著者の所属・活動拠点の国は、中国、フィリピンです。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

動物性脂肪を減らしながら品質を保つために

ウインナーのように肉と脂肪を細かく練り混ぜて作る乳化型ソーセージには、一般に20〜30%ほどの動物性脂肪が含まれます。脂肪はジューシーさや食感、風味を支える一方、動物性脂肪、とくに飽和脂肪酸のとりすぎは肥満や心血管疾患などのリスク上昇と関連づけられてきました。ただし、脂肪を単純に減らすと味や柔らかさ、加工時の性質が損なわれやすいという問題があります。

そこで注目されているのが、液体の植物油を加工して動物性脂肪の代わりに使う方法です。研究チームは、その候補として「高内相ピッカリングエマルション(HIPPE)」に着目しました。エマルションとは油と水が混ざり合った状態のことで、HIPPEは油滴の割合が74%を超えるほど高く、油と水の境目を微粒子が覆って油滴同士が合体しにくくなった、半固体状でゲルのような性質をもつものです。著者らは、油滴がぎっしり詰まったこの構造が、脂肪細胞が並ぶ動物の脂肪組織と似ている点を指摘しています。

油滴の境目を覆う材料として、本研究では筋肉の主要なタンパク質である筋原線維タンパク質を、ハトの肉から取り出して用いました。植物タンパク質で作ったHIPPEをソーセージに使った研究はありますが、動物由来タンパク質による例は少なく、ハトの筋原線維タンパク質を使ったHIPPEは著者らの知る限り初めての検討だとしています。研究の目的は、このタンパク質の濃度がHIPPEの安定性にどう影響するかを調べ、さらに羊の尾脂の一部または全部をHIPPEで置き換えたソーセージの品質を評価することでした。

エマルションを作り、ソーセージで比べる

研究チームはまず、ハト肉から筋原線維タンパク質を多く含む画分を取り出しました。その濃度を0.5〜2.5%の範囲で5段階に変え、アーモンドオイルと油3対水1の割合で混ぜてHIPPEを作りました。それぞれについて、冷蔵で30日保存したとき、遠心分離で強い力をかけたとき、加熱したときに、油が分離しないか、油滴の大きさが変わらないかを調べています。

次に、安定性の結果をもとに選んだHIPPEを、羊肉ソーセージの脂肪として使いました。比較したのは4種類です。羊の尾脂を使った通常のソーセージ、尾脂の代わりにアーモンドオイルとタンパク質液を乳化させずにそのまま加えたもの、尾脂の半分をHIPPEに置き換えたもの、尾脂の全部をHIPPEに置き換えたものです。アーモンドオイルをそのまま加えた群は、材料の組成をHIPPE全量置換の群とほぼそろえてあり、材料そのものの効果と、HIPPEという構造にしたことの効果を区別できるよう設計されています。

ソーセージについては、加熱で失われる重さ(加熱損失)、水分を保つ力(保水性)、加熱時に水分や脂肪が分離しにくいか(乳化安定性)、加熱前の肉生地の粘りや弾力、色、硬さなどの食感を測定しました。さらに、食品科学を学ぶ学生40人が、どのソーセージか分からない状態で味や見た目などを9段階で評価しました。

主な結果

HIPPEでは、タンパク質の濃度を高めるほど、保存、遠心分離、加熱に対する安定性が向上しました。この結果から、研究チームは濃度2.0%のHIPPEを脂肪の代替として選びました。

ソーセージでは、尾脂の半分をHIPPEに置き換えた場合、加熱損失と乳化安定性は通常のソーセージと同程度に保たれました。尾脂を全部置き換えた場合には、これらの指標が有意に改善しました。半分・全部のどちらの置き換えでも、加熱前の肉生地の粘りや弾力に関わる指標が有意に改善し、ソーセージの保水性、色の明るさ、硬さや噛みごたえといった食感の指標も有意に改善したと報告されています。

学生による官能評価では、HIPPEを加えることが、見た目、ジューシーさ、食感、総合的な好ましさに良い影響を与えたとされています。

研究が示すこと

著者らは、ハトの筋原線維タンパク質で安定化したHIPPEには、乳化型ソーセージの加工上の品質を高める可能性があり、脂肪の配合を見直した肉製品で植物油を活用していくための基礎になると結論づけています。羊の尾脂という動物性脂肪を、植物油を詰め込んだ構造体で置き換えても、ソーセージとしての品質を保ったり高めたりできることを示した報告といえます。

原著論文の著者・所属:Linghui Zhang(College of Food Science and Technology, Hebei Agricultural University, Baoding 071000, China)、Xu Zhang(College of Food Science and Technology, Hebei Agricultural University, Baoding 071000, China)、Yizhe Zhang(College of Food Science and Technology, Hebei Agricultural University, Baoding 071000, China)、Wenhui Qi(College of Food Science and Technology, Hebei Agricultural University, Baoding 071000, China)、Teng Li(School of Food Science and Biotechnology, Zhejiang Gongshang University, Hangzhou 310018, China)、Joel Rivadeneira(Institute of Food Science and Technology, University of the Philippines Los Baños, Los Baños 4031, Philippines)、Yangliu Liu(College of Food Science and Technology, Hebei Agricultural University, Baoding 071000, China)、Liwen Wang(College of Food Science and Technology, Hebei Agricultural University, Baoding 071000, China)、Zhisheng Zhang(College of Food Science and Technology, Hebei Agricultural University, Baoding 071000, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Linghui Zhang, Xu Zhang, Yizhe Zhang, et al. Application of Pigeon Myofibrillar Protein-Stabilized High Internal Phase Pickering Emulsions as a Sheep Tail Fat Substitute in Emulsion-Type Sausages. Foods 2026-10-26. DOI: 10.3390/foods15213820. 原著ライセンス:CC BY.