著者の所属・活動拠点の国は、ポルトガルです。
掲載誌:Foods
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の背景と目的
ピロリジジンアルカロイド(PA)は、キク科やムラサキ科、マメ科などの植物がつくる天然の化合物で、これまでに660種類を超えるものが知られています。PAには、分子に酸素が一つ結びついた「N-オキシド体」と呼ばれる仲間もあります。論文によると、PAのうち「1,2-不飽和PA」と呼ばれるタイプは、主に肝臓の酵素によって反応性の高い物質へと変えられ、肝臓への毒性や遺伝子を傷つける作用に関わるとされています。欧州食品安全機関(EFSA)やドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)は、これらを食品の監視とリスク評価で優先すべき汚染物質に位置づけています。
人がPAを口にする主な経路は食品や飲み物で、論文では、お茶やハーブティーが広く頻繁に飲まれていることから、PAに長期的にさらされる主な原因と考えられていると紹介されています。PAは、PAをつくる植物が原料として使われる場合のほか、収穫時に雑草が混入したり、加工中に別の原料が混ざったり、植物を取り違えたりすることでも製品に入り込むことがあります。
研究チームは、お茶やハーブティーに含まれる、選んだ5種類の1,2-不飽和PAとそれぞれのN-オキシド体、合わせて10成分を同時に、高い感度で測る分析法を開発し、その信頼性を確かめることを目的としました。さらに、この方法を欧州5か国で購入した市販品の分析に用い、とくにPAの実態データが乏しいポルトガルの市場に焦点を当てました。
どのように測ったのか
分析には、液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法(LC-MS/MS)が使われました。これは、試料中の成分を分離したうえで、分子の質量をもとに目的の物質を選び出して測る方法で、微量の物質を見分ける力に優れています。ただ、お茶やハーブには多くの成分が含まれ、PAはごく低い濃度でしか存在しないことが多いため、測定前に目的の成分を取り出して濃縮する下準備が重要になります。
研究チームは、目的の成分を吸着させて不要な成分を取り除く小型の筒(固相抽出カートリッジ)を使う下準備を検討しました。条件を比べた結果、乾燥した茶葉などを2.00グラム使い、酸性にした水250ミリリットルで抽出してからカートリッジで精製する方法が、抽出の効率、試料のきれいさ、感度のバランスがもっとも良いと判断されました。250ミリリットルという量は、お茶1杯を入れるときの一般的な量に近いと論文は述べています。
分析法の信頼性を確かめる際には、PAを含まない市販の基準試料がないため、予備分析で目的成分が検出されなかった42点の緑茶、白茶、カモミール、レモンバーベナ、レモンバームを混ぜ合わせて、評価用の試料としました。また、分析の途中で生じるばらつきを補正するため、目印となる物質(内部標準)をすべての分析に加えました。
分析法の性能と市販品の結果
同じ日に繰り返し測ったときのばらつきは1.43〜8.17%、日を変えて測ったときは5.72〜18.40%でした。測定値の正確さを示す値は、ほとんどの成分で83.5〜111%の範囲でしたが、2成分ではそれぞれ70.6%と137%となりました。著者らは、これらは一般的な基準からは外れるものの、同様の値がほかの研究でも報告されていると説明しています。また、お茶やハーブの成分によって測定信号が弱まったり強まったりする影響がみられましたが、同じ種類の試料を使って検量線をつくることで、その影響を考慮して定量したとしています。総合して著者らは、この方法が対象成分を微量レベルで検出し、ふるい分ける用途に適していると結論づけています。
この方法を、欧州の5か国で販売されていた53点のお茶とハーブティーに試験的に適用したところ、18点から対象のPAまたはそのN-オキシド体が検出されました。検出されたものの多くはN-オキシド体の形でした。また、検出の頻度は通常のお茶よりハーブティーで高く、とくにカモミールとレモンバーベナで目立ちました。18点のうち濃度を数値として示せたのは11点で、残る7点は検出はされたものの、定量できる下限を下回っていました。濃度はおおむね低かったと報告されています。
結果の受け止め方と意味
著者らは、結果の解釈には注意が必要だと強調しています。国ごとに検出頻度や濃度に違いがみられましたが、国ごとの試料数は少なく偏りもあり、購入した国が原料の産地と一致するとは限りません。そのため、国どうしの比較は代表的な評価ではなく、予備的な参考にとどまるとしています。また、示された濃度は、今回選んだ成分を今回の分析条件で測った値であり、PA全体の合計量でも、家庭で入れたお茶に含まれる量でもありません。ポルトガルの人々がどの程度PAを摂取しているかの評価も、今回は行われていません。
それでも、日常的に飲まれている製品の一部から対象のPAが見つかったことは、これらの物質がどのくらい含まれ、食事を通じた摂取にどう関わるかを調べることの大切さを示しています。この研究は、お茶やハーブティー中のPAを同時に測る手段を示すとともに、これまでデータが少なかったポルトガルを中心とする市販品について、実態をとらえる最初の手がかりとなるデータを提供したものといえます。
原著論文の著者・所属:Ana Catarina Sousa(Associate Laboratory i4HB—Institute for Health and Bioeconomy, CESPU University, 4585-116 Gandra, Portugal; UCIBIO—Research Unit on Applied Molecular Biosciences, Toxicologic Pathology Research Laboratory, CESPU University, 4585-116 Gandra, Portugal)、Daniela Pereira(LSRE-LCM, ALiCE, Faculty of Engineering, University of Porto, 4200-465 Porto, Portugal)、Ana R. L. Ribeiro(LSRE-LCM, ALiCE, Faculty of Engineering, University of Porto, 4200-465 Porto, Portugal)、Virgínia M. F. Gonçalves(Associate Laboratory i4HB—Institute for Health and Bioeconomy, CESPU University, 4585-116 Gandra, Portugal; UCIBIO—Research Unit on Applied Molecular Biosciences, Translational Toxicology Research Laboratory, CESPU University, 4585-116 Gandra, Portugal; UNIPRO—Oral Pathology and Rehabilitation Research Unit, CESPU University, 4585-116 Gandra, Portugal)、Inês Pádua(Associate Laboratory i4HB—Institute for Health and Bioeconomy, CESPU University, 4585-116 Gandra, Portugal; UCIBIO—Research Unit on Applied Molecular Biosciences, Translational Toxicology Research Laboratory, CESPU University, 4585-116 Gandra, Portugal)、Cláudia Ribeiro(Associate Laboratory i4HB—Institute for Health and Bioeconomy, CESPU University, 4585-116 Gandra, Portugal; UCIBIO—Research Unit on Applied Molecular Biosciences, Translational Toxicology Research Laboratory, CESPU University, 4585-116 Gandra, Portugal)、Sandra Leal(Associate Laboratory i4HB—Institute for Health and Bioeconomy, CESPU University, 4585-116 Gandra, Portugal; UCIBIO—Research Unit on Applied Molecular Biosciences, Toxicologic Pathology Research Laboratory, CESPU University, 4585-116 Gandra, Portugal)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ana Catarina Sousa, Daniela Pereira, Ana R. L. Ribeiro, et al. Determination of Pyrrolizidine Alkaloids in Tea and Herbal Infusions by LC-MS/MS. Foods 2026-10-10. DOI: 10.3390/foods15203598. 原著ライセンス:CC BY.