著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:微量のリグナンを効率よく取り出して測る

リグナンは植物に広く含まれるポリフェノールの一種で、ゴマやアマニなどの油糧種子、豆類、ブロッコリーなどアブラナ科の野菜が主な摂取源とされています。研究チームは論文の序論で、リグナンが抗酸化性などの性質を持つ栄養成分として関心を集めている一方、植物の組織中には微量しか含まれず、糖やたんぱく質などさまざまな成分が混在する食品の中から正確に測るのが難しいと指摘しています。

従来は溶媒で抽出したり、固相抽出と呼ばれる手法で目的成分を集めたりしてから分析していました。しかし著者らによると、これらは溶媒を多く使い、目的成分だけを選んで集める力が十分でなく、操作も煩雑だという課題がありました。そこで研究チームは、ゴマに含まれるリグナンであるセサミン、セサミノール、セサモリンの3種類を、植物性食品から同時に効率よく測定する方法の開発を目指しました。

磁石で回収できる多孔質の吸着材を自動抽出に組み込む

研究の中心となったのは、磁性固相抽出という手法です。これは、目的成分をくっつける微粒子(吸着材)に磁性を持たせ、成分を吸着させた後に磁石で粒子ごと回収する方法で、遠心分離やろ過の手間を省けます。

研究チームは、磁性を持つ酸化鉄(Fe3O4)の粒子を、ZIF-67という材料の中に組み込んだ吸着材「Fe3O4@ZIF-67」を作製しました。ZIF-67は、コバルトイオンと有機分子が規則正しく結びついてできた、微細な穴を多く持つ結晶性の材料で、金属有機構造体(MOF)と呼ばれる材料の仲間です。電子顕微鏡などで調べたところ、作製した材料は直径500〜600ナノメートルほどの立方体状の粒子が中心で、1グラムあたり約760平方メートルという大きな表面積と、平均約1.8ナノメートルの細孔を持つと報告されています。

この吸着材を使った抽出工程を自動の磁気抽出装置に組み込み、成分を分離して定量する超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)と組み合わせました。吸着させた成分を溶かし出す条件も検討し、溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミドを8ミリリットル、時間を6分とする条件を最適としています。

主な結果:感度と再現性、自動化と手作業の一致

最適化した条件で性能を確かめたところ、3種類のリグナンは1ミリリットルあたり0.5〜100マイクログラムの濃度範囲で、濃度と測定値がきわめてよく比例しました。検出できる最小の濃度(検出限界)は1ミリリットルあたり0.02〜0.10マイクログラム、定量できる最小の濃度(定量限界)は0.09〜0.25マイクログラムでした。

ブロッコリー、カシューナッツ、アマニ、ゴマにリグナンを既知量加えて測り直す試験では、加えた量に対して平均75.7〜107.8%が回収され、同じ日や別の日に繰り返したときのばらつきも15%未満でした。また、食品に含まれる糖、たんぱく質、カルシウムイオンと比べて、3種類のリグナンのほうがはるかに多く吸着され、試した条件ではリグナンを優先的にとらえることが示されました。吸着材は60日間の保存と4回の繰り返し使用の後でも、当初の吸着能力の80%以上を保っていたと報告されています。

自動化した工程と従来の手作業を比べると、抽出効率に目立った差はなく、自動化した場合の回収率のばらつきは3%未満でした。4種類の食品すべてで3種類のリグナンが検出され、自動測定と手作業による定量結果はよく一致しました。なお、リグナンがよく吸着される理由について、著者らは分子同士の引き合う力や細孔の中に閉じ込められる効果などが関与している可能性を挙げています。

この研究が示すこと

この研究は、磁石で回収できる多孔質の吸着材を自動抽出装置と組み合わせることで、食品中の微量なリグナンを手作業と同等の正確さで、より効率よく測定できることを示しました。研究チームは、この手法が多数の試料を扱う日常的な分析に適用できると述べています。

原著論文の著者・所属:Jiamei Zhu(Key Laboratory of Geriatric Nutrition and Health, School of Food and Health, Beijing Technology and Business University (BTBU), Beijing 100048, China)、Na Liang(Key Laboratory of Geriatric Nutrition and Health, School of Food and Health, Beijing Technology and Business University (BTBU), Beijing 100048, China)、Yang Wang(Key Laboratory of Geriatric Nutrition and Health, School of Food and Health, Beijing Technology and Business University (BTBU), Beijing 100048, China)、Shan Liang(Key Laboratory of Geriatric Nutrition and Health, School of Food and Health, Beijing Technology and Business University (BTBU), Beijing 100048, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Jiamei Zhu, Na Liang, Yang Wang, et al. Automated and Highly Efficient Detection of Lignans in Plant-Derived Foods Based on Magnetic Solid-Phase Extraction Combined with UPLC. Foods 2026-10-12. DOI: 10.3390/foods15203629. 原著ライセンス:CC BY.