著者の所属・活動拠点の国は、アメリカです。

掲載誌:Frontiers in Endocrinology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:結合たんぱく質の「型」と補給への反応

血液中のビタミンDの量は、主に「25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)」という物質の濃度で評価されます。体内のビタミンDが肝臓で変換されてできるもので、血中に最も多く存在するビタミンDの代謝物です。診療では、たんぱく質に結合している分と結合していない分を合わせた「総25(OH)D」が測られています。

血中の25(OH)Dの大部分は「ビタミンD結合たんぱく質」や、血中の代表的なたんぱく質であるアルブミンに結合しています。どちらにも結合していない「遊離25(OH)D」はごくわずかです。それでも、細胞に入って働けるのはこの遊離型だけだとする考え方があり、遊離25(OH)DのほうがビタミンDの状態をより正確に表すのではないかと考えられています。

ビタミンD結合たんぱく質には、遺伝子(GC遺伝子)の違いによって主にGC1f、GC1s、GC2という型があります。これまでの大規模な遺伝子解析では、GC2型を持つ人は総25(OH)Dの濃度が低い傾向があると一貫して報告されてきました。ビタミンDを補給したときの総25(OH)Dの上がり方も型によって違う可能性が指摘されていましたが、結果は研究ごとに一致していません。また、多くの研究は総25(OH)Dしか測っておらず、遊離25(OH)Dの上がり方が型で違うかは分かっていませんでした。

研究チームは、高齢者がビタミンD3を補給したとき、総25(OH)D3と遊離25(OH)D3の増え方がこの型によって異なるかを調べました。事前の仮説は、総25(OH)D3の増え方は型によって異なるが、遊離25(OH)D3の増え方は異ならない、というものでした。

調べた方法:多民族の高齢者を対象としたランダム化試験

分析には、米国の大規模な追跡研究「MESA(多民族アテローム性動脈硬化研究)」の中で行われたINVITe試験のデータが使われました。この試験では、参加者666人をくじ引きのように無作為に2つのグループに分けました。人数比は3対1で、多いほうのグループは1日2,000 IUのビタミンD3を、もう一方のグループは見た目では区別できない偽薬(プラセボ)を16週間毎日飲みました。参加者にも研究者にも、誰がどちらを飲んでいるか分からない形で行われました。

今回の分析では、必要なデータがそろった559人(ビタミンD3群414人、プラセボ群145人)を対象にしました。平均年齢は72歳で、53%が女性でした。自己申告による人種・民族の内訳は、白人36%、黒人33%、ヒスパニック/ラテン系18%、中国系13%です。

総25(OH)D3の濃度、結合たんぱく質の型、結合たんぱく質の濃度は、質量分析という精密な測定法で調べられました。遊離25(OH)D3も、分子の大きさで結合型と遊離型を分けたうえで質量分析により直接測定しました。あわせて、これまで研究で広く使われてきた計算式でも遊離25(OH)D3を推定しています。この式は、総25(OH)D、結合たんぱく質、アルブミンの濃度から値を求めるものです。

分析では、試験開始時と16週後の濃度、そしてその間の変化量が型によって異なるかを統計的に検討しました。性別、年齢、季節、体格指数(BMI)、腎臓の働き、遺伝的な祖先の違いの影響は差し引いています。

主な結果:型で違ったのは「総量」、違わなかったのは「上がり方」

GC2型を持つ人では、試験開始時にも16週後にも、どちらのグループでも総25(OH)D3が低くなっていました。著者らによると、GC2型の遺伝子を1つ持つごとに、おおむね3〜6 ng/mL低い値でした。参加者全体の試験開始時の推定平均は、GC2型を持たない人で30.0 ng/mL、1つ持つ人で26.6 ng/mL、2つ持つ人で24.4 ng/mLでした。一方、遊離25(OH)D3は、直接測定でも計算による推定でも型による違いが見られませんでした。つまりGC2型の人では、総量のうち遊離している割合が高かったことになります。もう一つの型であるGC1sは、総25(OH)D3とも遊離25(OH)D3とも関連していませんでした。

ビタミンD3の補給によって、総25(OH)D3と遊離25(OH)D3はどちらも増えました。ビタミンD3群では、総25(OH)D3が平均約11 ng/mL増加しました。プラセボ群では遊離25(OH)D3はほぼ変わりませんでした。しかし、総25(OH)D3の増え方も遊離25(OH)D3の増え方も、結合たんぱく質の型によって違いませんでした。遊離型については仮説どおりでしたが、総25(OH)D3の増え方は型で異なるという仮説は支持されませんでした。

研究チームはこの点について、型による違いがあったとしても小さいと考えられると述べています。過去の研究でも補給への反応の差は一貫して示されておらず、報告された差もおおむね小さかったためです。

また、遊離25(OH)D3を直接測った値と計算式で推定した値は、ある程度連動していたものの、よく一致してはいませんでした。直接測定した値のほうが高くなる傾向がありました。著者らは、計算式が結合の強さを全員同じと仮定していることがずれの一因になりうると指摘し、遊離25(OH)Dを直接測る方法の必要性を挙げています。

この研究が示すこと

今回の結果は、ビタミンD結合たんぱく質の型が、血中の総ビタミンD濃度の「もともとの水準」には関わる一方で、ビタミンDを飲んだときの「上がり方」には、この集団では目立った違いをもたらさなかったことを示しています。著者らは、型はサプリメントへの個人ごとの反応よりも、もともとのビタミンDの状態を決めるうえで大きな役割を持つのかもしれないと述べています。

ただし今回の分析は、この目的のために計画された試験ではなく、既存の試験データを活用した探索的なものです。著者らは結果を予備的なものとして慎重に解釈すべきだとしています。また、対象は米国の多民族の高齢者であり、年齢や健康状態が異なる集団にそのまま当てはまるとは限らないとしています。

原著論文の著者・所属:Xinran Hu(Food Science and Human Nutrition Department, Institute of Food and Agricultural Sciences, University of Florida)、Andrew N. Hoofnagle(Kidney Research Institute, Department of Medicine, University of Washington)、Simon Hsu(Kidney Research Institute, Department of Medicine, University of Washington)、David K. Prince(Kidney Research Institute, Department of Medicine, University of Washington)、Mark M. Kushnir(ARUP Institute for Clinical and Experimental Pathology, University of Utah)、Alexis C. Wood(Department of Pediatrics, Children's Nutrition Research Center USDA/ARS, Baylor College of Medicine)、Stephanie Sisley(Department of Pediatrics, Children's Nutrition Research Center USDA/ARS, Baylor College of Medicine)、Erin D. Michos(Division of Cardiology, Department of Medicine, Johns Hopkins University)、Bruce M. Psaty(Cardiovascular Health Research Unit, Departments of Medicine, Epidemiology and Health Systems and Population Health, University of Washington)、Steven J. Shea(Department of Medicine, Columbia University Vagelos College of Physicians and Surgeons)、Jerome I. Rotter(The Lundquist Institute for Biomedical Innovation at Harbor-UCLA Medical Center)、David Siscovick(New York Academy of Medicine)、Norrina B. Allen(Department of Preventive Medicine, Northwestern University)、Russell P. Tracy(Department of Biochemistry, University of Vermont)、Karol E. Watson(2Department of Medicine, David Geffen School of Medicine at UCLA, Los Angeles, CA, United States)、Xiaohui Li(The Lundquist Institute for Biomedical Innovation at Harbor-UCLA Medical Center)、Kent D. Taylor(The Lundquist Institute for Biomedical Innovation at Harbor-UCLA Medical Center)、Bryan R. Kestenbaum(Kidney Research Institute, Department of Medicine, University of Washington)、Ian H. de Boer(Kidney Research Institute, Department of Medicine, University of Washington)、Cora M. Best(Food Science and Human Nutrition Department, Institute of Food and Agricultural Sciences, University of Florida)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Xinran Hu, Andrew N. Hoofnagle, Simon Hsu, et al. Influence of vitamin D binding protein isoforms on the total and free serum 25-hydroxyvitamin D responses to vitamin D supplementation in older adults in the Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis. Frontiers in Endocrinology 2026-10-29. DOI: 10.3389/fendo.2026.1910020. 原著ライセンス:CC BY.