著者の所属・活動拠点の国は、ナイジェリアです。

掲載誌:Frontiers in Life Sciences and Related Technologies

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の目的:リン不足を細菌の力で補えるか

リンは、根の発達や開花、種子の形成に欠かせない養分です。不足すると生育が止まったり、成熟が遅れたり、収量が下がったりします。熱帯の土壌ではリンが土に強く固定されて植物が吸収しにくくなりやすく、農業生産を制約する大きな要因とされています。一方、化学肥料を多く使うと、マメ科植物がもともと持つ窒素固定の働きが弱まり、資金の限られた農家の負担も増えます。

そこで研究チームは、土の中で溶けにくいリンを溶かし出す「リン溶解菌」に着目しました。この菌を微生物肥料(バイオ肥料)として使った場合の効果を、一般的な無機リン肥料と比べ、ササゲの生育と収量への影響を調べました。ササゲはナイジェリアで経済的に重要なマメ科作物で、試験には3品種が用いられました。

何を調べたか:細菌の選抜から品種別のポット試験まで

研究はナイジェリア南部エド州のベニン大学で行われました。まず、大学の農場で育つ10種類の植物の根の周り(根圏)から土を採取しました。そこから、溶けにくいリン酸カルシウムを含む培地で、リンを溶かす細菌を探しました。リンを溶かす菌の周りには培地が透明になる輪(ハロー)ができるため、それを目印にしています。

選ばれた菌は、リンを溶かす力の強さと、植物の成長を促すホルモンであるインドール酢酸(IAA)を作る量で評価されました。遺伝子(16S rRNA遺伝子)の解読により、4種類の細菌が特定されました。エンテロバクター・ホルマエキイ、エンテロバクター・クロアカエ、アルカリゲネス属の一種、クロストリジウム・ベイジェリンキイです。著者らによると、遺伝子解析によって、見た目や生化学的な性質だけに基づく当初の分類が修正されたとのことです。

続いて、網室(スクリーンハウス)でポット試験を行いました。3品種のササゲに、細菌と無機リン肥料(過リン酸石灰)をさまざまに組み合わせて与えています。試験は25通りの処理を3反復で配置し、12週間にわたり、草丈、葉の数、枝数、さや数、さや当たりの種子数、根粒の数などを測りました。

主な結果:組み合わせ次第で収量が大きく変化

培養実験では、リンを溶かす力に菌ごとの差がはっきり出ました。最も強かったのはエンテロバクター・クロアカエで、液体培地で12日後に溶かし出したリンの量も4菌の中で最大でした。クロストリジウム・ベイジェリンキイの溶解力は弱いものでした。いずれの菌でも、培養が進むにつれて培地の酸性度が高まりました。著者らはこの結果を、菌が出す有機酸がリンを溶かしていることを示すものと解釈しています。IAAは4菌すべてが作り、その量は1ミリリットルあたり12.3~44.0マイクログラムでした。最も多く作ったのもエンテロバクター・クロアカエです。

ポット試験では、細菌と無機肥料を組み合わせた処理が、どちらか一方だけの処理や無処理を総じて上回りました。生育や地上部の重さについては、3品種のうち2品種が組み合わせ処理によく反応しました。収量の面では、最も成績のよい組み合わせで1株あたりのさや数が約7個に達し、無処理の1.32個を大きく上回りました。さや当たりの種子数も、上位の処理では7.33~7.67個で、無処理(1.31個)の約6倍でした。

ただし、効果の出方は品種と細菌、肥料の組み合わせによって違いました。著者らによると、エンテロバクター属の菌と特定の無機肥料の組み合わせは、さや数や種子数を一貫して高めました。一方、乾燥重量を最大にしたのは、ある品種と菌と肥料のごく特定の組み合わせでした。また論文は、エンテロバクター属の菌を推奨より少ない量の化学肥料(1ヘクタールあたりリン20キログラム)と組み合わせた場合、地上部と根の乾燥重量が推奨量(同30キログラム)の化学肥料と同等以上になったと報告しています。組み合わせ処理では根粒の数も多くなりました。

土壌の分析では、細菌と肥料を組み合わせた区画で、種まき前から収穫後にかけて利用可能なリンが有意に減っていました。無処理区ではこの変化は有意ではありませんでした。著者らはこれを、植物がリンをより多く吸収し、それが収量の向上と結びついていることを示すものと見ています。

この研究が示すこと

この研究は、地元の土から分離したリン溶解菌が、少なめの化学肥料と組み合わせることでササゲの生育と収量を高めうることを、網室でのポット試験で示しました。同時に、「どの畑にも同じ肥料を同じように」という一律のやり方ではなく、作物の品種と細菌、肥料の相性に合わせて組み合わせを選ぶことが大切だという点も浮かび上がりました。著者らは、こうした地元の菌を活用することで、施した肥料の養分をより効率よく使えるようになる可能性があると結論づけています。

原著論文の著者・所属:Chetachi Anne Ngwoke(Benson Idahosa University, Benin City, Edo State, Nigeria)、Solomon Esharegoma Omonigho(University of Benin)、Sunday Aghafekokhian Ogedegbe(University of Benin)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Chetachi Anne Ngwoke, Solomon Esharegoma Omonigho, Sunday Aghafekokhian Ogedegbe. Beyond broad-spectrum fertilization: genotype-specific responses of cowpea to integrated bio-inorganic amendments in Edo State, Nigeria. Frontiers in Life Sciences and Related Technologies 2026-09-20. DOI: 10.51753/flsrt.1911870. 原著ライセンス:CC BY.