この研究は、スペイン、ドイツ、オーストリア、イタリア、ポーランドの研究機関の研究論文です。

掲載誌:European Journal of Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

食事の内容を客観的にとらえる方法として、血液などに含まれる多数の代謝物(体内で食べ物や物質が分解・合成される過程で生じる小さな分子)をまとめて測る「メタボロミクス」という手法が注目されています。研究チームは、この手法が食事摂取や栄養に関連する健康リスクを客観的に評価する有望な方法になり得ると述べています。

この研究(BiomarKidプロジェクト)が目指したのは、子どもの食事パターンごとに特徴的な代謝物の「サイン(シグネチャー)」があるかどうかを明らかにすることです。ここで用いられた食事パターンは、EUのChildhood Obesity Projectにおいて2歳時点で特定され、心血管代謝の健康と関連するとされた3種類で、その後の子ども時代を通じて各児がどの程度その食事に近いかを点数化する基準として使われました。3つは、野菜・果物・魚・肉・オリーブ油が多い「コアフード」型、白身肉・加工肉・加糖乳飲料・スナック・魚・野菜が多い「動物性たんぱく源」型、ソフトチーズ・バター・添加糖・ジュースが多い「質の低い脂質と糖」型です。

何をどう調べたか

研究チームは、421人の子どもから5.5歳時と8歳時に採取した血液を用い、液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析という測定法で、あらかじめ決めた236種類の代謝物の量を測りました。このうち156人は両方の時点の試料を提供しています。

食事パターンの点数と各代謝物の量との関連は、他の要因を調整した線形混合モデルで解析されました。さらに、性質の似た代謝物をまとめた23のグループについて、グループ単位で偏りがあるかを調べる代謝物セット濃縮解析(MSEA)も行われています。

報告された主な結果

個々の代謝物では48種類が食事パターンと関連しましたが、多数の検定による偶然の関連を抑える偽発見率(FDR)の補正後には、いずれも統計的に有意なままではなかったと報告されています。このうち5種類は複数の食事パターンと関連していました。

例として、LPC a C22:6という代謝物は「コアフード」型と「質の低い脂質と糖」型とで逆向きの関連を示しました(それぞれβ = 0.108、p = 0.038、q = 0.539/β = −0.140、p = 0.025、q = 0.484)。また、PC aa C40:5とPC aa C40:6の比は「コアフード」型と負の関連(β = −0.207、p = 3.81 × 10⁻⁵、q = 0.016)、「質の低い脂質と糖」型と正の関連(β = 0.136、p = 0.020、q = 0.463)を示しています。

グループ単位の解析では、有意だった8つの代謝物グループのうち7つで、「コアフード」型と「質の低い脂質と糖」型が逆向きの関連を示しました。また、DHAを含む多価不飽和脂肪酸を持つホスファチジルコリンのグループは、「動物性たんぱく源」型と正の関連を示しました(NES: 1.837、p = 0.001、q = 0.017)。

この報告が示すこと

著者らは、子どもにおいて特定の食事パターンへの近さと、それぞれ異なる代謝物グループとの関連が見られたと結論づけています。代謝物のクラスと食事の構成要素の間で一貫した傾向がみられたことから、生物学的にもっともらしい代謝上のサインが存在する可能性が示唆される、というのが論文の位置づけです。

ただし著者ら自身が述べるとおり、これらの所見は独立した別の集団での確認を要する段階にあります。食事の質の違いが血液中の分子のパターンとして読み取れるかもしれない、という手がかりを示した報告と言えます。

著者:Irina Gheorghita(Institut de Recerca Biomèdica Catalunya Sud (IRBCatSud), Reus, Spain)、Lara Vehovec(Helmholtz Zentrum München – German Research Center for Environmental Health, Institute of Computational Biology, Ingolstädter Landstraße 1, D-85764, Neuherberg, Munich, Germany)、Veit Grote(Department of Paediatrics, Dr. von Hauner Children’s Hospital, LMU Hospital, LMU-Ludwig-Maximilians-Universität Munich, Munich, Germany)、Jeannie Horak(Department of Paediatrics, Dr. von Hauner Children’s Hospital, LMU Hospital, LMU-Ludwig-Maximilians-Universität Munich, Munich, Germany)、Mariona Gispert-Llauradó(Institut de Recerca Biomèdica Catalunya Sud (IRBCatSud), Reus, Spain)、Natàlia Ferré(Institut de Recerca Biomèdica Catalunya Sud (IRBCatSud), Reus, Spain)、Berthold Koletzko(Department of Paediatrics, Dr. von Hauner Children’s Hospital, LMU Hospital, LMU-Ludwig-Maximilians-Universität Munich, Munich, Germany)、Hans Demmelmair(Department of Paediatrics, Dr. von Hauner Children’s Hospital, LMU Hospital, LMU-Ludwig-Maximilians-Universität Munich, Munich, Germany)、Klaus Kratochwill(Core Facility Proteomics, Medical University of Vienna, Vienna, Austria)、Elvira Verduci(Department of Health Sciences, University of Milan, Milan, Italy)、Dariusz Gruszfeld(Neonatal Department, Children’s Memorial Health Institute, Warsaw, Poland)、Joaquín Escribano(Hospital Universitari Sant Joan de Reus, Reus, Spain)、Gabi Kastenmüller(Helmholtz Zentrum München – German Research Center for Environmental Health, Institute of Computational Biology, Ingolstädter Landstraße 1, D-85764, Neuherberg, Munich, Germany)、Verónica Luque(Institut de Recerca Biomèdica Catalunya Sud (IRBCatSud), Reus, Spain)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Irina Gheorghita, Lara Vehovec, Veit Grote, et al. Association of three different dietary patterns with the metabolomic profiles of children: the BiomarKid project. European Journal of Nutrition 2026-09-12. DOI: 10.1007/s00394-026-04098-1. 原著ライセンス:CC BY.