著者の所属・活動拠点の国は、マレーシア、リビアです。
掲載誌:Tikrit Journal for Agricultural Sciences
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
傷みやすい果物を粉末にするための研究
サワーサップ(トゲバンレイシ)はアメリカ大陸原産の熱帯果実で、栄養価が高い一方、傷みやすいことが課題とされています。著者らによると、果肉は水分が多いため日持ちせず、収穫後に色や風味が落ちたり、微生物が増えやすくなったりします。こうした果物を長く保存する方法の一つが、乾燥させて粉末にすることです。
研究チームが注目したのは「泡沫乾燥(フォームマット乾燥)」という方法です。果肉に泡立ちを助ける物質を加えて泡立て、その泡を薄く広げて乾かします。泡の中の気泡が水蒸気の通り道になり、水分が抜けやすくなるとされます。論文はこの方法を、他の乾燥法に比べて費用が安く扱いやすい方法として紹介しています。
ただし、サワーサップを泡沫乾燥したときの乾き方を数式で表す研究は少ないと著者らは指摘しています。そこで本研究では、植物由来の増粘物質であるアラビアガムで泡を安定させたサワーサップを3つの温度で乾燥しました。目的は、乾燥の進み方をよく表す数式モデルを見つけることと、できた粉末の品質を調べることです。
どのように調べたか
研究チームは、熟したサワーサップの果肉を短時間蒸気で加熱してから撹拌しました。そこに果肉量の15%にあたるアラビアガムを加えて15分間泡立て、厚さ5ミリの層にしてトレーに広げました。これを50℃、60℃、70℃で乾燥し、10分ごとに重さを測って水分の減り方を記録しました。乾燥後は粉砕してふるいにかけ、粉末として分析しました。
乾燥の進み方は、薄い層の乾燥を表す代表的な3つの経験式(ペイジ、ヘンダーソン・パビス、ルイスの各モデル)に当てはめて比べました。粉末の品質については、水分、水分活性(微生物が利用できる水の目安)、酸性度、かさ密度と流動性、色、水への溶けやすさを測定しました。さらに、植物に含まれる成分群であるポリフェノール(総フェノール)とフラボノイドの量も調べています。
主な結果
乾燥温度が高いほど、目標の水分まで乾くのにかかる時間は短くなり、70℃が最も早く乾きました。どの条件でも乾燥開始から約30分の間に水分が急速に減り、その後は乾き方が緩やかになったと報告されています。3つのモデルを比べた結果、著者らはペイジモデルが泡沫乾燥の経過を最もよく表すと結論づけました。
できた粉末の水分活性は、微生物の増殖という点で安全とされる範囲にあったと報告されています。粉末は酸性度が高い食品に分類される値でした。色は乾燥温度によって有意に変化しました。粉末の流れやすさは、50℃では「不良」、60℃では「可」、70℃では「普通」に分類されました。水への溶けやすさを示す指標は温度が高いほど大きくなり、70℃の粉末が最も溶けやすい結果でした。一方、水を吸って保持する性質の指標は、温度が上がるにつれて低下しました。
成分の残り方では、生の果肉と比べた割合が示されています。総フェノールの残存率は50℃で約71%、60℃で約79%、70℃では約99.5%で、高温ほど多く残りました。フラボノイドも同じ傾向で、残存率は50℃で約25%、60℃で約49%、70℃で約80%でした。著者らは、乾燥時間が短いことが成分の保持につながった可能性を、他の研究の報告と照らして論じています。
研究が示すこと
著者らは、アラビアガムで安定させ70℃で泡沫乾燥したサワーサップ粉末は良好な品質を示したと結論づけています。この条件では早く乾くだけでなく、溶けやすさや、フェノール・フラボノイドの残り方も他の温度より優れていました。論文では、この粉末を飲料、アイスクリーム、菓子、焼き菓子などの食品原料に使える可能性も挙げています。
傷みやすい果物を粉末にする際、乾燥温度の選び方によって乾燥時間と粉末の性質がどちらも変わる。本研究は、その関係を一つの果物で具体的に示した報告といえます。
原著論文の著者・所属:Muhamad Riduan NIF(Faculty of Food Science and Technology, Universiti Putra Malaysia, 43400 Serdang, Selangor, Malaysia)、Nordin NLN(Halal Products Research Institute, Universiti Putra Malaysia, 43400 Serdang, Selangor, Malaysia)、Rabiha Hj. Sulaiman(Faculty of Food Science and Technology, Universiti Putra Malaysia, 43400 Serdang, Selangor, Malaysia)、Rukayadi Y(Faculty of Food Science and Technology, Universiti Putra Malaysia, 43400 Serdang, Selangor, Malaysia)、Greiby I.(Faculty of Agriculture, Department of Food Science and Technology, University of Tripoli, Libya)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Muhamad Riduan NIF, Nordin NLN, Rabiha Hj. Sulaiman, et al. The effect of drying temperature on foam mat drying kinetics and quality of soursop (Annona muricata L.) powder stabilized with Arabic Gum. Tikrit Journal for Agricultural Sciences 2026-09-01. DOI: 10.25130/tjas.26.3.23. 原著ライセンス:CC BY.