著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

妊娠糖尿病は、妊娠中に初めて見つかる血糖値の異常です。早産や帝王切開、巨大児などの周産期の問題に関わるほか、母親が後に2型糖尿病になりやすくなることも知られています。現在は主に妊娠24〜28週のブドウ糖負荷試験で診断されますが、代謝の乱れはそれより前から始まっている可能性があり、早い段階で手がかりとなる指標が求められています。

食事は、妊娠糖尿病のリスクに関わる要因の中でも見直しやすいものとして注目されてきました。著者らによると、野菜中心の食事と妊娠糖尿病の少なさ、肉や加工肉の多い欧米型の食事とリスクの高さとの関連は、これまでの研究で報告されています。一方で、食事と病気をつなぐ体内の分子の変化は十分に分かっていません。

そこで研究チームは、中国貴州省に暮らす少数民族ミャオ族の妊婦を対象に、食事のとり方の傾向(食事パターン)と、血液中の多数のたんぱく質をまとめて測る「プロテオミクス」を組み合わせました。妊娠糖尿病に関わる、食事と結びついたたんぱく質の特徴を探ることが目的です。

どのように調べたか

研究は症例対照研究として行われました。妊娠糖尿病と新たに診断されたミャオ族の妊婦39人と、血糖値が正常な妊婦39人を比べています。対照の妊婦は、年齢、妊娠週数、BMIが近い人を1人ずつ組み合わせて選ばれました。

食事は、ミャオ族の妊婦向けに作られた食物摂取頻度調査票で調べました。これは、どの食品をどのくらいの頻度で食べているかを尋ねる質問票です。調査は妊娠10〜12週または24〜28週に、血液の採取と同じ日に行われました。血液はすべて、ブドウ糖負荷試験の結果が出る前に採られています。

食事パターンは、妊婦705人のコホート全体の食事データから統計的に導き出されました。今回の78人はこのコホートから選ばれた人たちで、全体から得られたパターンの構成を78人それぞれの食事データに当てはめて得点を計算しています。その結果、二つのパターンが見つかりました。一つは飲料、アルコール飲料、乳製品のデザート、加工肉、精製された穀物、インスタント食品などが多い「加工食品型」です。もう一つはキノコ・海藻、魚介類、全粒穀物、根菜、卵、乳製品、野菜、果物などが多い「バランス型」です。

血液については質量分析という方法でたんぱく質を網羅的に測定し、品質基準を満たした344種類を解析に使いました。そのうえで、食事パターンと妊娠糖尿病、食事パターンと個々のたんぱく質、それぞれの関連を統計的に調べています。

主な結果

加工食品型の傾向が強い人ほど、妊娠糖尿病である割合が高いという関連が見られました。総エネルギー摂取量や妊娠・出産の回数を考慮したモデルでは、パターンの得点が1標準偏差高くなるごとに、妊娠糖尿病のオッズが約2.33倍になると報告されています。一方、バランス型と妊娠糖尿病の間には、統計的にはっきりした関連は見られませんでした。

血液のたんぱく質を比べると、妊娠糖尿病のグループと対照グループで量が異なる候補が34種類見つかりました。これらは脂質の代謝や炎症に関わる働きに多く含まれていました。ただし、多数の比較を行ったことを補正すると、明確な差が残ったのは4種類にとどまります。そのため著者らは、これらを確定した指標ではなく、今後確かめるべき候補と位置づけています。

食事との関係では、加工食品型の傾向が強いほど、脂質の運搬に関わるアポリポたんぱく質M(APOM)が少ないという関連が見られました。また、炎症に関わる血清アミロイドA4(SAA4)も少ない傾向にありましたが、こちらの関連は統計的有意性の境界付近でした。

344種類のたんぱく質を使って、妊娠糖尿病のグループと対照グループを見分けられるかを探索的に検証したところ、研究内部での判別能力を示すAUCは0.953でした。SAA4は、検証のすべての繰り返しで選ばれました。ただし著者らは、データの前処理の段階でグループの情報が使われていたため、この数値は慎重に解釈すべきだと述べています。また、APOMとSAA4を組み合わせたモデルはあくまで概念実証のためのものであり、臨床で使える予測モデルとして解釈すべきではないとしています。

この研究が示すこと

この研究は、ミャオ族の妊婦において、加工食品中心の食事パターンが妊娠糖尿病と関連し、血液中のAPOMやSAA4の量の違いとも結びついていることを報告しました。食事と妊娠糖尿病の間に、脂質代謝や炎症に関わるたんぱく質の変化が関わっている可能性を示す手がかりといえます。

ただし、78人という小規模な症例対照研究で示されたのは関連であり、加工食品型の食事が妊娠糖尿病やたんぱく質の変化を引き起こすことが確かめられたわけではありません。著者らは、より大きな独立した集団で妊娠の経過を追う研究によって、これらの結果を検証する必要があると述べています。

原著論文の著者・所属:Wansong Zhang(Department of Comprehensive, Quality Management Office, Affiliated Hospital of Guizhou Medical University; Department of Medical, Guizhou Hospital Affiliated to the First Affiliated Hospital of Sun Yat-sen University)、Chenyu Liu(Collaborative Innovation Center for Prevention and Control of Endemic and Ethnic Regional Diseases Co-constructed by the Province and Ministry, Guizhou Medical University; Key Laboratory of Environmental Pollution Monitoring and Disease Control, Ministry of Education, School of Public Health, Guizhou Medical University)、Yuan Sun(College of Life Science and Oceanography, Shenzhen University)、Danqing Zhao(Department of Obstetrics, Affiliated Hospital of Guizhou Medical University)、Liming Shen(College of Life Science and Oceanography, Shenzhen University)、Xiaorong Ni(Department of Clinical Nutrition, Shenzhen Hengsheng Hospital, Shenzhen, Guangdong, China)、Tian Qiao(Department of Clinical Nutrition, Affiliated Hospital of Guizhou Medical University)、Ying Zong(Collaborative Innovation Center for Prevention and Control of Endemic and Ethnic Regional Diseases Co-constructed by the Province and Ministry, Guizhou Medical University; Key Laboratory of Environmental Pollution Monitoring and Disease Control, Ministry of Education, School of Public Health, Guizhou Medical University)、Yi Liang(Department of Clinical Nutrition, Affiliated Hospital of Guizhou Medical University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Wansong Zhang, Chenyu Liu, Yuan Sun, et al. A processed dietary pattern is associated with gestational diabetes mellitus and altered APOM and SAA4 proteomic signatures in Miao women. Frontiers in Nutrition 2026-10-28. DOI: 10.3389/fnut.2026.1933838. 原著ライセンス:CC BY.