酸化ストレス」、慢性的な炎症、腸内細菌のバランスの乱れ、血管の内側を覆う細胞の働きの低下、ミネラル代謝の乱れといった仕組みです。たとえば、食物繊維が少なく乳化剤や保存料、人工甘味料を含む超加工食品は腸内細菌の構成を変えうるとされ、慢性腎臓病の患者では、腸のバリアが弱まって尿毒素(腎臓で十分に排出されずにたまる有害物質)が血液中に入りやすくなることが論じられています。

特に注目されているのがリンを含む添加物です。論文によると、添加物として加えられた無機リンは体に吸収される割合が90〜100%と高く、肉や乳製品などに含まれる動物性の有機リンの40〜60%、植物性の有機リンの20〜30%を大きく上回ります。腎機能が落ちるとリンを排出しにくくなるため、血液中のリンが高い状態が続き、血管の石灰化や骨の異常などにつながりうるとされています。論文では、血液透析を受ける患者にリン系添加物を含む食品を避けるよう指導したところ、3か月後に血清リン値の平均が1 mg/dL下がったという研究も紹介されています。

ナトリウムについては、論文で、日々の摂取量のうち天然由来は8%にとどまり、72%が添加物、残り20%が調理や食卓で加える塩に由来すると紹介されています。カリウムを含む添加物は1日の摂取量を300〜500 mg増やしうるとされ、腎機能が低下した人では血液中のカリウムが高くなりすぎる危険があります。一方で、栄養成分の分析では食品にもともと含まれるミネラルと添加物として加えられたミネラルが区別されないため、個々の食品に添加物がどれだけ含まれているか、その正確な量は分かっていないと論文は述べています。著者らは、このことが慢性腎臓病の患者向けの明確な食事指針づくりを難しくしていると指摘しています。

代替としての天然由来成分

著者らは、ポリフェノールやカロテノイド、テルペン類など、植物などに由来する成分にも目を向けています。文献では、これらの成分が抗酸化、抗炎症、抗菌、腎臓保護といった性質を示すことが報告されています。例として、ウコンに含まれるクルクミンや、オリーブ油に多いヒドロキシチロソールが取り上げられ、後者は糖尿病による腎臓病の実験モデルで、尿たんぱくや酸化ストレスを減らしたと紹介されています。

食品技術の面でも、植物抽出物やオレガノ、タイム、ローズマリーなどの精油は、天然の保存料・抗酸化剤・乳化剤・着色料として使える可能性が示されています。一方で論文は、精油の強い香りや揮発しやすさが食品の風味や安定性に影響することを課題として挙げています。また、天然由来であることは安全性や効果を保証するものではなく、実験室で抗菌作用が確認されても、実際の食品の中で保存効果や安全性があるとは限らないと強調しています。

さらに論文は、天然生理活性成分を臨床に生かすうえでの課題も整理しています。根拠の多くは動物実験などの前臨床研究や小規模な臨床試験に基づいていること、そして多くの成分が体に吸収されにくく、速やかに代謝されてしまうという性質をもつことが、すでに知られた制約として挙げられています。そのうえで、最適な用量や使用期間、薬との飲み合わせについては、多くの臨床研究が明確な指標を示していないと述べています。

研究が示すこと

著者らは、工業的な食品添加物が慢性腎臓病の発症や進行に関わっている可能性がある一方、天然生理活性成分は食品としての機能と腎臓への利点を兼ね備えうる有望な代替だと結論づけています。ただし、その長期的な有効性と安全性は、適切に設計された臨床試験で確かめる必要があるとしています。この総説は、食品に「何が加えられているか」が腎臓の健康を考えるうえで見落とされやすい論点であることを示しています。

原著論文の著者・所属:Giulia Marrone(Department of Systems Medicine, University of Rome Tor Vergata, Via Montpellier 1, 00133 Rome, Italy; UOSD Nephrology and Dialysis, AOU Policlinico Tor Vergata, 00133 Rome, Italy)、Kevin Cornali(Department of Experimental Medicine, PhD School in Biochemistry and Molecular Biology, University of Rome Tor Vergata, Via Montpellier 1, 00133 Rome, Italy)、Manuela Di Lauro(Department of Systems Medicine, University of Rome Tor Vergata, Via Montpellier 1, 00133 Rome, Italy; UOSD Nephrology and Dialysis, AOU Policlinico Tor Vergata, 00133 Rome, Italy)、Irene Pandolfi(School of Specialization in Nephrology, University of Rome Tor Vergata, 00133 Rome, Italy)、Asia Antonetti(School of Specialization in Nephrology, University of Rome Tor Vergata, 00133 Rome, Italy)、Anna Paola Mitterhofer(Department of Systems Medicine, University of Rome Tor Vergata, Via Montpellier 1, 00133 Rome, Italy; UOSD Nephrology and Dialysis, AOU Policlinico Tor Vergata, 00133 Rome, Italy)、Flaminia Coluzzi(Department of Surgical and Medical Sciences and Translational Medicine, Sapienza University of Rome, 00189 Rome, Italy; Unit Anesthesia, Intensive Care and Pain Therapy, Sant’Andrea University Hospital, 00189 Rome, Italy)、Agostino Chiaravalloti(Department of Biomedicine and Prevention, University of Rome Tor Vergata, 00133 Rome, Italy; IRCCS Neuromed, 08077 Pozzilli, Italy)、Annalisa Noce(Department of Systems Medicine, University of Rome Tor Vergata, Via Montpellier 1, 00133 Rome, Italy; UOSD Nephrology and Dialysis, AOU Policlinico Tor Vergata, 00133 Rome, Italy)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Giulia Marrone, Kevin Cornali, Manuela Di Lauro, et al. Food Additives: Emerging Implications for Kidney Health. Pharmaceuticals 2026-10-26. DOI: 10.3390/ph19111690. 原著ライセンス:CC BY.