著者の所属・活動拠点の国は、オランダです。
掲載誌:Nutrients
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF
研究の目的
オランダでは高齢化が急速に進んでいます。多くの高齢者は、施設へ移るより住み慣れた自宅で暮らし続けることを望んでいます。自立した生活を保つうえで、十分な栄養をとり、低栄養を防ぐことが重要になります。論文によると、自宅で暮らす65歳以上の8.5%が低栄養のスクリーニング(ふるい分け検査)で陽性となり、85歳以上では19.3%、訪問介護などの在宅ケアを受ける人では15.8%に上ります。
一方、自宅で暮らす65歳以上の高齢者に絞った食事のデータは多くありません。全国食品消費調査の最新版には80歳以上が含まれず、70歳以上を対象とした調査は10年以上前のものです。そこで研究チームは、2015年以降に集められたデータに基づく研究を集め、この人たちが何をどれだけ食べているか、その食事が国の食事指針にどれだけ沿っているか(食事の質)、そして本人が食事や食卓をどう受け止めているかを整理しました。
何を調べたか
著者らは三つの文献データベースを検索しました。そのうえで、2人の研究者がそれぞれ独立に候補文献をふるい分け、データを抜き出し、研究の質を評価しました。系統的レビューとは、決められた手順で関連研究を網羅的に集めて結果をまとめる方法です。今回集まった研究は、調査方法も対象者も測った項目もまちまちでした。そのため、数値を統計的に統合するメタ分析は行わず、結果を文章で整理しています。
最終的に、13の独立した対象集団についての15本の論文が含まれました。13本は食事の摂取量や質を数値で調べた量的研究で、2本は聞き取りや観察で本人の考えや体験を調べた質的研究です。研究の偏り(バイアス)の危険性は、全体として中程度と評価されています。
主な結果
研究ごとに、たんぱく質摂取量の基準値や測定方法は異なります。それでも、参加者のかなりの割合がたんぱく質の推奨量に届いていないという傾向は共通していました。たとえば824人を対象とした研究では、4割近くの人がたんぱく質摂取量の少ない可能性が高いと判定されています。
ビタミンDは、食事からの摂取量がどの研究でも一貫して少ない結果でした。オランダの推奨量は69歳までが1日10マイクログラム、70歳以上が20マイクログラムです。ある研究では平均摂取量が1日4.0マイクログラムで、参加者の99%が20マイクログラムに届いていませんでした。ただし、これは食事からの摂取量の話で、体内のビタミンDの状態とは別です。血中濃度も測った唯一の研究では、サプリメントを使っていない活動的な高齢者の夏の値は多くの人で十分な水準でした。また、ビタミンDサプリメントの使用も、国の指針に届かない場合が多いと報告されています。
食品群では、魚、乳製品、肉やその代替食品の摂取が不十分な場合が多く見られました。野菜は研究によって結果が分かれ、果物は比較的足りていました。食事全体の質を評価した研究では、おおむね悪くはないものの、まだ改善の余地がある水準とされています。
質的研究からは、身についた食習慣が強く、変えることにためらいがあることが分かりました。また、たんぱく質の必要量があまり意識されていないことも示されています。ある研究では、1日に必要なたんぱく質量を説明された40人のうち17人が、自分の摂取量を正しく見積もれませんでした。11人は多めに、6人は少なめに見積もっていました。別の研究では、本人は食事への影響を習慣や健康状態、食品の入手しやすさのせいだと考えていました。それでも実際には、一人暮らしかどうかや、他人の食事に口を出さないという規範といった人間関係の要因も、食行動に影響しているようでした。
研究が示すこと
著者らは、オランダで自宅に暮らす高齢者の食事は十分とはいえず、とくにたんぱく質とビタミンDが不足しがちだと結論づけています。一方で、本人が食事や食卓をどう経験しているかは、まだほとんど分かっていません。論文は、栄養についての助言は、今ある習慣を生かして小さな調整を重ねる形のほうが受け入れられやすい可能性があると述べています。さらに、80歳以上も含めた全国を代表する最新の摂取データと、本人の体験を掘り下げる研究がもっと必要だとしています。
原著論文の著者・所属:Bart van der Wijst(Nutrition and Dietetics, The Hague University of Applied Sciences, Johanna Westerdijkplein 75, 2521 EN The Hague, The Netherlands; Technology for Health Care Research Group, The Hague University of Applied Sciences, Johanna Westerdijkplein 75, 2521 EN The Hague, The Netherlands)、Henriëtte S. Brummer(Centre of Expertise Health Innovation, The Hague University of Applied Sciences, Johanna Westerdijkplein 75, 2521 EN The Hague, The Netherlands; Technology for Health Care Research Group, The Hague University of Applied Sciences, Johanna Westerdijkplein 75, 2521 EN The Hague, The Netherlands)、Rosalie van der Vaart(Centre of Expertise Health Innovation, The Hague University of Applied Sciences, Johanna Westerdijkplein 75, 2521 EN The Hague, The Netherlands; Technology for Health Care Research Group, The Hague University of Applied Sciences, Johanna Westerdijkplein 75, 2521 EN The Hague, The Netherlands)、Astrid M. H. Horstman(Centre of Expertise Health Innovation, The Hague University of Applied Sciences, Johanna Westerdijkplein 75, 2521 EN The Hague, The Netherlands)、Luc P. de Witte(Centre of Expertise Health Innovation, The Hague University of Applied Sciences, Johanna Westerdijkplein 75, 2521 EN The Hague, The Netherlands; Technology for Health Care Research Group, The Hague University of Applied Sciences, Johanna Westerdijkplein 75, 2521 EN The Hague, The Netherlands)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Bart van der Wijst, Henriëtte S. Brummer, Rosalie van der Vaart, et al. Dietary Intake, Diet Quality, and Mealtime Experiences of Community-Dwelling Older Adults in The Netherlands: A Systematic Review. Nutrients 2026-10-29. DOI: 10.3390/nu18213590. 原著ライセンス:CC BY.