著者の所属・活動拠点の国は、インドです。

掲載誌:Cureus

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: Europe PMC

研究の目的

妊娠糖尿病は、妊娠中に初めて見つかる血糖値の高い状態です。多くの場合、最初の治療は栄養指導を中心とした食事療法です。ただし、炭水化物をどう指示するのが最もよいかは、まだ定まっていません。著者らによると、診療指針は妊娠中に1日175グラム以上の炭水化物をとるよう示しています。一方で、どのような炭水化物食品を選ぶべきか、炭水化物の割合を下げると母子の結果がよくなるのかまでは示していません。

著者らは、炭水化物の「量」と「質」を別のものとして扱いました。量は、グラム数や摂取エネルギーに占める割合です。質は、食後の血糖の上がりやすさを示すグリセミック指数(GI)、食物繊維、加工の程度、食品の種類などです。たとえば低GIの食品に置き換えれば、量を変えずに質だけを変えられます。これに対して、炭水化物を減らすと、通常は脂質やたんぱく質の割合が増えます。そこで研究チームは、妊娠糖尿病と診断された後に行われたランダム化比較試験を集めました。そして、質と量について何が示されているか、どの結果なら統合して分析できるほど比較可能かを調べました。

何を調べたか

研究チームは、医学文献データベースのPubMed/MEDLINEとCochrane CENTRALを2026年7月19日まで検索しました。さらに、引用文献もたどって資料を探しました。対象としたのは、妊娠糖尿病と診断された女性を対象に、炭水化物の質や量、またはそれらを含む食事パターンを変えたランダム化試験です。同じ試験について複数の報告がある場合は一つの試験として数えました。その結果、34報告・25件の独立した試験が対象となりました。試験は1984〜2025年に発表されたもので、アジア、欧州、オーストラリア、米国で行われていました。

分析では、試験で指示された食事だけでなく、参加者が実際に食べた内容も確認しました。偏りの危険性は、結果の項目ごとに評価しました。データを統合したのは、介入の考え方、結果の定義、時点、解析対象がそろっている場合に限られます。

主な結果

まず目立ったのは、指示と実際の食事のずれです。ある試験では、低炭水化物群のうち目標量に達した人は20%にとどまりました。別の試験では、両群の実際の炭水化物摂取量がほぼ同じでした。また、血糖が基準を超えた比較群の参加者を低GI食に切り替えるなどの臨床上の対応も、比較の意味を変えていました。

低GIの主食への置き換えや食物繊維の追加は、食後血糖など一部の血糖指標を改善しました。たとえば224人を対象としたミレット(雑穀)の試験では、総合的な血糖管理の改善は統計的に有意ではありませんでした。一方、食後血糖の平均はわずかに下がりました。これに対して、炭水化物の量を減らす介入では、血糖の改善が一貫して見られませんでした。

インスリン治療について、低GI食の2試験(計159人)を統合すると、インスリン開始の基準を超える人の割合は低くなりました(リスク比0.43)。ただし、比較群で基準を超えた人は低GI食に切り替えられていました。そのため、実際にインスリンを始めた人数の差はなくなっていました。著者らは、この結果を「基準を超えたかどうか」への探索的な効果として読むべきだとしています。低炭水化物食の3試験(計248人)では、インスリン開始は減りませんでした(リスク比1.02)。出生時の体格や新生児の体脂肪については、おおむね差がありませんでした。ただし、推定の精度は低いとされています。

この研究が示すこと

著者らは、試験の設計や実際の摂取内容、評価項目がばらばらで、全体を一つにまとめた分析には適さないと結論づけています。炭水化物の質に見られた利点は、主に血糖や食後血糖の指標に関するものです。母子の臨床的な結果への効果は確認されていません。また、質が量より優れているとも、制限を強めるほど良いとも示されていません。

著者らは、量への配慮を質に置き換えるのではなく、個人に合わせた栄養的に十分な食事の中で質を重視する考え方を示しています。そのうえで、実際に食べた内容と体の反応を見守ることが大切だとしています。なお、1日175グラムという目安は妊娠全般に向けたものです。今回の妊娠糖尿病の試験から導かれた基準ではない点にも注意が促されています。

原著論文の著者・所属:Swati Aggarwal(. Gynecology and Obstetrics , Sri Balaji Action Medical Institute , New Delhi , IND)、Gurjeet K Chawla(. Gynecology and Obstetrics , Sri Balaji Action Medical Institute , New Delhi , IND)、Renu Gupta(. Gynecology and Obstetrics , Sri Balaji Action Medical Institute , New Delhi , IND; Nutrition and Dietetics , Manav Rachna International Institute of Research and Studies , Faridabad , IND)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Aggarwal S, Chawla GK, Gupta R. Carbohydrate Quality Versus Quantity in Gestational Diabetes Mellitus While Considering Randomized Dietary Interventions: A Systematic Review. Cureus 2026-09-28. DOI: 10.7759/cureus.117076. 原著ライセンス:CC BY.